原作小説の本質はそのままに。魅力的な登場人物たちを丁寧に描いた『銀河英雄伝説Die Neue These』多田俊介監督インタビュー
誰か一人は「推し」が必ず見つかる群像劇
――ここまでドラマやキャラクターの魅力を伺ってきたのですが、広大な宇宙を舞台にした艦隊戦も『銀英伝』の魅力だと思います。『ノイエ銀英伝』ならではの戦闘シーンのこだわりを教えてください。
多田:宇宙戦艦の9割5分くらいは3DCGで作っています。(戦闘シーンで)一番こだわったというか、一番労力を割くことになったのはそのCGの表現に関してですね。我々の言い方で言うと「ルック」、つまり、画面の中での実際の見え方をひと工夫しようと思ったところから、その苦労が始まりました(笑)。いわゆるセル画(手描きのアニメ)と同じ質感にしておけば、もっと簡単だったんですけどね。私の方で、この作品の宇宙戦艦は、実写とアニメの見え方の良いところを上手く組み合わせて作りたいと思ったんです。なぜなら、宇宙戦艦の戦闘シーンには、セルで描いたものが混ざってこないから、綺麗に見せるために変わったやり方をしても、その特殊なルックで統一できるんです。
――宇宙空間での艦隊戦を描くシーンでは、キャラクターが同じ画面に登場しないから、特殊なルックをキャラクターと馴染ませる必要がないということですね。
多田:そうですね。そこのルックの部分、実写とセル画のハイブリッドのような見え方をああでもない、こうでもないと何度もトライして作ったのが、宇宙戦艦のルックです。
――テクスチャー(表面の処理)に、こだわったということでしょうか?
多田:テクスチャーもそうですし、あとは、ライト、光の表現などですね。3DCGが2Dの作画アニメと大きく違うところは、データ上の擬似的な3次元の空間の中に光源が存在していることなんです。その場面場面で、どこから光を当てているのかを3D空間の中で明確に設定してるんですよ。だから、その光の当たり方によって、陰影の出方が決まってくるんです。
――作画の場合は、そのカットごとに多少の嘘をついて、より見栄えの良い陰影などを付けることもできますが、3DCGではそれが難しいわけですね。
多田:それをやっていると、本当に1カットごとにライトの位置を変えたりする作業が必要になるんです。ハリウッド大作だったら、やっているのかもしれないですけどね(笑)。だから、外側のライトだけだと質感があまりカッコ良くなかったりしたので、宇宙戦艦の3Dモデルの内側にライトを仕込んでいます。装甲の隙間などから光が漏れていることで、カッコ良く見えているんですよ。
――最後に、これまで『ノイエ銀英伝』や『銀英伝』という作品に触れる機会がなかった皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
多田:とにかく皆さんにアピールしたいのは、長い間、数多くの人に読み継がれ、楽しまれてきた『銀河英雄伝説』には、ドラマとして面白い要素が全部入っているということです。例えば、宇宙戦艦が戦っている部分に関して、あまり理解していない人も、それ以外に楽しめる要素が数多くあります。宮廷物語でもあるし、青春物でもある。スパイ物の要素もアクションもあります。とにかく、観始めたら楽しい要素は盛りだくさんなのですが、その中でも、やはり特に魅力的なのが群像劇の要素。大勢の魅力的な登場人物がいるので、観始めたらどちらかの陣営を好きになったり、その中で誰か一人は「推し」が必ず見つかります。物語の始まりから観られるこの機会にぜひ楽しんでください。
TV放送概要
初回放送日時:2024年1月16日(火)25:55~
基本放送時間:毎週火曜日 深夜25:29~
※放送時間は予告なく変更となる可能性がございます。
放送枠:日本テレビアニメ枠「AnichU」
放送話数:1~48話
※25~48話は2022年に映画館で上映。テレビ放送は今回が初となります。
配信情報:TVerにて見逃し配信
「銀河英雄伝説 Die Neue These」作品概要
キャスト
ラインハルト・フォン・ローエングラム:宮野真守
ヤン・ウェンリー:鈴村健一
ジークフリード・キルヒアイス:梅原裕一郎
ユリアン・ミンツ:梶裕貴
パウル・フォン・オーベルシュタイン:諏訪部順一
ウォルフガング・ミッターマイヤー:小野大輔
オスカー・フォン・ロイエンタール:中村悠一
アレックス・キャゼルヌ:川島得愛
フレデリカ・グリーンヒル:遠藤綾
ワルター・フォン・シェーンコップ:三木眞一郎
ナレーション:下山吉光
スタッフ
原作:田中芳樹(東京創元社刊)
監督:多田俊介
シリーズ構成:高木登
制作:Production I.G
製作:銀河英雄伝説 Die Neue These 製作委員会
●公式HP:https://gineiden-anime.com/
●公式Twitter:@gineidenanime
シリーズあらすじ
数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟という“専制政治”と“民主主義”という2つの異なる政治体制を持つ二国に分かれた。 この二国家の抗争は実に150年に及び、際限なく広がる銀河を舞台に、絶えることなく戦闘が繰り返されてきた。
長らく戦争を続ける両国家。銀河帝国は門閥貴族社会による腐敗が、自由惑星同盟では民主主義の弊害とも言える衆愚政治が両国家を蝕んでいた。そして、宇宙暦8世紀末、ふたりの天才の登場によって歴史は動く。「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリーである。ふたりは帝国軍と同盟軍を率い、何度となく激突する。