綺麗なものだけが美しいとは思わない。その歪みすら美しい――佐々木李子さん・高尾奏音さんが『BanG Dream! Ave Mujica』で見出したAve Mujicaの救い【後編】
その姿は気高く美しく、どこか妖しげ。ミュージカルを見ているかのような、ミステリアスかつゴシックなライブを展開してきたAve Mujica。2024年1月27日、神奈川・横須賀芸術劇場にて行われた【Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」】も大盛況のうちに幕を閉じた。
Ave Mujicaは、『バンドリ!』プロジェクトの新バンドとして、2023年4月10日に突如誕生。映像やSNSを通じて提示される“謎”をユーザーが紐解くという、現実と仮想が交差したコンテンツ展開が話題を呼んだ。TVアニメの中では『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』最終話で登場。来年1月に放送予定の続編『BanG Dream! Ave Mujica』でスポットが当たる。
アニメイトタイムズでは佐々木李子(Gt.&Vo.、ドロリス/三角初華役)、高尾奏音(Key.、オブリビオニス/豊川祥子役)にインタビュー。後編では、件の1st LIVEについてじっくりと振り返りつつ、今後の未来に向けた展望を伺っていく。
バックナンバー
「みんなを感じながら歌っています」
ーー1月27日、神奈川・横須賀芸術劇場にて行われた【Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」】に向けて、メンバー内ではどのようなディスカッションがあったのでしょう?
ドロリス/三角初華役・佐々木李子さん(以下、佐々木):年末年始、ライブが近づいてきたタイミングで、動きについてビデオ通話で相談してたよね。
オブリビオニス/豊川祥子役・高尾奏音さん(以下、高尾):ビデオ通話は左右が反転しているから、動きを説明するのが凄く難しくて(笑)。
佐々木:ギリギリまで世界観を作り込みましたね。0th LIVEではローブを着て、スタンドマイクでどっしりと世界観を届けていたのですが、1st LIVEはヘッドセットマイクになったんです。そこが大きく変わった点ですね。メンバーの近くに歌いながら行けたり、動きにも広がりが出たり。
ハンドマイクもやったので、今後も色々と使い分けられると思うんです。お芝居によっては、ずっとハンドマイクで歌っても素敵だなと思うし、スタンドマイクで歌いたい曲もあるし。ヘッドセットでみんなの近くまで行ったり、どこかに行っちゃったり……(笑)。
一同:(笑)
高尾:ヘッドセットで楽しそうに歌っているりこちを見ると、大変なパッセージ(一節)を弾いていても、楽しい気持ちが伝染して、大変だった曲が好きな曲に変わる瞬間があるんです。「りこちのパワーは偉大だな」って。
佐々木:私もだよ! 私もみんなの演奏を聞くと歌に力が出るんです。一生懸命やっていると、世界観にのめり込んで、意識が朦朧とする瞬間もあるんですよ。そんなときに、のんたんのピアノに耳を傾けると、ドロリスでいられます。ゆづむん(モーティス/若葉睦役・渡瀬結月さん)のギターも、あえて上手側のイヤモニを上げてもらっているんですけど、一緒に合わせるところはしっかりと聞いて。ベースもドラムも、五感でみんなを感じて歌っています。
ーーそれを特に感じた曲はありますか?
高尾:私の場合は「Angles」でしょうか。少し話が遡ってしまうのですが……0th LIVEのときは、期待感やワクワク感が大きかったんですけど、アニメが発表されて、オープニングアクトもやらせていただいて、ファンの方々の反響が本当に大きくて。
それによって、1st LIVEではプレッシャーを感じてしまったんです。「さらに良いものを出し続けなきゃいけない」という思いが大きくなっていて、珍しくめちゃくちゃ緊張していました。りこちとゆづむんのギターの先生がいつもリハーサルを見てくださっているのですが、「高尾は緊張しているときに、メンバーの目をちゃんと見れていないよ」という指摘をしてくださって。「本番で不安になったら、メンバーの目を見るということをお守りにしたら良いんじゃない?」と。
ーー良い言葉! その言葉自体もお守りになりますね。
高尾:それを本番の直前に思い出したんです。個人的に今回のセトリの中で、歌とピアノから始まる「Angles」はとても緊張していて。りこちに「Angles」のとき、私の目を見ていてほしい」とお願いしました。本番では、アイコンタクトを送ってくれたおかげで、世界観に入れて、「私のお守りは目を見ることなんだな」と気づけた1st LIVEでした。
佐々木:私は逆にリハーサルのとき、見つめすぎて……。見つめすぎるのも怖いかなと思って、良い塩梅を探していたんですよ。のんたんの気持ちになったら、「見られていたら集中できなくなるかも」って。でも、本番前にのんたんが「見つめていてほしい」と言ってくれたのが嬉しくて。本当に気持ち良く見つめられました。
高尾:気持ち良く(笑)。
佐々木:のんたんが気持ちを込めて弾いている姿を見ていると、私自身もそれに合わせて心が躍るというか。歌にも気持ちが入るので、ふたりの心を合わせて、演奏できた「Angles」だったなと。
ーー「Angles」の始まりの演出も、緊張感に溢れたものでした。
高尾:「こんなにスポットライト浴びたことないぞ」と。配信の映像で、2人が一緒に映るシーンのカメラワークもすごかったよね。
ーー佐々木さん自身はあのときどんな思いだったんですか。
佐々木:一番はドロリスとオブリビオニスのふたりの世界だったんです。もちろんライブをしているんですけど、「この世界には2人だけ」という気持ちで歌っていて。緊張はしなかったかもしれないです。心強いオブリビオニスが輝いていたから、絶対に大丈夫だという確固たる自信がありました。
高尾:流石だ!
狂気のリフマスターによる緊張のアルペジオ
ーー佐々木さんが歌っている中で、「難しいけど、このメンバーならできるな」という手応えを感じた曲はありましたか。
佐々木:私もリードギターを弾きながら歌っているので、心が折れそうになるときもあるんです。でも、ゆづむんもたくさん弾くんです。“狂気のリフマスター”というくらい。
高尾:(笑)
佐々木:リズムギターは、本当に難しいんです。ゆづむんは「Angles」の一番最後のアルペジオが特に緊張したんじゃないかと思います。
高尾:本番は大成功していました!
佐々木:ゆづむんはあまり自分でこれだけ頑張ったということを言わないんですよ。演奏で示すというか。それを毎回リハーサルやライブで強く感じています。今回の1st LIVEでも、血の滲む努力の末に弾いているアルペジオを聞きながら、私も最後のソロを弾いていました。この演出を考えてくださったプロデューサーもすごいです。
お互い難しいけど、「一緒ならどんなに難しくても頑張れるよね」と。特に何かを言わなくても、演奏で語れるなと思っています。