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『トリコ』にグルメスパイザーが登場した理由。開発者が語る誕生秘話【インタビュー】

受け継がれる『トリコ』への愛とものづくりの魂――13年越しに明かされる「菓子粉砕器」誕生の裏側を“いただきます”|「グルメスパイザー」開発者インタビュー

誰かが言った……。

トレーディングカードゲーム『ユニオンアリーナ』にTVアニメ『トリコ』が参戦すると……。

その中に、あの「グルメスパイザー」のカードが存在すると……。
世は「グルメ時代」……未知なる味を求めて探求する時代!!

拳を形どった特徴的なデザイン、「PON CRUSH!! CRUSH!! PA PA PA♪」のフレーズでお馴染みのCM。アニメオリジナルアイテムとして登場し、視聴者に絶大なインパクトを与えた「菓子粉砕器 グルメスパイザー」。放送終了後も定期的に話題となり、時を越えて愛され続ける、まさに伝説級の玩具です。

そんな「グルメスパイザー」のカードが『ユニオンアリーナ』に登場するという噂を聞きつけたアニメイトタイムズは、「この機会に当時の開発者から話を聞けるのではないか?」と考え、インタビュー企画を提案。バンダイ様、東映アニメーション様から快諾いただきました!

今回は、当時、バンダイのボーイズトイ事業部にて「グルメスパイザー」の開発に携わった野口勉さん、現在『ユニオンアリーナ』にて『トリコ』の商品担当、そして当時リアルタイムでTVアニメを視聴していたカード事業部の坂口太一さんのおふたりにインタビュー。

商品コンセプトに込めた想いや1ヶ月にわたって実施された途方もない検証実験など、『トリコ』への情熱あふれるエピソードが続出。当時の開発者から連綿と受け継がれてきた“ものづくりの魂”とは一体!?

13年の時を経て明かされる「グルメスパイザー」誕生秘話に感謝を込めて、いただきます。

 

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商品名の候補には「ふりかけかっけー」「バトルスパイスメーカー」も

ーー今回の企画、まさかご承諾いただけるとは思っていませんでした。

元 株式会社バンダイ ボーイズトイ事業部・野口勉さん(以下、野口):『トリコ』という作品には、当時とてもお世話になったんです。今回のお声がかかったとき、盛り上げの一環として、少しでも恩返しができるならという気持ちでした。

ーー貴重な機会をいただき、本当にありがとうございます! まずは、簡単な自己紹介をお願いできますか。

野口:2011年からバンダイのボーイズトイ事業部に入りまして、「グルメスパイザー」の企画自体は途中から引き継いだ形になります。それまではホビー事業部に在籍しており、「ケロプラ」(ケロロ軍曹のプラモデル)や「ポケプラ」(ポケモンのプラモデル)、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」、「FIGURE‐RISE」など、新規企画の立ち上げとともに、企画開発担当をしていました。

ちょうど『トリコ』の放映タイミングで異動したため、『トリコ』の商品企画は既にスタートしていました。具体的には、「グルメスパイザー」の設計が固まり、金型の製作に入る段階で引き継いでいます。

ーー野口さんが入られた時点で、既に「グルメスパイザー」の基礎は固まっていたのですね。

野口:開発の経緯は引き継ぎの中で把握していますし、取材にあたって、前任者に再度ヒアリングも行ったので、その点についても正しい回答ができるのではないかと思います。

当時、自分が担当していたのは、試作品の調整やWEB媒体を活用した「グルメスパイザー」の遊び方紹介、パッケージ・取り扱い説明書の制作、CMや番組への打ち込みなどです。「ガツガツバトルフィギュア」や「美食形文字解読器 ペロットリーダー」といった、その後の『トリコ』の商品についても、当時のチームメンバーとそのまま企画・開発を進めていきました。

ーー直近のお仕事についてはいかがでしょうか?

野口:株式会社BANDAI SPIRITS(バンダイスピリッツ)のコレクターズ事業部で、「METAL STRUCTURE 解体匠機」や「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」という商品の立ち上げを行いました。現在の役職上は、企画・開発を全般的に見るDGM(Deputy General Manager:デピュティゼネラルマネージャー)という肩書きです。

ーーそして、『ユニオンアリーナ』で『トリコ』の商品担当をされている坂口さんにも同席いただきます。

株式会社バンダイ カード事業部・坂口太一さん(以下、坂口):カード事業部の坂口です。僕自身は転職で入ったため、未だ入社4年目くらいです。入社後、カード事業部で『ゼノンザード』や『ガンバライジング』などのゲーム関連のタイトルに携わり、『ドラゴンボール』や『SDガンダム外伝』のカードダス(復刻商品)に関わった後、『ユニオンアリーナ』における『トリコ』の商品担当を務めることになりました。

ーーインタビュー前にもお話させていただきましたが、本当に『トリコ』がお好きなんですね。

坂口:原作を全巻持っていますし、アニメも全話観ています! ただ、自分の入社タイミングで、『トリコ』関連の玩具はほとんど販売終了していたため、仕事として関われるとは全く思っていなかったです。本当に奇跡ですね。チャンスがきた瞬間に「ぜひやらせてください!」と手を挙げさせていただきました。

 

 

ーー改めて今回は、おふたりに「グルメスパイザー」の開発秘話や当時の思い出などを語っていただきたいと思います。まずは、「グルメスパイザー」というアニメオリジナルのアイテムを登場させることになった経緯から伺えますか。

野口:当時の東映アニメーションのプロデューサーさんから、「グッズと番組連動の企画がしたい」というお話をいただいたのが始まりと聞いています。

バンダイでは、子供向け作品と連動した玩具として、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズなどの成功体験も多く、両者の思いから『トリコ』の商品企画がスタートしました。最初から「グルメスパイザー」ありきだったわけではなく、番組と連動する企画のひとつとして開発が始まったというわけです。

ーー「お菓子を粉砕して調味料にする」というコンセプトについては?

野口:やはり『トリコ』に登場するアイテムなので、食材やグルメに関わる要素を玩具に取り入れたいという考えは初めから持っていたようです。

チーム内で「子供が夢中になってやることは何だろう?」を議論する中で、食べ物に対して邪魔をしない、むしろプラスになるような調味料・ふりかけをお菓子の組み合わせで作るというグッズが生まれたら、楽しんでもらえるんじゃないかと。そこから、『トリコ』らしく“食すること”をテーマにした調味料が作れる機械というアイデアが提案されました。

ーー当時いち視聴者だった坂口さんは、「グルメスパイザー」が登場した際にどう思われましたか?

坂口:驚きの一言でした。「原作に登場していない何かがある!?」と。特に人の前腕部の形をしている点がとても印象的でした。

▲グルメスパイザー アニメ設定画

▲グルメスパイザー アニメ設定画

キャラクターデザイン 香川 久 (かがわ ひさし)
本設定画は玩具を前提としてアニメ作画用に作ったもの。
細部はかつての東映アニメロボット風に多少調整してある。
玩具は手が開かないが、アニメでは手が開いてスパイスが出る設定。
 

ーー確かに、一度見たら忘れられないインパクトがあります。

野口:他にも色々なデザイン候補がありましたよ。銃やモンスターのような形状、ミルのようなデザインとか。『トリコ』という作品自体に強い個性があるので、見た目のインパクトは絶対に必要でした。

その中で、「『トリコ』じゃなくても良いよね」という案はどんどんなくなっていき、最終的には“筋肉感のある拳”のデザインを東映アニメーションのプロデューサーさんに気に入っていただいて。

ーー当時から、「『トリコ』の独特な世界観に異様なほど馴染んでいるな」と思っていました。

野口:そうですね。作品の世界観は大事にしたかったので、原作に負けないという気持ちで色々なアイデアを考えていました。

ーーそもそも「グルメスパイザー」という名称自体が、これ以上ないほどキャッチーですよね。

野口:実は商品名にも様々な候補があったんです。「ふりかけかっけー」、「バトルスパイスメーカー」とか。作品側と話し合った結果、最終的に「グルメスパイザー」という名称が決まりました。

坂口:絶対に「グルメスパイザー」で良かったと思います。『トリコ』=グルメという印象とスパイザーで砕くイメージも伝わるので、頭に残りやすいと思います。『ユニオンアリーナ』の話になってしまいますが、単体のカード名としても成り立つ名前なので、非常にありがたかったです。

 

 

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