浅野いにお先生の大ファンだった入野自由さん「アニメ化びっくり!」ではなく「やらねばならん!」と奮い立たせられた! アニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』大葉圭太役:入野さんインタビュー
入野さんがアニメ『デデデデ』で受け取ったもの
ーー本作は、見る人によって受け取り方も楽しみ方も違ったものになると思うのですが、入野さんにとってアニメ『デデデデ』はどのような作品ですか?
入野:いろんな要素が盛り込まれている作品ですよね。原作で言うと、恋とか学生時代の思い出、災害・天災・社会的な問題、人間のコミュニケーションの問題とか全部が入っている。
浅野いにおという人物が、細胞分裂していった結果、登場するキャラクターたちになっていっているんじゃないかな?と思うんです。浅野いにお先生の今を感じられる作品といいますか、昔の作品から色々見てきて、今の浅野いにおがそこにある。それが、社会や読者である僕たちにも繋がっていく。
ただ、アニメには全要素を入れるとカオスになってしまうので、脚本の吉田玲子さん含めスタッフの方々が精査して、このアニメでは何を見せたいのかが考えられていますよね。
ファンとしては、全部やって欲しいという気持ちはもちろんありますが、しっかり大事な要素が詰まっている。アニメで表現したいものは何なのか、とかそういうところに焦点を当ててみると、また新鮮ですし見やすいと思います。
ーー入野さんご自身は、アニメーションだからこそ、深い理解に繋がった部分や、作品の解像度が上がった感覚はありますか?
入野:ピンポイントでどこかあげるのは難しいんですけど、自分で声を出してみる・人の声で聴くという部分で解像度が上がる感じはしますね。演じる人の解釈も含まれているとは思いますが、自分の中だけで聞こえていたセリフが、実際に他者の声やディレクションによって変化していく。
アニメならではですよね。浅野先生の作品はいろんな見方ができる作品で、考察なんかも盛り上がるじゃないですか。このアニメが、作品解釈のひとつの答えにもなっているんじゃないかなと思います。
ーーでは、アニメーションの『デデデデ』が伝えたいもの、見せたいものはどのようなものだと考えますか?
入野:フォーカスされているのは門出と凰蘭の関係性です。僕の解釈ですけど、地球の人たちが未知のものに恐怖を覚えて敵対してしまう、伝えたいのに伝わらないというもどかしさがあるじゃないですか。でも、実は言葉が通じる関係でも同じようなもどかしさがあるんですよね。いろんなすれ違いだったり、こんなにも思っているのに届いてないんだな、ということだったり、そういう部分が大きなテーマになっていると思います。
お互いがお互いのことを凄く考えているのに、なぜだかうまくいかないことっていうのは、僕たちの日常の中でも普通にあることです。だからこそ、作品を見終わった時に、人に優しくなろうって思えたり。
昨日、未完成ではありますが、改めて映像を見て、いろんな感情が自分の中に生まれた後で「思いやりを持って人に接しよう」とかシンプルなところに戻ってくる感覚がありました。
幾田さん、あのさんにしか演じることができない門出と凰蘭
ーーフォーカスされたふたりを演じた幾田りらさん、あのさんとご一緒にアフレコされたんですか?
入野:幾田さんとはお会いできていませんが、あのさんはほとんど一緒でした。大葉と凰蘭は一緒のシーンが多かったので。
ーーあのさんの演技はいかがでしたか?
入野:オーディションの段階で、誰の声か明かされていなかったんですが、「こういうキャラクターと話します」と、資料として音源を渡されていました。
聞いた瞬間に「あのさんじゃん!」とはなりましたけど(笑)。
ーー(笑)。特徴的なお声ですよね。
入野:そうですね、声を聞いた後は漫画を読んでも、あのさんの声で聞こえてきますし、個性が爆発しているキャラクターに対して、同じくらいの個性を持つ人があてなければいけないので、あのさん以外考えられないですよね。
ーー確かに。
入野:声の演技の仕事は初めてだったと思うので、なかなか大変なこともあったと思いますが、でも、あのさんの個性が1番の武器なので思いっきりやるだけで良い。「もっとやっちゃえ!やっちゃえ!」とあのさんにも言いました。
迷いながら演じている姿や、迷った挙げ句わからなくなって、とりあえずぶつかってみるみたいなシーンも見ることができて凄く素敵でした。その瞬間が1番大事で、理解して何かをやるよりも「知るか!ボケ!」っていうのがおんたん(凰蘭)なので、あのさんがそうなる瞬間は、目を見張るものがありました。みなさん驚かれていたと思います。
ーー門出を演じる幾田さんはどうでしたか?
入野:アフレコは別だったので、映像を見ただけなんですけど、彼女も鈴のような綺麗な声ですし、歌は存在感があるのに、本作では凄く自然な門出になっていると思います。
普通の女子高生の声にベストマッチしていて、幾田さんは声のお仕事もやられていますけど、声優とはまた違う声の演技や表現があって、その違和感みたいなものが逆に心地良いです。幾田さんとあのさん、ふたりとも魅力があるのでベストなペアだと思いますね。
チーム全員の個性が爆発した『デデデデ』をぜひ劇場で!
ーーふたりが演じた門出と凰蘭の関係性も見どころですが、大葉と凰蘭の関係性も素敵ですよね。
入野:そうですね。最終的なところで言うと、ふたりは大きな愛で繋がっているんだと。恋愛ではないもう少し、深いところで繋がっているような。お互いはそういう深みに気付いていないのかなとも思いますし。
キャラクター同士がディスコミュニケーションに悩んだり、人同士が理解し合えないというテーマに、このふたりの関係性を通して答えを出しているというか。このふたりなら超えていけるかもしれないし、ふたりのような関係を他の人たちが築いていければ、誰もが理解し合えるかもしれないと伝えているのかなとも思います。
ーー門出と凰蘭の関係と、凰蘭と大葉の関係、どちらにも注目です。作品に関連して、入野さんが門出たちのような「非日常的な危機」に面した際、どのような行動を起こすと思いますか?
入野:できることなら、門出たちのように日常をずっと続けていきたいですね。仕事に関して言うと、それこそ2020年に仕事ができない状況になったことがありました。やりたくても続けられない状況になったし、不要不急なものだと線引きされてしまいました。
続けられるなら、自己満足のためではなく、生きていくうえで必要な、人間の栄養になるような表現のお仕事をしていきたいなと思います。実際に、経験してみてそう思いました。
ーーありがとうございます。最後に、公開を楽しみにしている方にメッセージをお願い致します。
入野:『デデデデ』という作品は劇場で見るべき作品だと思っています。ストーリーも音楽も画も、スケールが大きいので劇場で体験していただきたい。昨今、配信であったりとか自分のスマホやPCで見ることも増えてきましたけど、ぜひ、劇場に足を運んで浅野いにおの世界観に浸るということをしていただければ、没入して楽しめると思います。先生、幾田りらさん、あのさんなどなどみんなの個性が爆発していますし、制作チームのみなさんも「いろんなことをやってやろう!」と挑戦的に作っています。作品を色んな人に届けたいと、全員が強く思っているチームです。
みなさんが劇場に足を運ぶことで、僕達の願いも叶いますので、前章・後章、そしてその先でも作品の全部を愛していただければ嬉しいです。
[インタビュー/タイラ 写真/MoA]
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』作品概要
あらすじ
その後、絶望は日常に溶け込み、大きな円盤が空に浮かぶ世界は今日も変わらず廻り続ける。
友情と初恋と終末と・・・ 2人の少女のディストピア青春日常譚!!
キャスト
(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee