『僕の心のヤバイやつ』第2期 連載インタビュー第7回:市川京太郎役・堀江 瞬さん✕足立 翔役・岡本信彦さん|「市川自身も逃げずに(足立と)ぶつかり合っていて。彼の性格から考えてめちゃくちゃ大冒険だったと思います」
TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期が、テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠・BS朝日・CSテレ朝チャンネル1にて放送されています。桜井のりお先生が『マンガクロス』(秋田書店)で連載中の『僕の心のヤバイやつ』は、SNSを中心に人気を集め、コミックス累計発行部数400万部を突破中の話題作です。
アニメイトタイムズでは第1期に引き続き連載インタビューを実施中です。連載7回は市川京太郎役・堀江 瞬さん✕足立 翔役・岡本信彦さんが登場。
連載インタビュー第1回で桜井先生にお話をうかがった際に「足立を演じてくださった岡本(信彦)さんの声を聞いて、足立って実は内面が熱いヤツなのかなぁって。それは私の中で発見でした。基本的にふざけてるけど、根は真面目なところがあって。人と向き合うことに対して真面目な性格なのかなって。岡本さんの声がついたことでそれは感じましたね。1期のアフレコのあとに体育祭のエピソード(原作8巻収録)を描いていたんです。その影響はあったかなと思います」と明かされていました。
その体育祭のお話がメインに描かれた第23話。第2期アフレコの最中にお話をうかがいました。
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足立と市川の中に存在していた友情
――本連載で岡本さんにお話をうかがうのは初めてなので、まずは足立役を演じるにあたってのお気持ちについても、ぜひうかがえたらなと。
足立 翔役・岡本信彦さん(以下、岡本):最初のセリフから下ネタから始まっていて(笑)。公共の電波でこんなこと喋っていいのかって思いつつ……。
市川京太郎役・堀江 瞬さん(以下、堀江):(笑)
岡本:それに説得力というか……アニメの中の“男子あるある”として「あいつはバカだから仕方ないよね」にするにはどうしたら良いんだろうと。だから抜け感と言いますか。言うなれば、純粋さのようなものが出れば良いなと思っていました。作為的なものではなく、悪気なく言っている感覚として届けば良いなと。……と、なると「足立はピュアなやつ」ってイメージがありました。
――まさにそういう印象でした。
岡本:あ、本当ですか。ありがとうございます。市川に対して突っかかることもあるんですけど、それも悪気があるというより、もっと手前にある嫉妬だったり、男として負けた気がするってところだったり。そういう可愛げのある突っかかりなのかなっていう。
――第1期『僕ヤバ』をご覧になって、どのような印象がありましたか?
岡本:ぶっちゃけて言うなら、モブのひとり的な感覚でした。神崎・太田・足立はモブの集団っていうか。
堀江:本当ですか?
岡本:うん。山田、市川がメインとしている中での、にぎやかしの人たち。アドリブも多かったんです。「勝手にここらへんで喋って下さい」っていう。
そこまで任されてるということは、赤城監督が信じてくれているのかな、と思いつつも、どれだけ「馬鹿だなぁ」という中学生感を出せるかということを意識しながらアドリブをしていました。何を話したかまでは覚えていないんですけども。
――それだけ他愛のない会話をというか。
岡本:そうですね。できるだけ嫌味のないような、下ネタを(笑)。下ネタって昨今の時代的にも難しいところがあると思うんです。昭和・平成であればもう少し軽く言えていたことが、軽く言えないところがある。そういう葛藤は少し在りつつも、間を狙っていけたら良いなと。
――モブのひとり的な感覚だった、というお話が意外でした。
岡本:23話はいきなりメインで、土俵に立たされた感じがしました。最初のチェックをした時に、これ、同じ『僕ヤバ』の作品で合っていますか、と(笑)。でも市川も市川で友だちだと思ってくれていたんだ、と嬉しかったです。
思えば、ずっと足立のことを“陰にも陽にもなれない”と言っていたんですけども、その雰囲気が市川的にもとっつきやすかったのかな?とも思います。少し下に見える存在というか。それって心の拠り所でもあったのかな?と。
――どうなんでしょうか、堀江さん。
堀江:「下に見てる」ということはあまりなくって。多分、足立も自分のことを対等に見てくれているという無意識の中での確信が、市川の中にあったような気がします。それが言葉にせずとも、通じ合っているというか……男の友情的なものを感じていました。
岡本:なるほど。
技術だけでは表現しきれない、市川のある言葉
――せっかくの対談なので、お互いのお芝居に対するご印象などもうかがえればなと思っていて。
岡本:いや、もう。僕は第1期の頃に『僕ヤバ』のお話を聞いた時に、市川役をできる人って、声優業界でホリエルがいちばん――。
堀江:いやいや……!
岡本:市川の喋っている雰囲気、モノローグ……あ、あの闇感も含めて(笑)。モノローグで「こんなことを思っているんだ」ってところも。
堀江:僕は思ってないですよ!
岡本:声質もあるのかもしれない。声質の可愛らしさだったり、どこか達観したかのような綺麗さだったり。高いはずのトーンのところで、暗めの印象を出せるんです。それは昔からそうなんですけども。だからこそ、市川とマッチするのかなと思っていました。例えば、第1期に「おっふ」という言葉があったじゃないですか。正直、僕にとっては難しい言葉なんです。あざとくなりすぎてしまう気もして。で、ホリエルの「おっふ」を聞いたときに、「なんでこんなナチュラルな“おっふ”が言えるんだ!」って。
堀江:(恐縮しつつ)いや、そんな。
岡本:確か、ホリエルにも直接言ったような。
堀江:はい。言っていただきました。
岡本:そのあと(南条ハルヤ役の島﨑)信長くんと「あの“おっふ”良かったよね」ってトークをしながら帰ったんです。
堀江:えっ、本当ですか(笑)。それは知りませんでした。
岡本:盛ってしまいがちな言葉なんです。バランスが難しい。僕がやるとしたら、ギャグで逃げ切ってしまうか、聞こえないくらいのニュアンスにしてしまうか。あれだけ音になりつつ、あざとくもならない「おっふ」はなかなか難しいんじゃないかなって。
堀江:え……まさかここまで褒めてもらえるとは思わず……なんだか見直したくなってきました。そこまで言っていただける「おっふ」を僕は出してたのか!
岡本:少なからず信長くんと俺には刺さっていた。
――技術がいるんですね。
岡本:でも、技術というより、その先のような気がします。感性とか、相性とか。技術で出せないものというか。
――なるほど!
堀江:僕自身は「おっふ」がめっちゃ良い感じになるぞ!と思いながらやったわけじゃなかったので、なんだか不思議な感じがします(笑)。でも、現場で2回くらい、岡本さんから言っていただいたんです。あまり自分の中ではしっくりきてなかったので、「あの“おっふ”ですか?」って感じで。なんだかすみません……。
岡本:(笑)。いやいや、すごく良いです。