「菫子を通して、自分を奮起させる機会を得ることができるんじゃないかなって」『怪異と乙女と神隠し』緒川菫子役・ファイルーズあいさんインタビュー|菫子と向き合ったことで得たもの、感じたこと。
「やわらかスピリッツ」連載中のぬじま先生が描く“現代怪異ロマネスク”『怪異と乙女と神隠し』のアニメーションが、2024年4月10日(水)より放送・配信開始されます。
オカルト好きの女性作家・緒川菫子(おがわ すみれこ)役を演じるのは、同じくオカルト好きというファイルーズあいさんです。
15歳で小説の新人賞を取ったものの、その後なかなか作家として芽が出ずに書店で働いている菫子。誕生日に渡された”逆万引きの本”をきっかけに、次々と起こる不可思議な事件に巻き込まれていくことになります。菫子に寄り添ったことで、ファイルーズさん自身いろいろなことを感じたそうです。その想いをうかがいました。
この世界を面白くしてくれるもの
──オーディション時から、オカルト好きの菫子にシンパシーを覚えていたとのこと。月並みな質問とはなりますが、『怪異と乙女と神隠し』の作品の印象・魅力について、どのように感じられたかを教えて下さい。
ファイルーズあいさん(以下、ファイルーズ):オーディションの段階だと全ては分からない状態で。その当時の印象と、実際にアフレコがはじまって物語を菫子といっしょに体験していった今の印象とはまた違うものがあります。
実際に作品に触れてからの印象としては……オカルト好きのスレッドにずっと張り付いているくらい好きな人が描いているんじゃないかなってくらい、オカルト好きなんだと伝わってきました。あ、私もオカルトは好きですけど、私は違いますからね(笑)。
──ファイルーズさんはどのようなオカルトが好きなんですか?
ファイルーズ:オカルトというよりは、ホラー映画が好きなんです。ホラー映画の中にはオカルトや都市伝説が含まれているものもあるので、そのつながりと言いますか。どちらかというと映像作品が好きです。だから、パワースポットに行ったり、心霊現象を体験するようなこと自体が好きなわけではないんです。ただ、怖い話は大好きで! 都市伝説は本を買って読んでいました。それをストックして、学生時代は「私はいつでもそういうのを持ってるよ」って自慢していましたね(笑)。それでコックリさんをやったことも……。
──私もやりました……。
ファイルーズ:私が動かしていました(笑)。当時から役者に憧れていたこともあって「どうしよう、これ動いているんだけど!」って、迫真の演技を見せて(笑)。
──ファイルーズさんにもそのような時代が。
ファイルーズ:ありました。
──目に見えないモノ・世界ってなぜ惹かれるんでしょうね?
ファイルーズ:例えば、私たちっていつもスマホを持っているじゃないですか。もう当たり前になっていて。だから今、目の前に置かれている録音用のスマホを見ても新しい驚きもないし、恐れもない。だけど、戦国時代の人にスマホを見せたら「なんだこの光る板は!」「中で人間が動いている!」「面妖な!」と驚くと思うんですね。
私は日常にないものに新鮮な驚きを求めているし、あながち「嘘なんじゃないの?」とも言い切れないような偶然が重なると「もしかしたらあるかもしれない」という期待も滲ませてくれるじゃないですか。霊の仕業、妖怪の仕業と思いたい気持ちもある。その危うさに魅力がある気がします。それに、科学や言葉だけで説明できるものがすべてだったら、この世界はつまらないじゃないですか。
──本当にその通りですよね。ある意味、日常を少しエンターテインメントにしてくれるのかもしれません。
ファイルーズ:いまの時代、どんな事象も科学的に、論理的に証明できてしまうじゃないですか。確率、数字も。でも、それがなかった時代は、病が起きれば神のお怒りだと解釈したし、身体に不調を感じれば加持祈祷を捧げてもらっていたし。そういう昔の人の想いを感じて、それに想いを馳せるというのも、現代人には必要なんじゃないかなって思っています。あながちスピリチュアルって怖いものだけじゃないんだよと。
しかも菫子は小説家じゃないですか。日常に起きたことをただ書いても何も面白くないからこそ、第六感を信じて、日常生活に起きたことに可能性を見出し、それを物語にしていく。その世界を作っていくのが、菫子の仕事でもある。原作のぬじま先生自身も、菫子のようなところがあるのかもしれないなって思います。なんとなくですけども。
──ぬじま先生ともお話されたのでしょうか?
ファイルーズ:アフレコにいらっしゃることがあって、そこでオカルトの話を少しだけしました。その時に、オカルトが本当に大好きな方なんだなって思いました。作品に触れて改めて思ったのですが、古代から続く妖怪伝承と現代への結びつけ方が巧みだなって。