春アニメ『怪獣8号』福西勝也さん(日比野カフカ/怪獣8号役)×瀬戸麻沙美さん(亜白ミナ役)インタビュー 現場で起きた化学反応|「麻沙美さんのお芝居が本当に素晴らしくて、その後に続くカフカのセリフがなめらかに出てくるんです。一方的に影響を受けていました」
2024年4月13日(土)より放送開始となるアニメ『怪獣8号』。『少年ジャンプ』(集英社)にて連載中の松本直也氏による人気漫画を原作とする、この春注目の話題作だ。
舞台となるのは日常的に怪獣が人々を脅かす世界。怪獣専門清掃業で働くカフカが防衛隊を目指す後輩レノとの出会いをきっかけに、カフカの幼なじみである亜白ミナのいる防衛隊へ入隊する夢を再び追うことになる。アニメーション制作は、Production I.G が、そして怪獣デザイン&ワークスはスタジオカラーが担当。壮大なスケール感を持つアニメーションとなっている。
『怪獣8号』でメインキャラクターを演じる福西勝也さん(日比野カフカ/怪獣8号役)、瀬戸麻沙美さん(亜白ミナ役)に、作品に挑む想いや、アフレコ現場での裏話を教えてもらった。
キャラクターを射止めるまでの、それぞれの物語
――『怪獣8号』のメインキャストとして出演が決まったときのお気持ちを聞かせて下さい。福西さんはもともと作品のファンだったとのことで、昨年コメントを寄せられた際に「初めて読んだその時から、いつかお仕事で関わることをずっと夢見ていた『怪獣8号』……そんな作品の大大大好きな主人公・日比野カフカを演じられること、とても光栄に思います」と綴られていました。
福西勝也さん(日比野カフカ/怪獣8号役):本当にそのコメント通りで、この作品に関しては並々ならぬ想いがありました。オーディション期間中も心のどこかに怪獣8号が在る状態というか。最初にテープ(音声)を送って、その次にスタジオ(オーディション)に進んで、結果が出るまでの何ヶ月かの期間、「どうなったかなぁ、どうなったかなぁ」って……。
瀬戸麻沙美さん(亜白ミナ役):結構期間が長かったもんね。
福西:そうなんですよ。やはり長く感じましたか?
瀬戸:他の作品と比べてというよりかは、感覚的な問題というか。しばらく経ってからスタジオのお話をいただいたので、てっきり落ちてしまったのかなと思っていたんです。
福西:そうなんです! そんな感じでふわふわとしている状態で。以前、先輩から「ひとつのオーディションの合否に心をとらわれてしまうのは精神衛生的によくないよ」と聞いたことがあったので、ああ、先輩はこれのことを言ってたんだなぁと思って過ごしていました。そうした日々を経て結果的に日比野カフカ/怪獣8号役に決まって……ありがたいことに、「オーディションに受かりましたよ」と聞いたその日から今日に至るまでの約1年間、うれしい、楽しいという気持ちがプレッシャーを上回っていて、ありがたみを感じながら過ごしているという感じです。あの時のうれしいが、ずっと続いています。良い意味で同じテンションでいられています。
――オーディションの結果を受けたとき、どのような反応をされたのですか?
福西:「えっ、そんなことあります!? えっ、えっ?」って(笑)。そのあと、マネージャーと共に涙ぐみました。「これから頑張りましょうね」と。
――素敵なマネージャーさんですね。では瀬戸さんはいかがでしたか?
瀬戸:さきほどの話に挙がっていた通り、時系列的にテープを提出してから少し時間があって。気づかぬ間に落ちていることもあるので、一回自分で素材を作って送ったオーディションテープのことはあまり気にしないようにしているんです。でも、そんな中でスタジオオーディションに進めることができて「もしかしたらミナをできるチャンスがあるのかも!」と。
スタジオオーディションに到着すると、待合室で同じ役を受ける人たちがいて。現場によるんですけれども、(他の役者と)鉢合わせしないようにしているところもあれば、一同に勢揃いしていることもあって。はたまた、『怪獣8号』はありませんでしたが、掛け合いでオーディションをする場合は、自分が受ける役とは違う役を受ける役者さんが一緒にいることも。今回はミナ役を受けるであろう人たちがいて。
福西:そのパターンだったか(笑)。
瀬戸:事前に作品を読んでいる中で「どう演じようかな」と思うのと同時に「この役者さん合いそうだな」「こういう人が選ばれるのかな」と勝手に想像することがあるんです。だからそこで「おお……」とちょっと気圧されると言いますか。自分じゃなくても素敵な方が演じるんだろうな、と一歩引いてしまうような気持ちになりつつ、オーディションを迎えて。スタジオオーディションだと自分が演じたものに対して「こう変えてみて」と演出をいただけるんですね。
その時に自分が作っていった、クールで感情が見えないミナよりも、シーンによってニュアンスを変えて、隊長ではないミナが見えるお芝居を求められて。自分の中では、振れ幅が持たせられなかったかも、と思ったんです。それで「ああ、落ちたな」と思ってスタジオをあとにしたことを覚えています。
福西:へええ……!
瀬戸:言われたディレクションに対して、あまりうまく調整できなかったなと思って、とぼとぼ帰りましたね。
福西:役者って引きずって歩いちゃいますよね。分かります。
瀬戸:でも「決まりました」というお話を受けて「ええ〜!」って。作品に関われるうれしさが第一にありつつも、さきほどお話した通りスタジオオーディションで出しきれなかった部分があったので「どうやって演じていこうかな」と考えはじめていました。早速マンガが自由に読めなくなりました(笑)。ページをめくるごとに手が進まなくなるようになってしまって。
それと、原作の人気の高さはオーディションの段階から知っていましたので、マネージャーからの「受かって欲しい」という熱量を感じていて(笑)。一緒に頑張ってくれるマネージャーが喜んでくれて、それもうれしかったですね。
――その原作を最初に読んだときの印象はどのようなものでしたか?
福西:一言で言うと痺れました。今ティザーで公開されているものに、怪獣8号が「いちにのさん!」って叫ぶシーンがあるんですけれども、あんな感じで、頭の中に稲光が走る衝撃というか。「ああ、面白い! おもしろーい!」って。
アニメ『怪獣8号』メインPV第2弾
福西:連載当初から読んでいたのですが、ぐんぐんと引き込まれていきました。そこからは最新話が更新されるたびに「いいジャン!」(『 少年ジャンプ+』iOSアプリ版/Androidアプリ版にて、無料マンガの最終ページに表示されるボタン。ボタンをタップすることで作品を評価できる機能)を連打する日々が始まりました(笑)。でもそれと同時に「あちゃー、面白い原作に出会っちゃったな」という気持ちもありました。
「こんなに話題になっていて、これだけ面白いんだから、メディアミックス化も早いんだろうなぁ。関われなかったら悔しいだろうなぁ」という、いわゆる職業病的なソワソワや焦燥感も加速度的に上がっていきました。
でも連載がはじまった段階のこんな素晴らしい作品に出会うことができたんだから「この作品は追おう」と思って読み続けていました。言うなれば、大古参ぶれる訳ですし(笑)。
――少年漫画的な要素がありつつも、登場人物の年齢にもバラつきがあって、幅広い層が共感できるところもいいですよね。カフカの諦めない気持ちにもグッとくるものがあります。
福西:そうですね。そこにも惹かれました。
――瀬戸さんは原作を読まれたときはどのような印象が?
瀬戸:私は役を受けると分かった状態で原作を手に取っていたので、自然に楽しむような読み方とは少し違ったのですが……読み進めすぎてしまうと、オーディションで落ちた時に嫌だなぁという気持ちになるので(笑)。でも福西さんの場合は、図らずも出会ったわけだもんね。
福西:そうです(笑)。だから「あちゃー」って。
瀬戸:そのため、オーディションの範囲までに押さえて、そこまで先は読まずという状態だったんですけれども……。主人公のカフカが30代で、防衛隊を目指しているけれど叶わないかもしれないという、挫折した状態からのスタートはなかなか珍しい作品なのではないかなと思いました。いろいろな年代の、いろいろな経験をした人が共感できる物語になっているんだろうなって思いました。その中にギャグテイストも多くあって。
福西:そうですね(笑)。
瀬戸:「このまま防衛隊として着実に歩んでいくんだ」と思ったら、口の中に急に怪獣が(笑)。イラスト的にも衝撃的で「えっ、どうなっちゃうの!?」と思ったらあの姿に……ミナとようやく同じ場所に立ったところだったので、先行き不安になったことを覚えています。でもその不安を感じるというのは、良い読者というか(笑)。驚いて欲しいところで驚いて、不安になって欲しいところで不安になって「次が気になる!」という。
福西:……なんて模範的な読者なんだ!(笑)
瀬戸:本当に。マンガに限らず映画やアニメなどで、仕掛け人が「ここで引っかかって欲しい」と思うところで、ちゃんと引っかかるタイプなので(笑)。だから純粋に楽しめました。その中でいちばん感じたのは、キャラクターたちがみんな前向きなこと。悪いやつがいないという感覚がありました。学校や自分が目指している場所に行ったときって、ちょっとうがった考えかもしれませんけれども、蹴落とそうじゃないですけど……。
福西:うんうん。
瀬戸:そういうのがあるのかなって。そういうぶつかりあいも大事なのかなと思いつつ、彼らが目指しているのは「国を守る」だから、ちょっと大人だなって。ライバル視をしていても、「なら俺も頑張る」と。
福西:リスペクトのしあいがすごく綺麗ですよね。
瀬戸:すごいよね! みんな年齢も違うし、中には若いキャラクターもいるのにすごいなって。カフカは良い例で。キコルのことを「なんだこの生意気な小娘!」って思っていたけれど、すごいと認めてからはちゃんと相手のことを褒める。その認められる心、まっすぐさがすごいなと思います。