『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公開記念インタビュー | オルガ・サブナック役の小田井 涼平さんと『ガンダムSEED』を振り返る! 今だからこそ話せる思い出に、ディープな『ガンダム』ファンならではのトークが満載【PR】
ドミニオンが沈んだ原因は、ナタルが“人間”になっていたから
――少し話にありましたが、『SEED DESTINY』はどのような気持ちでご覧になられていましたか?
小田井:『SEED』って、21世紀のファーストガンダムと言われていたのもあって、最初の『機動戦士ガンダム』の要素がかなり受け継がれているじゃないですか。主人公がガンダムに乗るきっかけとか、母艦のデザインとか、すごいインスパイアしてるんだなと。
そこから続編の『SEED DESTINY』だと、ザフト側のガンダムが連合に奪われるっていう逆のことをやるのが秀逸だなと。1話を見た時、掴みはこれでばっちりだなと思いましたよ。
そういう意味では楽しかったんですけど、話が進むに連れ、主人公のシンがどんどん救いようのない存在になっていくのは、見てて辛かったです。
――原因を作ったのはオルガでもあるという。
小田井:それも一つのきっかけではあるんですけど、そこからさらに逆恨みにも似た、ねじ曲がった感情に変わっていってしまうじゃないですか。最終的にはシンの視点を通して、やっぱり絶対的なエースはキラやアスランだったということを思い知らされるんですけど、そこもまた辛くて。
『SEED DESTINY』って、シンやレイに作品の影の部分を背負わせたっていうのがまた凄いんですよね。だからデスティニーガンダムのデザインを見た時、最初はうわっと思いましたもん。あの目の傷みたいな……。
――赤いラインが入っているんですよね。主人公機にはなかなかない。
小田井:これ、そういうことかと。『STAR WARS』のダークサイドに落ちたジェダイみたいなね。
ただ、それがあるから物語が成り立っているというか、途中から視聴者もデュランダルに対する怒りが湧いてくる構成じゃないですか。そこから最後はルナマリアも絡んでシンの視点に戻っていくので、うまくまとめるなと思いました。
そういう視点で観ていたのもあって、『SEED DESTINY』に関しては、キラよりもシンやレイ、アスランの方が好きでしたね。
――何度も間違えたり、迷いながら進んでいくので人間味がすごくありますよね。
小田井:『SEED DESTINY』のキラに関しては、ラクスという存在がいるので、もう大丈夫だろうなと思える安心感があったというか。アスランはめちゃくちゃ揺れていたし、シンとレイに関しては後半にいくにつれエラいことになっていくので、そのあたりの人間模様が面白かったなと。
だからこそ、早くその続きが見たかったという想いもありますよね。ラクスたちがザフトに戻ったような描写もありましたし、あの後って一体どうなるんだっていう。
――デスティニープランこそ止めたものの、ナチュラルとコーディネイター間のいざこざは、結局解決されていないんですよね。
小田井:そこでいうと、『SEED』って物語としても面白いんですけど、現実にもいろいろ結びつけられるのがすごいところだとも思っていて。ブルーコスモスの存在って、多少狂気じみてはいるんですけど、現実にもこういう人たちはいるんだろうなと思えるんですよね。
――ブルーコスモスといえば、盟主であるアズラエルは、オルガとも関わりが深いです。どんなキャラクターだと感じておられましたか?
小田井:端的にいうと、インテリヤクザっぽいなと。頭がよくて策略家なんですけど、あのスーツにあのネクタイ姿で宇宙にまで行っちゃう行動力がすごい。しかも宇宙服着ないですからね。
ただ、僕個人としては、アフレコ現場で挨拶された時の「やばい、シロー・アマダ(※『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の主人公)がいる!」という感動にずっと引っ張られていたかもしれない(笑)。
――檜山(修之)さんの声の力がものすごいですよね。
小田井:そうなんです! けど『08小隊』が好きなので、正直ショックでしたよ。あんなに甘ちゃんとか呼ばれてたのにって(笑)。
でも、方法論が違うだけで、アズラエルはアズラエルの中できちっとした正義があるのは分かるんです。実は僕は、もしアークエンジェルに乗っていた頃のナタルだったら、ドミニオンは沈まなかったんじゃないかとも思っていて。
というのも、ドミニオンの艦長になった時のナタルって、もう軍人ではなく人間になっていくんですよ。ナタルが最後まで、どんな理不尽な命令にも従う軍人のままだったら、ドミニオンは沈まず、アークエンジェルがやられていたんじゃないかなと。
――確かに、アズラエルとナタルは終始馬があわないままでした。
小田井:最初はそれでも、命令は守っていたんですよ。けど途中から、こいつの言っていることはおかしいと気づき始めて、あの最期に繋がっていく。
個人的には、軍人としてのケジメというか、忠誠心を失って命令に逆らった時点で、ナタルは死ぬと決めてたんじゃないかと思ってます。だからあそこでマリューに自分ごと撃てと命じたのかなと。
『SEED』が秀逸だと思うのは、そういう人間模様を含めて最後まで無駄がないんですよね。デザイン的にも好きだったので、ドミニオンには沈んで欲しくなかったのが本音ですけど(笑)。
――ここまでいろんなお話が出てきたんですが、『SEED』の中で特に印象的だったシーンはありますか?
小田井:いっぱいあるんですけど、そうだなぁ。……ちょっとネタみたいで申し訳ないんですけど、第40話で、僕ら(連合軍)との戦いの後、「暁の車」が流れて、キラ達が宇宙に飛び立っていくシーンがあるじゃないですか。あそこでフリーダムとジャスティスが手を繋ぐのが、めちゃあのCMだなって(笑)。
――あのファイトで一発的な……(笑)。
小田井:今見てもそうだなと思いますもん。MSなのに、すごい人間の感情のようなものが乗っているように見える演出も含めて印象深いですね。
あとはバルトフェルドが好きなので、『SEED』の砂漠での一連のくだりも気に入っていますね。キラに、たまたまMSに乗って戦わされているんじゃなく、一人のパイロットとしての覚悟をさせる役割もあって、再会した時の「誰にでもそんなもんあるし、誰にだってない」というセリフもすごくいいんですよ。
『ファースト(機動戦士ガンダム)』のランバ・ラルもそうですが、敵に教わるってガンダムシリーズの中で重要な要素なんだなと改めてと思いましたね。
あと砂漠に関しては、バクゥのメカとしてのインパクトも大きかったです。
――確かに、今までの『ガンダム』にはなかったタイプのメカでした。
小田井:4本足のMSって、まだこんな新しい方向性があったかと感心しました。当時電撃ホビーマガジンさんでコラムを書いてたんですが、そこでカラミティを4本足にしてバクゥ風にする改造をやったんですよ。
その後に『SEED DESTINY』でガイアが出てきた時は、「やっぱり来たか」と(笑)。
――実はこっちがに先んじて思いついていたと(笑)。
小田井:でも、やっぱり『SEED』のMSってよく考えられているんですよ。ストライクとかインパルスとか、アタッチメント式で武装を換装して性能が変わるっていうコンセプトですよね。
カラミティ・レイダー・フォビドゥンにはその仕組みはないんですけど、役割が全然被ってなくて、3機揃ったら全部の性能を補えるんですよ。だからカラミティ、レイダー、フォビドゥンの装備をストライカーパックみたいにして換装できるようにしたら面白いんじゃないかなと思って、フォビドゥンをベースにして、カラミティパック、レイダーパック、フォビドゥンパックを作例として作ったりもしました。
――それは凄まじい……! けど、ベースはストライクではなくフォビドゥンなんですね。
小田井:実際、最初はストライクにしようかと思ったんです。でもストライクにすると元のカラミティとかのイメージと離れすぎてしまって、それならフェイスラインとかが比較的ストライクに近いフォビドゥンを使ってみたら、意外にもハマってくれたんですよ。
『SEED DESTINY』のガイア、カオス、アビスは、カラミティやフォビドゥンにはなかった変形が3機全部にあるのも面白くて、合体して巨大ロボットになったら面白いのになーと妄想したりしてましたね(笑)。
――お話を聞いていて、メカへの愛の深さというのがすごく伝わってくるのですが、「ガンダムSEEDシリーズ」で好きなMSを選ぶとすれば、どの機体になりますか?
小田井:カラミティはもちろん好きなんですけど……改めて一番好きな機体ってなんだろうと考えると、『STARGAZER』に出てくる「ブルデュエル」かもしれないですね。ひと目見た時、めちゃくちゃカッコいいと思って。
――ブルデュエル! なかなか渋いところが来ましたね。どういった所がポイントに?
小田井:僕は『SEED』のMSって、ストライクとデュエルがすべてのベースになっていると思ってるんです。
だからストライクはもちろん、デュエルもすごく好きなんですけど、ちょっとそのままだとデザインが地味なんですよね。ブルデュエルを見た時、デュエルって無限の可能性があるなと思わせてくれて。
――ザフト側で改造したのがアサルトシュラウドで、連合側で発展させたのがブルデュエルと、違う進化をしている。
小田井:元々、そういう発展も想定して作られたMSなのかもしれないと思うと楽しくて、ストライクにも近いので、ストライカーパックをつけてもおかしくないんですよね。エールデュエルとかソードデュエルとか出てきたかもしれないという妄想も広がるんですよ。
その流れでブルデュエルをみるとめちゃくちゃカッコよくて。まぁ、最後のやられ方は、「ようあんなの考えたな」と思えるくらい残酷なんですけど……。
――ミューディーの最期は、シリーズ屈指のトラウマシーンかもしれないですね……。
小田井:でも、『STARGAZER』まで話を広げるとまた面白いんですよ。途中でステラたちとすれ違うシーンとか、『SEED DESTINY』本編にリンクしてくる部分もあって、強化人間的な人たちの悲しさがさらに描かれていて。あれを見た時、自分たちもあの立ち位置のキャラクターを演じることができてよかったなと改めて思えました。
――既に『SEED』の放送から20年以上が経ったことになりますが、個人的に信じられないという感覚もあります。
小田井:この前は『龍騎』も20周年があったくらいですからね。「そんなに経ったんや」っていう気持ちがあると同時に、『SEED』が面白いのは、常に何かやっている感じがあるというか。
『STARGAZER』みたいなのもあれば、MSVみたいな感じで派生機が増えたりね。あとは主題歌を歌ってくださっている西川貴教さんが、今も変わらず人気者で、いろんなところで大活躍されているのもあるのかなと。僕は今でも西川さんを見ると、『SEED』の歌を歌ってる人だって思いますし、ご本人もすごく『SEED』を大切にされてるじゃないですか。
だから全然今でも終わってる感じがなかったんですよね。ガンプラでも、『ガンダムSEED』系のMSは毎年何かしらの新商品が出ますし。この前、ようやくフルメカニクスで1/100のカラミティガンダムが出たのはめちゃ嬉しかったです。
――当時も1/100のガンプラシリーズはありましたけど、カラミティは……。
小田井:今まで1/144しか出てなかったんですよ。なんで100分の1を出してくれないんだって当時からずっと思ってましたから(笑)。
このタイミングで出すのもまた凄いなとも思ったんですけど、当然買う人がいなければ出ないわけですからね。やっぱり『SEED』って人気なんだなと改めて思いますよ。
――継続という意味では、ゲームなどでオルガの声も定期的に収録されているんですよね。
小田井:そうですね。最近だと2年に1回くらいになりましたけど、放送が終わってからしばらくは1年に1回はかならず何かしらの収録がありました。ゲームとかで、カラミティが出るとだいたいオルガも出てくるので。
けど、正直ゲームの収録って本編より大変なことが多いです。本編って、基本的に「オラオラオラ!」みたいな戦闘中のセリフばっかりだったんですけど、ゲームとかだと本編で言ってない、普通の場面のセリフみたいなのも録ることがあるんです。
本編で録ってないんで、オルガが普段どんな風に喋るかなんて分からないわけで、僕としても想像でやるしかないんですけど……ゲームによっては、オルガが艦長になったりもするんですよ。
――『ジージェネ(SDガンダム ジージェネレーション)』シリーズとかですね(笑)。確かに、オルガを艦長にできたりもします。
小田井:もう本当に、「収録終わってからこんな考えることある?」って思いましたよ(笑)。当然、誰も正解を知らないわけで、めちゃくちゃ悩みながら収録した記憶があります。
けど、そうやって自分が忘れそうになった頃に収録があるおかげで、「あ、俺まだできるんや」と思えたり、楽しみながら収録させてもらってますね。
――TVシリーズでの収録が終わった今も、ずっと付き合いが続いているような感覚でしょうか。
小田井:もちろんそうです。当然、僕のことを仮面ライダーとして認識してる人もいるんですけど、逆にライダーは知らなくて、オルガ・サブナックの人として認識してる人もいますし。「北岡弁護士がオルガって初めて知りました」って、未だに言われますからね。
――やっぱり、当時と今では声も違うと思うんですが、そこに寄せる難しさというのはありますか?
小田井:本格的に歌をやったのもあって、声が太くなったかなと。その分、重みのある声は出せるようになったんですけど、今聞き返すと当時の声ってちょっと軽いんですよ。
子供っぽいところを出そうと、狙ってやった部分でもあるんですが、オルガというキャラクターを考えると、もうちょっと大人でもいいのかなと思うようにもなって。当時の声はそのままは出なくなったんですけど、今くらいの方が本来のオルガに近いんじゃないかと思いながら演じるようにしています。