浅野いにお先生の大ファンだった入野自由さん「アニメ化びっくり!」ではなく「やらねばならん!」と奮い立たせられた! アニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』大葉圭太役:入野さんインタビュー
第66回小学館漫画賞、第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞など多数の受賞を果たした浅野いにお先生の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(以下、デデデデ)』がアニメ映画化!
主演に幾田りらさん、あのさんを起用し、脇を固める魅力的なキャラクターたちを入野自由さん、種﨑敦美さんなど豪華声優陣が演じる本作は、前章が大ヒット公開中、続く後章は5月24日(金)より公開となります。
ある日突然、侵略者が襲来した世界で、主人公の小山門出と中川凰蘭が友人たちと日常生活を送りながらも、徐々にサスペンス的な様相が見えてくる不思議かつ巧妙なストーリーと、浅野先生による独特な表現・セリフが特徴的な本作がどのように映像で表現されているのか、巷で話題を呼んでいます。
このたび、アニメイトタイムズでは本作の鍵を握るキャラクター・大葉圭太を演じる入野自由さんにインタビュー。
浅野先生のファンだと公言する入野さんに、作品・キャラクターの魅力、共演した幾田りらさんやあのさんのお芝居についてなどなど、さらに公開が楽しみになるお話を伺いました!
大好きな浅野いにお先生初のアニメ化作品、参加しないわけにはいかない!
ーーキャストコメントにて、「大好きな浅野いにお先生の初アニメ化作品!絶対参加したい!」と作品への愛を感じるコメントを残されていましたが、浅野いにお先生の作品にハマったきっかけはどういうものだったのでしょうか?
入野自由さん(以下、入野):きっかけはいくつかあって。よくヴィレッジヴァンガードに通っていたんですが、漫画コーナーには絶対浅野いにお先生の作品が置いてあったんです。そこで目について買ったのを覚えています。
ーー先生の作品は、いわゆるサブカルチャーのシンボル的存在ですよね。
入野:そうですね! あと、宮﨑あおいさんのファンだったので、『ソラニン』が実写映画化された際には映画館に行って、原作漫画も買いました。
主題歌だったASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」の譜面を買って練習したりも(笑)。個人的に1番好きな作品が『おやすみプンプン』です。衝撃を受けました。人生のいろんなタイミングで浅野先生の作品に刺激を受けています。
ーー『デデデデ』はお読みになられていましたか?
入野:最初の方は読んでいたんですけど、完結してから一気に読みたいと思ってずっと我慢して、温めていたんです。そしたら、アニメ化が先に発表されるという(笑)。焦って、全巻揃えて読破しました。
オーディションをやっているのかも分からなかったんですが、マネージャーにお願いして探してもらって、参加したという感じです。
ーー絵画のような独特のビジュアルが特徴的な作品なので、映像化に対する驚きもありましたか?
入野:もちろんびっくりもしましたが、「やりたい」が先でした。自分がこういう仕事をしているから「アニメ化するんだ!」じゃなくて、「参加したい!」(笑)。
それに、浅野先生の作品の初のアニメと聞いて、思い返してみれば「確かに!」と。これまでの作品もアニメーションになっていてもおかしくないので、この初アニメ化はファンとして絶対に作品に関わりたいと思いましたね。
しかも、この先にあるのかも分からない。このチャンスを逃したくないから、なりふり構わず、どうにかオーディションを探して欲しいとお願いしました。
ーーそこまでの熱意がある入野さんが参加したとなれば、原作ファンや、映画を楽しみにしている方もより期待が高まるかと思います。我慢して、一気読みした『デデデデ』はいかがでしたか。
入野:浅野いにおイズムが炸裂していました。緩い日常を描きながらも、痛くて、苦しくて、切ないところも包み隠さず正直に語る。綺麗な言葉だけじゃなくて、時には辛辣にまるっと語ることで、逆に優しさを感じたり温かい気持ちになるというか。
ーー浅野先生の作品は、生々しいリアルさが漂っていますよね。
入野:そういうところがグサッと刺さりますし、キャラクターもどんどん生き生きとしていきます。今作では、女の子たちが可愛くて、魅力的ですよね。
画力も素晴らしいですし、ストーリーが進む度、描き込みも増えていって。進化していくワクワク感もあって、見どころしかない作品です。
入野さんからみた「大葉圭太」というキャラクター
入野:ほんとにギリギリまで我慢していたので、どんなキャラクターが登場するのか全くわからなかったんです。「オーディション探して!」なんて言ったのに。
ーー(笑)。
入野:「とりあえず、参加できれば何役でもいいです」ってマネージャーに伝えてから、作品を読みました。
オーディションを受けたのは小比類巻(CV:内山昂輝)と大葉なんですけど、僕のキャリアの中で、大葉のような役を演じたこともありますし、小比類巻もあります。声優はどっちのタイプにも振ることもできる、それは僕だけじゃなくてみんな同じです。
自分が希望するキャラクターだけではなく、登場するどのキャラクターをも演じる可能性があるからこそ、演じていて楽しいですし、やりがいがあるんだと思います。
実際、オーディションの時は、個人的に小比類巻の方がしっくりきていたんですが、大葉になりました。それは、少し驚きでしたね。
ーーなるほど。では、入野さんの中で、大葉圭太はどのようなキャラクターですか?
入野:全てを繋ぐキャラクターですよね。未知のものと人間、凰蘭と門出もそうですし。後には世界にも関連してくる。登場的には、前章は少ないですし、原作でも多くはありませんが、物語の脊髄のようなキャラクターだと思っています。
ーー脊髄のような存在を声で表現するうえで、どんなところを意識されましたか?
入野:まずは、アイドルをやっていたこともあって、可愛らしい見た目や年齢感は意識していましたし、中身が宇宙からきた侵略者という変わったキャラなので、特に序盤は「言葉をうまく操れない」ことも大事にしました。
ーー浅野いにお先生のセリフ・世界観だからこそ、演技に工夫をすることもありましたか?
入野:確かに今言われるとあると思います。『デデデデ』だけではなくて、他の作品に登場した気持ちの良いセリフやノリみたいなものが僕の中にありますね。好きだからこそ、ファンだからこそ出てくる言葉のノリはあったと思います。
ーー言語化が難しいとは思いますが、そのノリとはどのようなものなんでしょう?
入野:淡々としている、ですかね。
ーー確かに、力を入れている感じはないですよね。
入野:そうですね、淡々としていているんですが、ニュアンスとして淡々としすぎるのも違う。痛いところも、優しいところもシンプルに口に出すというのが大事なんだと思います。
他のシーンで感情を強く出すキャラクター、例えば凰蘭とかありましたけど、そういうここぞというところのために、ほかを淡々として抑揚を付ける、みたいな表現はいらないんじゃないかなと。
キャラクターの顔なんかも、目が死んでいたりとか、無表情だったりするじゃないですか。そういうものじゃなくて、言葉自体に意味や、読者が感じるものが流れている気がするので、説明しようとしないという意識が強かったと思います。
ーーでは、マイクの前では力みのない状態で?
入野:大葉くんは特に、ゆるっとした雰囲気が大事だと思ったので、力抜けた感じですね。
ーー大葉は劇中でどんどん変化していく特殊なキャラです。共感できる部分やご自身に似ているなと思う点はありますか?
入野:似ているとは思ったことがないのですが、共感できる部分でいうと大葉の「自分にしかできないのなら、やるしかない」という使命感は理解できます。誰しも、追い詰められた瞬間にはそういう感情になるのではないかなと。難しいことですが……。
ーー大葉は、そのような使命を持って中盤から活躍しますよね。物語の途中から参加するキャラクターを演じる際に、意識することや難しいことはあるのでしょうか?
入野:舞台だと気にすることはありますね。この間、2幕目から登場する人物を演じたんです。初めの頃は、1幕目をやっている間の過ごし方がわからずに、凄く緊張してました。
ーー入野さんでも緊張されることがあるんですね。空気感が違うのですか?
入野:そうですね、特に空気をガラッと変えないといけない役だったりするとまた難しいです。アニメーションだとまた違いますが。収録の形態が、1シーンごとに抜いて取っていくので、そんなに意識することはないかと思います。
ーーありがとうございます。では、大葉以外で注目しているキャラクターや、好きなキャラクターはいますか?
入野:どのキャラクターも好きなんですが、中川ひろしは気になるキャラクターです。設定もそうですが、彼を使った演出もアイディアに溢れていて好きです。
ーーひろしは人気のあるキャラクターですよね。ひろしにも浅野いにお先生イズムを感じます。
入野:そうですね。全キャラクターに滲んでいると思います。