日向翔陽役・村瀬 歩さんの共感するキャラクターは「登場人物で誰に近いかというと、僕自身はたぶん孤爪研磨なんです」|『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』インタビュー
『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が、2月16日(金)より公開です!
『ハイキュー!!』は、2012年より2020年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された古舘春一さんによる高校バレーボールを題材とした作品。2014年からTVアニメの放送が開始され、2020年までにシリーズ第4期まで制作されています。
今回の劇場版では、原作の中で最も人気のあるストーリーの一つ、烏野高校VS音駒高校。通称“ゴミ捨て場の決戦”。これまで何度も練習試合や合宿などで戦ってきた烏野高校と音駒高校のもう一回が無い試合を描いています。
アニメイトタイムズでは、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の公開を記念して、キャストにインタビュー。今回は主人公・日向翔陽役の村瀬 歩さんです。今作における役作りやキャラクターの魅力、アフレコ収録でのお話や作品への思い出など、たっぷりとお話ししていただきました。
『ハイキュー!!』に関わって10年
――今作のお話を聞いた時の率直なお気持ちをお聞かせください。
村瀬 歩さん(日向翔陽役、以下村瀬):今までもTVアニメの総集編で、劇場版をやっていたんですけど、ストーリーの続きとして劇場版になるのは今回が初めてです。劇場版の良さというのは、音のダイナミックさや画作りのところ、迫力のある大スクリーンなどがありますが、『ハイキュー!!』は音にもこだわっている作品なので、「劇場と親和性がより高いかもなぁ」と思いました。
――脚本を読んだ時の印象をお聞かせください。
村瀬:台本は全部で4冊あったんですけど、試合パートと過去の回想パートがいい感じでインサートとして入ってくるんです。そこのところのバランス感をすごく考えて脚本にされたんだろうなという印象がありました。
――アニメ『ハイキュー!!』は、今年で放送されてから10年を過ぎました。
村瀬:僕が『ハイキュー!!』のコンテンツに関わり始めてから、今年で10年目になります。当時の感覚でアウトプットしてしまうと、違うものが出てしまうかもしれないんですが、日向にとっては、まだ高校1年の途中ぐらいのできごとなんです。
役者も年齢とともに身体が変わっていきます。そうすると、楽器(声)の使い方というのも変わってくるので、「昔の感じをきちんと勉強した上で、それに近いところでやれたらいいな」と思っていました。ですから過去の作品を見て、昔の感じを思い出していました。
――過去作品の当時のご自身の演技を見られて、どのように感じましたか。
村瀬:初々しいと感じました。「今だったらこうするな」とか、「この時のこのセリフは、すごく真に迫っている」とか。今の自分が考えていることと合わせて、いろいろな気づきみたいなものが得られましたね。もちろん技術的には拙いんだけど、「その時のパッションで演じていたな」とか。そういうのは見直しながら、すごく自分で感じましたね。
――今作で日向翔陽役を演じるために、何か行ったことはありますか。
村瀬:今作の収録が始まる2、3か月ぐらい前からランニングを始めました。少しでもスポーツマンらしさをどこかに出せたらいいなと思って、軽い準備はしました(笑)。『ハイキュー!!』を読んでいて、「しんどい時にもう一歩を踏み出す」というところがバレーボールの肝として描かれているように僕は感じたんです。
ランニングはけっこうしんどいのですが「もうやめたいけど、あと10分ぐらい頑張るか~!」という感覚になるのは、彼らに近いのかなと思っています。それをもっと100倍くらいきつくしたら、彼らのメンタリティーになるんでしょうけど、自分で感じたしんどいという感覚が薄くても濃くするのがたぶん僕らの仕事でもあるので、一端を知ることができたような感じがします。
――日向はしんどい中でも、バレーボールが楽しくてしょうがない、好きで仕方ないという感じがします。
村瀬:そうですね。バレーボールをやっている理由がコートに一番長く立っていたいからなので。あとは勝ちたいからですよね。
村瀬さんの推しシーン
――今作の物語の中で、村瀬さんが共感したポイントがあれば教えてください。
村瀬:『ハイキュー!!』の登場人物で誰に近いかというと、僕自身は日向ではなくて、たぶん孤爪研磨(CV:梶 裕貴)なんです。
一つのことをコツコツやるのが好きだったり、自分から外にコミュニケーションを取りにいくよりも、周りに人が集まるタイプだったり、ゲームが好きだったりします。集中力に関しても、広くいろいろなところを見るという感じです。そういったことも含めて、研磨に共感できるところがありました。
だから、研磨にはもっとバレーボールに夢中になってほしいという日向の気持ちもわかりつつ、自分が好きなことに対しても、俯瞰で見てしまい、熱が入りきらないという研磨のこともすごく理解できるなと思って、ちょっと不思議な気持ちで脚本を読んでいましたね。
――日向翔陽というキャラクターはどんな人物だと思いましたか。
村瀬:エネルギーの塊ですね。日向は頭で考えるよりも、まずは行動に移すというタイプ。どちらかというと、声はそんなにインテリジェンスを感じないタイプのキャラクターじゃないかな。そんな日向とは反対で、僕の声質は含みが入ったりとか、暗く聞こえたりとか、冷静に聞こえたりしやすい声みたいなので、TVアニメ初期のアフレコから音響監督さんに「日向をやる時は、ずっと汗をかくぐらいやらないと、日向のエネルギーに追いつかないよ」という話をされていました。
彼自身も毎回すごく汗をかいているし、とても大きなエネルギーを持っていて、ナチュラルに人を誉めるのが上手。本人は意識をしていないんだけど、人の懐にサッと入っていけて、好かれる、愛されるタイプですよね。好奇心が留まることを知らないのは、すごいキャラクターだなと思っています。
――日向翔陽のエネルギーに追いつくために、大変なことはありますか。
村瀬:毎回(収録時)大変ですね。これまでいろいろなキャラクターやらせていただいて、楽をしてできるキャラクターはいないんですけど、自分の持っている特性と近いところにいたり、こういう感情の流れは理解できるなと感じたり、入りやすいキャラクターというのはいます。日向は、けっこう汗をかかないといけないキャラクターなので、収録の度に汗だくになりながら演じています。
――村瀬さんがおすすめする今作の見どころをお聞かせください。
村瀬:見どころがたくさんあるので、シーンを絞るのが難しいな。(しばらく考えて)あえて言うなら、研磨の日向潰しの術中に西谷夕(CV:岡本信彦)とか、チームのみんなが気づいて、サポートはしてくれるんですけど、今の自分にできることを否定されるようなプレーをされて、日向が研磨の策にはまりもがくシーンがあるのですが、そこでの掛け合いが見どころです。
そこの掛け合いのところは、日向が経験則からなる思考によって、研磨の罠からもがいて抜け出すんですけど、めちゃくちゃ好きです。日向は経験とともに、考え方にも地に足がついてきて、スパイクやジャンプだけではなく、レシーブも大事にするようになっていく。フィジカルだけではなく、メンタルも成長した日向の姿を見ることもできるし、かなり見ごたえがあるのではないか思います。
――日向翔陽の他に、注目してほしいキャラクターはいますか。
村瀬:黒尾鉄朗(CV:中村悠一)ですね。今作の話のメイン軸は研磨で、そこに日向との出会いや試合の積み重ねによって、研磨の中に熱が宿っていくといったお話です。ただ、サブ軸のところにずっと黒尾がいます。黒尾は積極的に汗をかきにいかない研磨をずっと見ていたからこそ、研磨の成長がより浮き彫りになるんです。
あと、黒尾は3年生なので今回の試合で卒業です。そういった3年生同士の絆もすごくきれいに描かれているので、黒尾にも注目していますね。