春アニメ『アストロノオト』インタビュー連載:高松信司(総監督)×春日森春木(監督)|スタッフ陣が考える時代が移り変わっても普遍的なものとは
ラブコメを描く際、ベースにあったのは窪之内英策氏のキャラクター原案
――先程少し話に出てきましたが、窪之内さんのキャラクター原案には、本来なかった設定がいろいろ足されているんですよね。
高松:その設定は、みんなの共通認識としてあります。元々の企画に対してキャラクター原案を書いてもらっているんですけど、新しくシナリオを起こす段階になると、それがバイブルになってくるんですよ。ここにこう書いてあるから、こういうキャラクターなんだとか。そういうことが起こるんです。
春日森:それをバイブルにしてはいるけど、最終的にはそことはまたちょっと違っていったりすることもあったんですけど。
高松:窪之内さんは、今でこそいろんなアニメのキャラクター原案やCMをやられていますけど、TVアニメで声をかけたのは、おそらくこの作品が初めてだったみたいなんです。デザインを引き受けていただく事が決まってから、その後、ものすごい勢いでデザインが上がってきました(笑)。発注したら1週間くらいで膨大な量のイラストが届いて、それにはコピックで色も付いていたんですね。だから色を決める時も、窪之内さんがイラストで描いていた色を参考にして決めているんです。それでアニメが、わりとポップな感じになっていったりして。
――だからこの色合いなんですね。ストーリーが変わって、変更したキャラクターはいるのですか?
高松:ミラと宮坂拓己(CV.斉藤壮馬)に関しては、ほぼそのままですね。アパートの住人が多少入れ替わったので、それは新しく描いています。で、シナリオを起こしたあとに、一度本を見てもらって、「キャラクターを修正しますか?」と聞いてみたら「いや、この方向で行きましょう!」って(笑)。
春日森:細かいところだと、地下アイドルのテルルン(CV.降幡 愛)のデザインは元からあったんですけど、普段の松原照子に関しては、キャラクターデザイン・総作画監督のあおきまほさんに、テルルンをベースに起こしてもらったんです。それを窪之内さんに確認していただくような感じでした。あと、蓮は母子家庭だったんですよね。
高松:それを無職の父親と子供という設定にしたというのはあります。だから、いろいろとディティールは変わりはしたんですけど、ベースにあったのは、窪之内さんのイラストなんです。
――オリジナル作品の第1話は、すごく難しいと思うのですが、いかがでしたか?
春日森:オリジナル作品なので、絵コンテを描いている段階では手探りなんです。原作があるわけでもなく、キャラクターも、こういうしゃべり方をするのかな?とか。拓己がこういう動き方して、見ている人が「気持ち悪い」ってならないかな?とか。
――第1話から、叫びまくっていましたしね(笑)。
春日森:そうなんです。だからギリギリを攻めていくというか。それこそ、あおきまほさんは『ツルモク独身寮』を読み込んで、ギャグ顔の表情集も作ってくださったので、それを使ったほうが面白いと思って、コンテを描いていましたし。
ただ、オフィシャルサイトのコメントでも書きましたけど、高松さんからは、『「ギャグ」ではなく「ラブコメ」である事を大切に』という言葉をいただいていたので、ちゃんとラブコメとして、ストーリーは大事に丁寧に描き、ギャグは、それを邪魔しないようにする作り方をしていました。ぶっ飛んだことをして繋ぐこともできたんですけど、それはあえてしませんでした。
――確かにギャグシーンも大爆笑というより、よくよく考えると、ナオスケ(CV.諏訪部順一)が、良い声過ぎて面白いとか、じわじわくる感じでした。
春日森:すごくダンディな声ですからね(笑)。
――高松さんは、1~2話でこだわったところというと?
高松:1~2話だとSFのところを私が担当しているんです。第1話のアバンのアクションシーンと、第2話だと、ミラが豪徳寺に宇宙船で降りてくるあたりですね。そこでは、ラブコメとSFがどのくらいの融合感なのかということを考えました。ガチでSFでやると、ラブコメとは相容れないところがあるので、ユルいSFというところを探り探りやっていた感じです。
――キャラクターの声もマッチしていたと思うのですが、作品の性質上、大家のミラが、絶対的に可愛くなければいけないと思いました。そこは、内田真礼さんが、説得力のあるお芝居をされていた印象があります。
高松:そこは圧倒的に可愛いんで大丈夫!って思いました(笑)。第1話で合わせてみて、どうなるかなと思ったのですが、思った通り、みんなハマっていたので良かったです。テルルンのキャラクターの方向性をどうしようかと思っていたけど、わりと降幡さんは、テルルンそのままだったから(笑)。
春日森:そうでしたね(笑)。ミラに関していうと、最初の考えでは、ちょっと天然系の雰囲気なのかな?と思っていたんです。でも内田さんが演じているのを聞くと、やっぱりミラはミボー星の次期王位継承者として、しっかりしたところがあって、あざとくないんですよね。あざとく見える時もありますけど(笑)。そこをちゃんと演技されていたんです。
高松:第1話の段階で、天然ボケかと思いきや、あれはカルチャーギャップに戸惑っているだけなので。視聴者の皆さんには天然ボケに見せなければいけないけど、第2話まで見ると、文明がはるかに発達したところから地球へ来ているので、わからないんだなってことになるんです。
――そのバランスが絶妙ですよね。これだったら、拓己が一発で惚れるのもわかるなという感じでしたし。あと髪のカールが印象的でした。
春日森:窪之内さんも、そこはこだわっていましたね。
高松:なかなか作画的には鬼門だったけど(笑)。難しいんですよ。
――では最後に、第3話以降で楽しみにしていてほしいところを教えてください。
春日森:第2話のラストでショーインが出てきたんですよね。彼はビジュアルもすごいんですけど、カッコいいだけではない、ちょっとおかしいところもたくさんあるので、拓己との恋の駆け引きというか、戦いを見ていただきたいです(笑)。
高松:ミラと拓己とショーインの三角関係も見どころなのですが、全部のキャラクターにお当番会回があって、ちゃんと掘り下げがあるので、そこも楽しみにしていてください。
[文・塚越淳一]
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