自分の限界値と向き合って、“今しかない薬研”を演じたい――『刀剣乱舞 廻 -虚伝 燃ゆる本能寺-』薬研藤四郎役・山下誠一郎さんインタビュー
舞台『刀剣乱舞』を脚本原案とするアニメ『刀剣乱舞 廻 -虚伝 燃ゆる本能寺-』が、2024年4月2日(火)より放送されます。魔王・織田信長が暗殺される歴史の分岐点「本能寺の変」を舞台に、織田に関わる4振りの刀剣男士たちの葛藤が描かれる今作。
本稿では、そのひと振りである薬研藤四郎役の山下誠一郎さんのインタビューをお届け。今作ならではの見どころ、9年以上演じ続けてきた薬研藤四郎に対する想いをうかがいました。
薬研藤四郎、愛染国俊は“思い入れの深いキャラクター”
ーー山下さんにとって、長らく演じ続けてきた薬研藤四郎というキャラクターは、どのような存在ですか?
薬研藤四郎役・山下誠一郎さん(以下、山下):『刀剣乱舞ONLINE』が9周年なので、自分が初めて演じたときから10年は経っています。デビューして間もない頃に、薬研藤四郎、愛染国俊というご縁をいただいて、ずっと演じ続けてきた思い入れの深いキャラクターです。近年色々な役を再び演じる機会に恵まれている中で、一番歴史が深いのはこのふたりですね。
ーーある意味、ずっと手を繋いでる感覚というか。
山下:どちらかと言えば、「引っ張ってくれた」という表現が正しいと思います。『刀剣乱舞』のおかげで、自分を認知してもらえることは本当に多いんです。お手紙やコメントをいただく中で、別作品で演じたキャラクターを見て、「薬研とのお芝居の差に驚きました」と言っていただけることもあって、役者としての大きな看板になっていると思います。とても嬉しいことですね。
ーー薬研藤四郎が活躍する今作のアニメ化を知った際の心境は?
山下:純粋に楽しみでしたし、久々にアニメーションで薬研を演じられることが嬉しかったです。『虚伝』(舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺)という舞台を脚本原案としたアニメなのですが、実は7、8年前に初演を観劇させていただいたんです。織田信長という絶対的な存在を扱っていることもあり、「これは面白くなるしかないだろう」と。一方で、いち観客として見ていた作品に自分が取り組むという緊張感もありました。
ーー上演当時から印象に残っていた物語だったと。
山下:そうですね。『虚伝』は演出の末満さん(末満健一さん)が脚本も担当されていて、舞台ならではの表現が惜しみなく盛り込まれていたんです。コンテンツが2.5次元作品に派生する流れは今や定番になっていますが、『刀剣乱舞』は早い段階かつ、この作品にしかない良さを打ち立てていた気がします。ただ、「これは舞台だからこそ」とも思っていたので、アニメーションに落とし込んだときにどうなるのかは気になりました。2.5次元から2次元に変わる分、「どんな映像表現になるんだろう?」と。
ーーアニメ化のお話を聞いた時点で、興味深いものがあったんですね。
山下:実は今作の薬研を演じるにあたって、『虚伝』のパッケージを買って観直したんですよ。色々なことを思い出しつつ、当時観劇したときと今では“見えるもの”が違いました。直近で舞台のお仕事も少しだけ経験させていただいたこともあり、改めて「凄まじい舞台だな」と。
ーー様々な経験を経て観ると違ったものがあったんですね。
山下:気づきは多かったです。何より、演者さんの舞台にかける熱量を感じました。特に椎名鯛造さん演じる不動行光は、瀧のような汗が映像で見えて、「これほどの想いを持って役を生きているんだな」と。「燃ゆる本能寺」というシチュエーションも含め、観ていて背筋が伸びるような気持ちでした。
これまでは「格好良い! 楽しい!」と純粋に楽しんでいましたが、技術的な関心も色々と生まれまして。舞台という限られた時間・空間の中で、「時間遡行軍をこうやって表現するんだ」、「このアドリブは衣装やセットの切り替え時間を見ているのかな」とか。演劇の総合芸術感を学ばせていただいた気がしています。自分が舞台の上で表現するわけではないですが、様々な要素に着目して観られたので、楽しかったですね。
ーーそれは収録に臨むうえでも役立ちましたか?
山下:舞台で演じられていたキャストのみなさんの演技には刺激を受けました。役者としては良い兆候だと思いますが、「俺も何か打ち立ててやる!」とメラメラした思いが生まれたんです。一筋縄ではいかない物語でもあるので、「今作でまた薬研を深く知って、向き合いたい」と。
声優と舞台でルールの異なる部分はありますが、薬研を演じている北村諒さんのお芝居や佇まいを見て、当時の僕では気付けなかったすごさにも改めて気づけました。『刀剣乱舞ONLINE』や『刀剣乱舞無双』でも薬研をしっかり演じていましたが、改めて北村さんの薬研も拝見したうえで、「今の自分が薬研に対してどうアプローチできるのか」というチャレンジを課していました。