「この作品1回アニメ化しているからすんなり行くんじゃないの」って最初は思ってたんですけれど「まぁそんなはずない」春アニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』キャストインタビュー【前編】 クラフト・ロレンス役、福山 潤さん
KADOKAWAから刊行中の大人気ライトノベル『狼と香辛料』。その15周年プロジェクトの中で発表された完全新作TVアニメ『狼と香辛料MERCHANT MEETS THE WISE WOLF 』がいよいよ4月1日よりスタートします。
2008年より2クールのアニメ化も放送された同作が、再び映像化されるということで、どのようなアニメになるのか気になるファンも多いかと思われます。
そこで今回、アニメイトタイムズではクラフト・ロレンス役の福山 潤さん、ホロ役の小清水亜美さんにインタビューを実施。改めてキャラクターをどう演じていったのか、今回の見どころ、『狼と香辛料』という作品をどう捉えているのかなど、たっぷりとお話をお伺いしました。
そんなキャストインタビュー前編では、福山 潤さんのインタビューをお届けします!
15年前の焼き直しではなく、今演じる上でできる限りのロレンスにしたい
──まずはじめに、新アニメが発表された時の感想をお願いします。
福山 潤さん(以下、福山):アニメ化するという一報をいただいて、それが今回のプロジェクトだっていうのは説明がなかったので、てっきり僕は続編をやるんだとばかり思っていたっていうのが正直なところですね。
収録の2年ぐらい前にもうお話は聞いていたんですが、1からアニメをやるって知ったのは台本もらってからなので、台本をもらって「え、1からやるの?」って驚きました(笑)。
──久々にそのアニメで演じてみていかがでしたか?
福山:1話の収録から数年前に、VRアニメでその後のお話をやらせていただいたので、思いっきり久しぶりという感覚はなかったんですけれど、続編と違って1からになるので、自分の15年前の焼き直しにするべきなのかどうなのかっていう部分が難しかったですね。まんま同じようにするっていうのが僕はあまり好きじゃないので、今演じる上でできるかぎりのものにはしたいなぁと。
とはいえ、大胆に変えてしまうと同じキャストでやる意味もなくなっちゃいますし、キャラクター性も変わってしまうので、基本は15年前に初めてやった時の記憶を頼りにしました。そしてストーリーは一度やっているので、その中で起こる先々のことも分かっているからこそ、やらなきゃいけないところが見えてはいるので。そこを音響監督や監督たちからの指示と踏まえてバランスを見ながら演じたという感じですね。
──監督たちから何か「こうしてほしい」といった要望などはあったのでしょうか?
福山:「最初の段階でできる商人にはしたくない」と。
当時僕が15年前にやった時はロレンスを無理してやっていた部分があったので、大人の30才近い青年、しかも当時の文化で考えたらおそらく20代中頃と言っても、現代だったら30代中頃ぐらいの年齢観になるでしょうから。そういった人物を演じると実年齢よりも上だし、肉体的にも自分としては背伸びをしなきゃいけなかった部分が多々あったので、それを今はやらなくてもよくなってはいるはずなんです。
とはいえ楽にやってしまうと、自分の中で経験から来る実感と、実際アウトプットした時に聞こえる印象というものが大きく違ってしまうだろうと思ったので、それを最初のテスト段階で提示させてもらって、監督サイドから来たディレクションに対応しようという感じで臨みました。
極論言うと、ロレンスは大きく変わらなければ問題ないはずなんです。作品としてのポイントは”ホロがホロらしく居れるかどうか”なので。その点においてホロに関しては15年っていう経験がプラスに転じるポジションなので、ならば自分がどうというよりも、ホロとのバランスで考えた方がいいのかなぁというのは収録の時に感じていましたね。
ただ、(ホロ役の小清水さんと)一緒に録ってはいるんですけど、ブースが違って僕だけ隔離されたとこで録ったんですよ。というのも、セリフの間に表情変化があったりとか、尺もタイトなのは相変わらずだったので、他のキャラクターとリアクションがすごく被っちゃうんですね。なので、ヘッドホンから聞こえてくる声だけ聞きながらバランスを取るようにやっていました。
──役作りに関しては、以前演じたものとどうすり合わせていったのでしょうか?
福山:僕今回、見直すの一切止めたんですよ。それやるとキリがないので。そして、それを求めるならば「キャスト変えるでしょ」とも思うので。今できることと、当時自分の中でこうやりたかったっていう部分は僕の中に残っているので、それを今の自分の体でやるならどうなるかなとか。
あと、当時は努めないとできなかったことが、今は努めなくてもできるようになっていたり、逆に当時ナチュラルにできたことが、今努めなきゃできなくなっている部分が多々あるので、その分、表現としては難しいんですけれど、当時よりかは上手くなってるので(笑)。
ただ、それを出しすぎると「こいつ経験者だろ」って思われるラインが僕としては判断が難しくて。でもブラフであったり、本当にできる部分も出していかなきゃいけないので、15年前以上に監督や音響監督の方たちの演出に委ねるポイントがでかくなっている印象ですね。
あとは、15年前と同じところが難しいと感じることもありますね。これはもう音響監督の範疇になっちゃうんですけれど、表情変化とか言葉の裏でのリアクションが多いんですよ。言葉にあたってないと、何のリアクションなのか聞いていてわからないんですよ。15年前に関してはそこがとにかく難しくて。とにかく表情変化、いろんな息だとかをいっぱい入れなきゃいけなくて。それ全部オンエアに乗っているんですけれど、どうしても背伸びして演じてしまっていた当時は、そう聞こえないことが多々あったんですね。
そういうところをなるべく今回は修正していきたいなというのはありましたね。
──演じる難易度としては15年前と今、どちらが難しかったですか?
福山:前よりかは楽っちゃ楽なんですけど、難易度は上がった気がします。求められるものというか。1回経験してるからっていうのもあるんですけど。基本的に名前がある役は15年前のキャストと変わってないんですよ。だから過去ご一緒してはいるんですけど、みなさんやっぱりその分の経験があるので、そこのところに渡り合わなきゃいけないよね、とか。こっちもこっちで青臭くやんなきゃいけないよねとか。
そういった、本来だったら考えなくていい部分ってのが実はいっぱいあるので。今だったら女性にそんなこと言われたって何も思わないんですけど、ロレンスは大変ウブなので、1個1個の反応を新鮮にしていかなきゃいけないっていうのが結構あるんですよ。もう毎週毎週あるので、やってる身からすると「学ばないな」と思うんですが(笑)。そこもフレッシュにやっていかないといけないので、自分の中でクッションを設けないと上手く噛み合わない気はとてもしましたね。