音楽
「SHAMAN KING」続編EDテーマに上坂すみれが込めた思い、そしてこれから/インタビュー

『SHAMAN KING FLOWERS』ED楽曲のテーマは" 変わらない想いを受け継ぎ、繋いでいくこと"|『ディア・パンタレイ』リリース記念 上坂すみれさんインタビュー

 

曲を聴いたときに『SHAMAN KING』らしいなと

――「ディア・パンタレイ」は、上坂さんがアルミ・ニウムバーチ役として出演するTVアニメ『SHAMAN KING FLOWERS』(以下、『FLOWERS』)のエンディングテーマです。上坂さんは小学生の頃から『SHAMAN KING』に触れられていたとのこと。まずは『FLOWERS』、『SHAMAN KING』(及び『シャーマンキング』)についての思いをうかがえたらなと。

上坂:少年漫画で初めて自分で単行本を買いに行った作品です。私は週刊誌の少年誌を読んでいなかったんですけども、『シャーマンキング』は絵に惹かれました。それで1巻を開いたら、これまで見たことのないような絵柄、世界が広がっていて。

武井宏之先生独特のスタイリッシュな絵柄、青森の風景、持霊との絆……小学生には理解が及ばないところと、すごく刺さるところが同居していて、少年漫画とは思えないような世界観にとても惹きつけられました。私自身は単行本派だったので、単行本が出るたびに本屋さんに行って買うのが楽しみでした。また、アニメも見ていて、当時出ていたゲームでも遊んでいました。

 

 
大人になって読み返してみると、また違った発見があります。小さい頃は大人のキャラクターが子どもを振り回しているように見えたんですけども、彼らは自分の使命や一族の決まりに従わなければならないといった、大人なりの葛藤も描かれていたんだなと。いつ、どの時代に読んでも面白い作品だなと思いますね。

――私も最近見返したときに、ああこういうことだったんだ!と気づくこともありました。でも小さい頃は小さい頃で楽しめるというのがすごいなって。

上坂:ありますよね! 例えばシャーマンファイトのお話は、組織的なものを理解するのが難しいんですけども、それが分からなくても「バトルがカッコいい!」と楽しむことができて。でも、それを理解した上で改めて読むと面白いんじゃないかなって。

――『FLOWERS』の出演、エンディングテーマの歌唱が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

上坂:『SHAMAN KING FLOWERS』のオーディションのお話をいただいた時点でビックリしていました。『SHAMAN KING』は2001年に放送されたアニメとキャストさんが基本的に踏襲されていて。さらに『FLOWERS』の花や道 黽(タオ メン)は『SHAMAN KING』の麻倉 葉と道 蓮の息子で、そのまま親子二代のキャスティングになっているような中で、完全新キャラであるアルミのオーディションを受けることができました。

アルミは捉えどころのないキャラクターだなという印象があります。全てを知っているけど全てを話さないという、とてもミステリアスな子。まさか自分に決まるとは思わず、受かったと知った時は本当にビックリしました。エンディングテーマについては後から聞いたんです。曲を歌わせていただけると知って、合わせて驚きました。

 

 
『SHAMAN KING』のテーマ曲は、これまで林原めぐみさんをはじめとして壮大な歌がたくさんある中で、自分が入っていくというのは想像がつかなかったんです。でも、『FLOWERS』は次世代シャーマンたちの世界。そして、オープニングはたまお役の水樹奈々さん、そしてエンディングがアルミ。“受け継いで生きていく”がテーマの楽曲になるのかなと思っていました。

――そしてそれをまた誰かに託していく。

上坂:そうですね。私自身、『SHAMAN KING』の伝統を受け継いで、誰かに受け渡していくという役目があるんだろうなと。これは全ての世界においての普遍的なものなんだろうなって思いました。

――昨今、上坂さんは『うる星やつら』ラムちゃんにしかり、“受け継がれる”ことが多い印象があります。

上坂:確かにそうですね。近年リメイク作品が多いということも関係しているとは思うんですが、ラムちゃんだったり、『グレンダイザーU』(弓さやか役)だったり……。純粋に好きな作品が、今もう一度蘇る機会に立ち会えているって、本当にすごいことだと思っています。

どの作品も自分が演じることができるとは思っていなかったのですが、作品への愛が伝わったからこそ、受け継ぐ役をいただけたのかなと。

 

 

――「ディア・パンタレイ」は、作詞を真崎エリカさん、作曲を本多友紀さん(Arte Refact)、編曲を水野谷 怜さん(Arte Refact)が手掛けられています。曲を聴かれたときはどのような印象がありましたか?

上坂:『SHAMAN KING』の曲と言えば、頭にサビがあって、そしてとても印象的なイントロが流れる、という構成のイメージでした。まさにそれにぴったりで。聴いてすぐに、その世界観に入り込める曲だなって。エンディングなので静かな曲でも成立すると思うんですけども、そこをあえて情熱的なサウンドで、次のお話への高まりをそのままに表していて。それがとても『SHAMAN KING』らしいなって。

作家の皆さまも、本当に『SHAMAN KING』がお好きな方たちで。だからこそ、解像度の高い曲になっているなという印象です。『SHAMAN KING』の世界をなぞるわけではなく、『FLOWERS』特有の時が流れていき、そして命が受け継がれていって……変わらないものはないように見えるけど、伝えていくことはできるっていう、そういう魂の交流、メッセージが美しい曲だなと思います。

――シンフォニックで、情熱的な音の中に、キラキラした音が入っているのも印象的で。

上坂:そうですね。ただ強いだけではなく、キラキラとしていたり、ストリングスには女性らしさだったり、優雅な雰囲気もあって。そこはアルミちゃんの要素なのかなと思っています。

――アルミちゃんらしさを感じたところは他にも?

上坂:アルミちゃんは花の許嫁ということもあって、〈ああ 咲くはこの花〉など花にまつわる言葉や、愛についての言葉も入っていて。

作中ではアルミは花に直接「好き」と言うわけじゃないんですけども、表情やセリフの端々に、花のことをいちばんに考えているという気持ちが描かれていて。アルミちゃんの愛でもありますし、たまおさんなどの周りの人たちが愛を花に注いでいるんだなって分かるなと思いますね。

 

 

――特に〈おぼろげな愛をひとつ暗がりに翳しながら〉というところにグッときました。

上坂:愛って形がないものですし、しかもアルミは口にしないタイプなんですよね。だからすごく不安定ではあるけれど、とても(花のことを)大切にしていることが感じられる言葉だなって思います。

――レコーディングはいかがでしたか?

上坂:自分の曲はギミックやコールがあるアニソンが多かったんですけど、今回は力強さがテーマの曲で、掛け声もない、ストレートにカッコいいもので。力強く歌いつつも、2番の頭では落としてみてと、純粋な歌のアプローチを頑張りました。

――正統派のアニソンという雰囲気ですよね。ギミックなしのストレートな曲というのは、久しぶりなような気がしました。

上坂:久しぶりだと思います! かわいい曲、愉快な曲が本当に多いので。こういうストレートな曲をおふざけなしでやるというのは、逆にはじめてくらい。だからすごく新鮮でしたし、これがライブになったら、どういう盛り上がり方になるのかなって。今から披露が楽しみですね。

――ライブでの光景がすごく楽しみです。ペンライトが映えそうですね。

上坂:私のイメージカラーである赤が映えそうな曲なので、皆さんには赤を振って欲しいなって思っています。曲の構成も王道なので、ノリ方はきっとみんなの体に染み付いているんじゃないかなと。

 

 

――レコーディングの時と、完成した曲を聴いたときとで、印象の違いはありましたか?

上坂:完成版を聴いたときはすごくゴージャスだなって思いましたね。打ち込みっぽい曲でも成立する曲でもあると思うんですけど、分厚いオケと、力強さを重視した歌声とが喧嘩せずに調和していて。

エンディングの映像も拝見したんですが(インタビュー段階はアニメ放送前)、オープニングでもおかしくないなというくらい、躍動感があり、すごくカッコいい映像になっていました。エンディングまで、本編のように楽しめるんじゃないかなって思っています。

――本編も気になるところです。

上坂:本当に!『FLOWERS』は1クールものなので『SHAMAN KING』シリーズとしては短いお話ではありますが、続きが気になって仕方ないような物語になっていると思います。また、『SHAMAN KING』の本編を知らないとまったく分からないという内容ではなくて。ハオがシャーマンキングになっている世界、というところだけ分かれば、楽しめるんじゃないかなと。

――ところで「ディア・パンタレイ」という言葉は哲学的な意味が込められていると思うのですが、上坂さんはどのように感じられていましたか?

上坂:調べてみたところ、万物は流転するという意味があって。それにディアがついているから、『SHAMAN KING』らしいお手紙っぽさもありますし、流転することに対して愛しく感じるというのは、壮大な愛なのではないだろうかって感じがしますね。

 

大好きなものを掛け合わせた「 KOUTOU TIGER」

――ストレートな「ディア・パンタレイ」に対してカップリングには愉快で楽しい曲が。「 KOUTOU TIGER」は上坂さんが作詞を、作曲・編曲を渡辺徹さん(Blue Bird's Nest)が手掛けられた、ユーロビート調のナンバーです。

上坂:私はユーロビートが好きなんです。ユーロビート調の曲は、以前「夜勤の戦士のテーマ」でも作詞をしたんですが、あれが楽しかったので、また違う感じのものでやってみようかなって。それで『三国志』をテーマに作詞をしました。

 
▼上坂すみれ「夜勤の戦士のテーマ」

 

――もうタイトルからして、三国志ワールドで。

上坂:私はよく漫画の『三国志』を読むときに、ユーロビートを聴いているんです。ユーロビートと『三国志』って相性が良い印象があります。イメージ的には、90年代くらいの、ハイエナジーとユーロビートの真ん中くらいな、オールドスタイルな雰囲気になっています。『三国志』がモチーフではあるんですけども、耳だとユーロビートに聴こえる、といった雰囲気を心がけて書いてみました。

――『三国志』を読んでいるときには、どのようなユーロビートを聴かれているんですか?

上坂:私は『SUPER EUROBEAT』というコンピレーション・シリーズが好きでサブスクで聴いています。ユーロビートって歌詞が重要な立ち位置になっていないので、なにかを読みながらでも邪魔をしないというか、作業用のジャンルにもピッタリなんですよね。

『SUPER EUROBEAT』って大体50枚刻みくらいで、ちょっとずつ作風が変わっていくんです。枚数ではなくて、年代によって変わっていくという感じなんですけども。私は『SUPER EUROBEAT VOL.1』から『SUPER EUROBEAT VOL.100』くらいの雰囲気が好きなので、そのあたりの雰囲気を探りつつ、という感じでした。

――無知で恐縮なのですがVOL.100くらいまでとなると、まさにオールドスタイルっぽいユーロビートなのでしょうか?

上坂:そうですね。『SUPER EUROBEAT VOL.1』はゆっくりなんですよ。それはそれで良さがあります。

――ファンの方たちにも「KOUTOU TIGER」を聴きながら、『三国志』を読んでもらいたいですね。

上坂:そういう楽しみ方をしてもらえたらうれしいなって思います。

――ライブでも絶対盛り上がると思うのですが、振り付けも考えられているのでしょうか?

上坂:パラパラっぽい振り付けが合いそうだなって思っていて、ライブで披露するときにはそういう振り付けがあったら良いなと思っています。

 

 

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