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- 笹本千尋
- 1998年生まれのフリーライター。アニメ文化とアンティーク雑貨と絵を見ることが好きです。
2023年11月17日(金)より公開中の映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(ファンの間では『ゲ謎』とも呼ばれています)。
公開から早数ヶ月…リピーター増量、第47回日本アカデミー賞「優秀アニメーション作品賞」を受賞するなど大ヒットを誇る本作。鬼太郎の2人の父たちの出会いや鬼太郎誕生までのストーリーが描かれるなど、これまで『ゲゲゲの鬼太郎』では語られていなかった新たな物語が話題となっています。
そんな本作には、なにやら意味深に感じてしまうシーンなどもあり、SNSでは考察も数多く飛び交っています。
そこで今回は、「龍賀一族」にスポットを当てた考察をご紹介していきます!
※本稿には『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の背景・人物設定など、ネタバレが多分に含まれております。完全初見で楽しみたい方は本作をご覧になったあとに本記事をご覧ください。
※あくまでも考察のひとつとしてお楽しみください。
本作について、SNSではさまざまな考察がされています! 中でも特に気になった、沙代&時弥についてや「M」の由来など、「龍賀一族」にまつわる5つの考察をご紹介していきます。
ストーリー冒頭、水木が哭倉村(なぐらむら)の山腹で見た神社。兎(猫?)の串刺しが2体祀られており、不気味に思った方も多いはず(実際に克典は気味が悪いと話していました)。
SNSでは、動物を生贄に祀っていた長野県・諏訪大社がモデルとなっているのではないか?という声が上がりました。本件に関しては、「兎の串刺し」で検索すると映画で見たままのビジュアルの写真が出てくるので、個人的にも説として有力なのかなと思いました。(※作中の土地が長野県とは限りません)
初見の際は「沙代と時弥って顔が似てるよなぁ」「従兄弟だもんなぁ」ぐらいにしか思っていなかったのですが、ストーリーが進むにつれ龍賀一族の倫理観は一般的ではないことを知り、本当に沙代って乙米の娘なのかという疑問が生まれました。
龍賀家の女の栄えある務めとして、沙代が時貞にその身を捧げていたことを知った水木はあまりの気分の悪さから嘔吐する描写が描かれていましたよね。さらに、ドン・ドン・ドドンといったテンポで沙代・乙米・時貞(の遺影)のカットがあり、ここがかなり意味深に感じました。(何より、最後の時貞の遺影のインパクトが強く恐ろしかった)
乙米が“龍賀家の女の〜”と言ったことから、それって乙米自身も含まれているのではないかとモヤモヤした気持ちを抱えながら最後まで見ていると、次は時貞が時弥のことを「作った子」と明言します。時貞からすると時弥は孫なのになんで「作った」という表現をしているのか嫌な予感がしてなりませんでした。
これらの要点を踏まえて、SNSでは「沙代と時弥は時貞の子(時貞から見れば、自身の娘たちとの間でできた子供)なんじゃないか」という考察が数多く上がっているのです。
極め付けは、時貞(黄色)の目の色を乙米(紫)、庚子(青)の目の色を掛け合わせると沙代(茶)と時弥(緑)の目の色になるという考察が上がったこと。真意は明かされていませんが、この説により信憑性が増したように思います。
水木の目の色(青)の和装をしているゲゲ郎や、ゲゲ郎の目の色(赤)のネクタイをしている水木をみると、本作はメッセージを伝える上で“色”が重要な役割を担っているのではないかなと感じています。
龍賀一族が次々と沙代に殺められていく過程の中で、「左目」の描写が気になった方も多いことと思います。
時麿、丙江、庚子、乙米ともに左目を抉られた最期だったし、水木が沙代の背後で狂骨(と殺めた龍賀家の面々)を見たのも左目。さらには水木の瞼の傷、ゲゲ郎の前髪、目玉おやじの目も左のものとなっています。
ゲゲ郎の発言のなかには「目で見るものだけ見ようとするから見えんのじゃ。片方隠すぐらいでちょうどいい」という言葉があり、その片方とは「左目のこと?」という憶測が飛び交っているのです。
本作の鍵とも言える血液製剤「M」は、龍賀家が製造している不老不死の妙薬です。鑑賞された方の中には「なぜM?」と思った方も少なくはないはず!
私もそのひとりでしたが、SNSを見てみるとどうやら「M」の由来は「M資金(エムしきん)」だろうという声が上がっていることを知りました。
M資金とは、いわゆる詐欺で集められた資金のこと。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本に、第二次大戦時に押収した隠れた資産の秘密の運用の話を持ち掛けて、そして騙された人々から証拠金として集めたお金を指しています。(※「M」の由来は経済科学局の第2代局長・少将ウィリアム・マーカットの頭文字に由来していると言われています)
M資金という言葉が浮上した時代も作中と近く、「数多くの被害者を生んできた」という点では血液製剤「M」とリンクする部分があると思います。
龍賀家三女・庚子と政略結婚をした哭倉村の村長・長田幻治。互いに別の相手と政略結婚をしていますが、幻治と龍賀家長女・乙米は想い合っているという裏設定があります。
ゲゲ郎を折檻するシーンでは、抱きしめ合う描写も入り、「ん?」とふたりの関係に疑問を持ち始めた方が多かったのではないでしょうか。
この設定を踏まえた上で、作中序盤に描かれる龍賀家の後継を発表する公の場で、幻治のみが結婚指輪をしていないことが視聴者の話題に上がりました(他の結婚しているキャラは指輪をしています)。他のシーンでは指輪を着用している姿も描かれているため、より意味深に考えてしまいますよね。
こちらの描写は乙米への精神的忠誠を視聴者に見せるために、公の場であえて庚子との結婚指輪を外したのではないかという声が多数寄せられています。
以上、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』龍賀一族の考察まとめでした。今回ご紹介した考察はあくまで多くある考察のほんの一部に過ぎません。楽しんで読んでいただけたら幸いです!
[文/笹本千尋]