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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。
今大きな注目を集める漫画『黄泉のツガイ』。日本を舞台にしたバトルファンタジー作品である本作は、昨年「第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」の大賞を受賞した他、「次にくるマンガ大賞 2023」で2位に、「全国書店員が選んだおすすめコミック2024」で3位輝くなど、既に多くの漫画ファンから支持され、今後ますます盛り上がりを見せることが予想されます。
作者は『鋼の錬金術師』や『銀の匙』などで知られる荒川弘先生。2022年1月より連載が開始され、現在単行本6巻まで発売されています。
『鋼の錬金術師』とともに青春を過ごしたといっても過言ではない私は、軽い気持ちで本作を手に取り、あっという間にその虜に。ぜひその良さを多くの人に知ってほしい! ということで、この熱い気持ちに任せて筆を走らせたい(実際はキーボード)と思います。
※本稿にはネタバレが含まれますので、ご注意ください。
俗世から隔絶された山奥の小さな集落で生まれた「夜と昼を別つ男女双子」の兄ユルと妹アサ。特別な力を手に入れる資格を持つ彼らを巡って“ツガイ使い”によるバトルが繰り広げられます。
ツガイとは「対なるもの」「幽霊」「妖怪」「化け物」「UMA」「異形」など人によって様々な呼ばれ方をする一対の存在のこと。万人に見えるわけではなく、それぞれ千差万別な姿形・性格・能力を持っています。どのツガイも契約を交わした主(あるじ)を持ち、ツガイを従える主をツガイ使いと呼びます。
双子の力を手中に収めようと、彼らの物心がつく前から多くの大人たちが暗躍し、その結果幼い頃に生き別れてしまったユルとアサ。彼らが再会したことで物語は大きく動き出すのでした。
「#鋼の錬金術師」荒川弘最新作!!⚙️
— 『黄泉のツガイ』公式 (@TSUGAI_GANGAN) January 14, 2024
大いなる力を持つ双子が生まれた話(1/16) pic.twitter.com/dbURLOT7Ex
物語はユルが暮らす穏やかな集落・東村から始まります。その生活の基盤は狩猟や農作で、移動手段は徒歩か馬。村にない薬をはじめとした必要物資は“下界”からの商人を介して手に入れます。現代とはまるで違う生活スタイルです。
ここまで読むと、昔の日本を舞台にした作品という風に多くの読者は思うことでしょう。しかし、穏やかな村に突然何機ものヘリコプターとともに武装兵が襲来したことで、読者の思い込みはひっくり返されることになります。
村の大人たちは次々に殺され、荒らされていく東村。わけもわからないままユルが逃がされた“下界”に広がるのは、文明機器に溢れる現代日本の風景。つまり、東村は一般人が入れないよう結界が張られ隔絶されているものの、現代日本の中にある村だったのです。
さらに、東村にはお務め部屋と呼ばれる暗い牢に閉じ込められたアサの姿も。不穏なその姿の謎も序盤で明らかとなり、目まぐるしいほどの急展開に一気に物語に引き込まれます。私は、第1話を読んだだけで「絶対面白い漫画だ」と確信させられました。
本作は、ユルとアサの力を巡って複数の勢力が動きます。二大勢力はユルが生まれた東村とその昔考え方の違いから東村を出た一族・影森家です。とはいえ、それぞれの勢力にも過激派がいたり考え方にも個々人で違いがあったりと一枚岩ではありません。
ユルとアサの力を私欲のために利用したい者、無くしてしまった方が良いと考える者、世のために管理して使うべきと考える者……それぞれが自身の正義に従って行動しています。そのため、作中でははっきりと善悪の区別がついていないことが多く、読者の考え方に委ねられているように感じます。
また、それぞれの勢力が暗躍しており、味方だと思っていた人物が実は……ということも。互いの腹の内を探り合うようなやりとりも読んでいてゾクゾクします。
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— 『黄泉のツガイ』公式 (@TSUGAI_GANGAN) February 12, 2024
黄泉のツガイキャラクター紹介💭
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ユル
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夜と昼を別つ双子の片割れ。
左右様を従えるツガイ使い。
現代社会には疎い。
最新6巻は絶賛発売中💫
🔗https://t.co/eOUkM002CH#黄泉のツガイ pic.twitter.com/KZobdBrACt
ユルは幼い頃から父親に狩りを仕込まれており、抜群の腕前の持ち主。それは戦闘にも活かされており、自分を襲ってきた相手を返り討ちにすることもしばしば。
特に弓の腕は卓越しており、超絶技で敵を仕留めます。さらに「双子の夜の方」であるため暗闇でより強さを発揮。勘も鋭く、特に殺気には敏感で自分に殺気を飛ばすものに対しては容赦なく殺意を返します。
一方で、妹想いで周囲の人間に対する思い遣りのある一面や現代技術に感動したりはしゃいだりする可愛い一面も。敵対するものを狩る格好良さと人間味のある可愛さのギャップがとても魅力的な主人公なのです。
本作の鍵となる存在“ツガイ”。彼らは姿形・能力・性格など全てが千差万別で、どんなツガイが出てくるのかワクワクします。
たとえば、右と左、上顎と下顎、兎と亀、狐と狸、馬と人、大小二振りの刀などなど……ツガイは古くから日本にある伝承や昔話が元になっているものも多数登場します。荒川先生は地方の民間伝承を調べるため山里を歩き回ることもあるそうです。
登場したツガイを調べてみるとこれまた面白く、さらに本作を楽しむことができます。実は自分の出身地にゆかりある伝承がモチーフだった、なんてこともあるかもしれません。
現在6巻まで発売されており、まだまだ追いつける段階なので読み始めるなら今が絶好のチャンス! まだ解き明かされていない謎も多く、物語はここからさらに広がっていく予感がしています。7巻は2024年5月発売予定とのことで今から楽しみです。
個人的には『鋼の錬金術師』ファンにはぜひぜひ読んでほしいと思っています。なぜなら作中に小ネタとして『鋼の錬金術師』の一幕が登場するから。荒川先生のユーモアセンスに大笑い&大歓喜してしまいました。
脚光を浴びるのも納得の面白さの『黄泉のツガイ』を手に取ってみてくださいね。
1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。