自分の限界値と向き合って、“今しかない薬研”を演じたい――『刀剣乱舞 廻 -虚伝 燃ゆる本能寺-』薬研藤四郎役・山下誠一郎さんインタビュー
今作の刀剣男士は人間くさいイメージ
ーー舞台を脚本原案としたアニメの見せ方や演出については、どのように感じられましたか?
山下:ゴールは見えている状態ですが、全くその通りに描いているわけでもないんです。『虚伝』という作品の感覚を取り入れつつも、アニメだからできる表現があると感じました。オフィシャルコメントで「アニメならではの見せ方や演出にも注目」と言ったのは、やはりその通りだと思っています。
ーーこれまでにない画作りがなされていますよね。
山下:ティザービジュアルの段階から、デザイン面でより生々しさや人間くささを感じました。幼さやあどけなさに加えて、どこか儚い印象を受けたんです。薬研も少しだけ幼く見えますね。キャラクターデザインの方の画風もあって、長谷部(へし切長谷部)を見ていてもどこか人間らしいなと。三日月(三日月宗近)はまた違いますが、織田の刀たちや山姥切(山姥切国広)には特にそういったイメージを持ちました。
ーー映像面でも舞台版との違いが感じられそうです。
山下:人間離れした動きや振る舞いが表現しやすい点もアニメの良さです。刀剣男士たちの衣装を描くのは大変だと思いますが……。舞台とアニメのアクションでは違いがありますし、「この先に登場する強大な敵がどう表現されるのか」、「本能寺の変がどう描かれるのか」も気になります。
ーー舞台版には登場しなかった刀剣男士たちの姿も見られるとか。
山下:沢山の刀剣男士が登場させられることはアニメならではの要素だと思います。どちらが良いというわけではなく、舞台では多くのキャストさんにオファーすることへのハードルがありますよね。自分自身も、久々に愛染国俊を演じさせていただきました。「メインの刀剣男士たちとどういう関わり方をするのか」、「誰と誰が掛け合っているのか」は見どころなのかなと。「いつどこで登場するのか」もオンエアを観る楽しみのひとつだと思うので、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
特別な思いがある作品になった
ーーところで、アニメで薬研藤四郎を演じるのはいつ以来になるのでしょう?
山下:『花丸』の劇場版(特『刀剣乱舞-花丸-』〜雪月華〜)が最後です。その頃はいわゆるコロナ禍で、ほとんどが分散収録でした。誰しもがそうだったと思いますが、『花丸』は賑やかな作品だったので、収録する際にどこか味気なさや寂しい気持ちもあったんです。今回は、ある程度分散しつつも、スタジオを2部屋に分けて、同時に収録できる環境のスタジオでした。掛け合いが多いメンバーとは、一緒に収録できたんです。ずっと聞いてきて、掛け合っていた先輩たちと再び一緒に演じられて、とても嬉しかった記憶があります。
今作の薬研は、宗三(宗三左文字)との会話が多かったです。織田の刀の中でも、宗三に対する薬研の気遣いは大きかったのかなと。織田信長に心を揺らすのは宗三左文字、へし切長谷部、不動行光の三振り。同じ織田の刀だったものとして、薬研は彼らの中継・繋ぎをしているような感覚ですね。へし切長谷部、不動行光との掛け合いも多かった印象があります。
ーー今作での挑戦は山下さん自身にとっても、楽しいものだったのではないでしょうか?
山下:個人的にはとても良いタイミングでトライさせていただいたと感じています。改めて台本を読み直したのですが、当時の奮闘の跡が残っていました。それが今の自分にも役立っていますし、『刀剣乱舞 廻』から繋がった縁も多かったので、特別な思いがありますね。近年の自分にとって、なくてはならない作品だと思います。
[インタビュー・編集:逆井マリ 文:小川いなり]