バス江ママを囲む会へいらっしゃい♡ 明美役・高橋李依さん、バス江ママ役・斉藤貴美子さん、天野小雨役・宮本侑芽さんが『スナックバス江』の魅力をゆるく熱く語り合いつつ人生相談? ママへの愛を叫ぶ
斉藤貴美子さんにオファーした芦名監督の思い
──ところで、さきほど斉藤さんが「これまでのつながりで(バス江に選んでもらった)」というお話をされていました。その経緯もお伺いしてもいいですか?
斉藤:芦名監督初めての監督作品、漫☆画太郎先生原作の『世にも奇妙な漫☆画太郎』(2009年/OVA)に出演させていただいたご縁です。監督がいつかまた、一緒にお仕事をしたいと思い続けていてくださったんです。ただ、私は普段脇役をやらせていただくことが多いので、なかなかハマる役がなくて。今回『スナックバス江』のアニメ化が決まったときに「絶対に斉藤貴美子さんに」と思ってくださっていたそうなんです。
高橋:素敵!
斉藤: ただ、自分自身としてはやはり不安なところがありました。原作を読んだときに、皆さんそれぞれに脳内再生される声があると思うんです。だから私で良いのかな、と。でもアフレコが始まって、みんなの中に入ったら「私はバス江なんだ」と思えたんですけどね。第一話は特に。
高橋:そうですね。ただ実は、第一話にみんなでテストをした時に、私たちが見ていた『スナックバス江』の世界と、スタッフ陣が作りたい『スナックバス江』の世界にズレがあったんですよね。
──へえ!
高橋:簡単な言葉で言うのであれば、自分たちはハイテンションギャグコメディだと思っていたんです。
斉藤:うんうん。
高橋:と、思っていたんですけど「それだとスナックじゃないんだ」と。スナックってそんなハイテンションな会話が繰り広げられているわけではなく、ゆったりと会話が成立する止まり木のような場所なんですよね。
私たちはギャグベースで作っていたので、ハイペースな会話をイメージしていた。それを直していくのが、ブース内では衝撃的でした。それを経て、ゆったりと作品づくりを始めたときに、『スナックバス江』の世界が見えてきたなあと。
斉藤:原作は短いショートストーリーで、軽快なテンポで進んでいくのがとても面白くて。でもアニメでは、ゆったりとしたスナックの日常が、より長い時間描かれているんですよ。だからお店の中の日常、ということを意識しなきゃなと。昨今のアニメや映画は、テンポがとにかく早くて、セリフ量が多いことが当たり前となっている中で……特に第一話はビックリされたかもしれません。
高橋:テンポが速い=良いと捉えやすい時代になっている中で、すごく挑戦しているなと思います。そこにスナックのリアルが詰まっていると思っているので、『スナックバス江』ならではのスナック・コメディになっていたら良いなと。
斉藤:ゆったりした中で盛り上がるところもあって、それもまたリアルというか。日常の中でも、友だちと会話している時に「あ〜、わかるわかる!」って急に盛り上がるところがあると思うんです。それが『スナックバス江』の中にもあるんですよね。特に私はお客さんがいない間に繰り広げられる明美と小雨の会話が好きです。
高橋:独特ですよね。
斉藤:うん、独特。女子同士ならではの、裏側の会話というか。それも本編で見られると思うので、楽しみにしていてほしいなと。
宮本:ママはいつも語尾がハートですよね。
高橋:確かに!
斉藤:♡がつくセリフはちゃんとかわいく、って思っています。かわいいお婆ちゃんなんですよね。そうじゃなきゃチーママもついてきてくれないし、お店も繁盛しないと思うんです。チーママがかわいいだけじゃなく、やっぱりママにも魅力がないと♡
愛とこだわりは隅々にまで
──例えば、ある会話に「新千歳空港」が登場した時に「スナックでお酒を飲んでいる時に、わざわざ地元の人たちがスナックで新千歳空港って言うのかな? 千歳空港じゃない?」という話になって。先生にも確認した上で「千歳空港」に変えられていたことがとても印象的でした。
宮本:リアルさが出ていますよね。
高橋:私たちがセリフを直すことは少ないんですけども、音になったときに「この助詞のほうが伝わりやすいんじゃないか?などの提案はしました。そういう意味でも、やりやすい現場だなって。
──高橋さんは一部やり直したいところがあるとご相談されていましたよね。
高橋:あ、そうなんです! 第一話で「カレピ」と言うシーンがありますが、「カレピ(↘︎)」と発音していたんです。でも「カレピ(↗︎)」だろ!って後日気づきまして。
高橋:それで「すみません、あそこ再度録ってもいいですか?」ってお願いしました。両方録った上で、好みのほうを使ってもらえたらなと。
斉藤:どちらも面白そうだね。「カレピ(↘︎)」もリアルな気がする。明美が20代後半だから、若い子の言葉を使ってみたけどちょっとイントネーションを間違えちゃって、そこに少し大人が出ちゃう、っていうのも面白いなって。だから現場では気にしてなかったのかもしれないね。
高橋:確かに!
斉藤:どっちのほうが破壊力があるか次第で決まりそうだね(笑)。実際耳にすると分かりにくい言葉ってあると思うんです。もしかしたら「原作と違う」と思われるところがあるかもしれないのですが、それは作品愛ゆえというか。「この作品をアニメでどう伝えられるか」を考えぬいたからこそなんですよね。だからこそ、私たちも「どう伝えられるか」挑戦することができます。
宮本:私は(音声によって)「面白くしないこともできちゃう」のがめちゃくちゃ怖いです。でも、そこを考えるのは面白いところでもあって。例えば、リアクションひとつとっても、画では派手だけど、音は小さめにしたほうが面白いんじゃないかな、とか。その場合は、音としては控えめにして、画で持っていったほうが良いのかな、とか一緒に考えています。
斉藤:ディレクションを聞いて「ああ、なるほど」って思うこともあるよね。監督、音響監督についてきます……!と。私たちのお芝居も尊重してくれるんですよ。まずは思う通りにやってみて、その次に「こうして」と言われたときに「なんでですか?」とはならないんですよね。「絶対そのほうが面白くなる!」と。お互いに信頼感のようなものがありますね。