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春アニメ『アストロノオト』6話放送後:窪之内英策(キャラクター原案)インタビュー【連載06】

春アニメ『アストロノオト』インタビュー連載:窪之内英策(キャラクター原案)|キャラクターの内面からデザインを考えていくスタイル

80年代を彷彿させる懐かしさ、ラブコメ、SF、コメディ……全部が詰まったオリジナルアニメ『アストロノオト』。木造アパート"あすトろ荘"には、宇宙人の豪徳寺ミラ(CV.内田真礼)と住み込み料理人の宮坂拓己(CV.斉藤壮馬)、さらには筋金入りの無職や地下アイドルなどなど、個性豊かな住人たちが暮らしている。

第6話は、拓己がミラが宇宙人であることを知る重大局面。だが、いつものようにあすトろ荘は賑やかで……。

連載第6回は、キャラクター原案を務めた窪之内英策さんへの超ロングインタビューです。

 

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料理人・宮坂拓己が新たな就職先として面接に訪れた、木造アパート"あすトろ荘"。そこは"朝食付き"が売りなのだが、可憐な大家・豪徳寺ミラの料理に耐えきれなくなった住人の要望もあり料理人を募集していたのだ。ミラと出会った拓己はその場で一目惚れ。急遽作ったアジフライは大評判。拓己の住み込み料理人としての生活がスタートする。しかし、それは穏やかな日々とはいかなかった。癖のある住人たちとの、ご近所より近く、家族より遠い距離感の中、次々と巻き起こる不可思議な現象。ふとしたことで知った、ミラが宇宙人だったという秘密。拓己が抱くミラへの恋心はどうなってしまうのか。また、不可思議な現象の謎は解明されるのか?食卓から宇宙にまで広がる、新感覚SFアパートラブコメディ!作品名アストロノオト放送形態TVアニメスケジュール2024年4月5日(金)~2024年6月21日(金)TOKYOMX・BS朝日ほか話数全12話キャスト豪徳寺ミラ:内田真礼宮坂拓己:斉藤壮馬若林蓮:釘宮理恵若林富裕:杉田智和山下正吉:三木眞一郎松原照子:降幡愛上町葵:小倉唯ナオスケ:諏訪部順一ショーイン・ジンジャー:福山潤おばちゃん:くじらスタッフ総監督:高松信司監督:春日森春...

 

前回のインタビューはこちら

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80年代を彷彿させる懐かしさ、ラブコメ、SF、コメディ……全部が詰まったオリジナルアニメ『アストロノオト』。木造アパート"あすトろ荘"には、宇宙人の豪徳寺ミラ(CV.内田真礼)と住み込み料理人の宮坂拓己(CV.斉藤壮馬)、さらには筋金入りの無職や地下アイドルなどなど、個性豊かな住人たちが暮らしている。第5話では「スカートを履いてみたい」という小学生・若林蓮と、その父親・若林富裕(CV.杉田智和)とのやり取りが印象的でした。連載第5回は、若林蓮の声を担当する釘宮理恵さんに、『アストロノオト』について語ってもらいました。  前回のインタビューはこちら 若林富裕と蓮親子の関係性、掛け合いも注目――今回はオリジナルアニメとなります。台本やキャラクター設定を見たときの、率直な感想を教えてください。若林蓮役釘宮理恵さん(以下、釘宮):オリジナル作品ということで、何がどうなっていくのかわからないところからのスタートでしたが、とにかくわくわくしていました! ご飯のシーンを大事にしている雰囲気を感じたからかもしれません。  ――物語の舞台設定などはどう思いましたか?釘宮:ありそうでなかったような、懐かしい雰囲気のアパートモノで、それぞれ...

 

キャラクターの内面からデザインを考えていくスタイル

――マンガ家として『ツルモク独身寮』でデビューをした窪之内英策さんですが、その後もSNSでイラストを描き続けていて、それを拝見していました。1枚の絵から背景を想像させる素晴らしさがあって、思わず見入ってしまうんです。

窪之内英策さん(以下、窪之内):一応20年以上やってきているので、単純に見た目だけの何かを作るというよりかは、内面から掘り下げていく感じで絵を描いているんです。だから、今回のようなキャラクターをデザインする依頼が来ると、だいたい暴走をしながら描くんですよ。

――暴走というのは、オーダーにないイラストも描いているという意味ですか?

窪之内:そうです。使う使わないかは監督さんにお任せして、勝手に内面の設定を決めて、その絵を描いちゃうんです(笑)。もちろん、いただいたプロットはある程度押さえていますけど、いろいろ暴走して描く。じゃないと僕の場合、外側が作れないです。

――オファーがあったのは、7~8年前だったそうですね。

窪之内:完成した作品の前段階の企画書で、プロットもちょっと変わっているのですが、基本的な部分はだいたい一緒で、もうちょっとSFのテイストが強かったです。でもそういう、少しバカバカしいノリのラブコメと80年代くらいのテイストが作品に盛り込まれていると思ったし、僕自身そういう作品が好きなので、ノリノリで描いていた気がします。

 

 

――7~8年前に、すでにキャラクターは描き終わっていたのですか?

窪之内:だいたい描き終えていました。そのあと一度なくなったような感じだったのかな。僕はアニメ業界のことをまったく知らなかったんですけど、心のどこかで「もう流れたんだな~」って、完全に諦めていたんですね。そしたら話が戻ってきて「まだやるんだ!」と思ってびっくりしたのを覚えています(笑)。

――水面下で、何とか実現させようと動いていたんでしょうね。

窪之内:僕の知らないところでやってくれていたんでしょうね。これだけの時間とスケールで1個の作品を考えていくのはすごいと思いました。漫画の世界はもっと早いので、感心しました。

――アニメ映画を1本作るのにも、2~3年はかかりますから。

窪之内:漫画だったら1〜2か月前に「連載をして」みたいな感じできますからね。でもアニメはたくさんの方が関わっているだろうし、予算とかも大変なんでしょう。

――キャラクターを描いたときは、高松信司総監督とお話をして進めていったのですか?

窪之内:そうです。プロットをいただいて、そこに、だいたいのキャラクターの説明が書いてあって、それを読みながら描いていく感じでした。

 

 

――そこから監督の返しがあって、という。

窪之内:いや、提出してから長い休眠時間があった感じなんです。だから再始動したときに、修正が加わったキャラクターに関しては少し変えて描いたりはしましたけど、ベースのキャラは、大体そのままでしたね。

――ということは、7~8年前に描いたキャラクターが、やっと動いた感じだったのですね。

窪之内:そうなります。だからいろんな意味で感無量でした。やっと動いた!って感じ。

個性的な住人たち、キャラクターの誕生秘話

――時間の許す範囲でキャラクターの原案についてお伺いしたいのですが、まずは豪徳寺ミラからお願いします。

窪之内:毎回インタビューで言うんですけど、主人公って、正直そんなにやれることがないんです。美しさの黄金比は決まっているので、美男美女となると基本配置もシルエットもそんなにいじれない。そこから外してしまうと脇役の形になってしまうから。

黄金比が決まってる以上、そんなに遊べないので、いじれるのは服か髪型で、あとはちょっと目尻を上げるか下げるか程度なんです。それがミラ場合は髪型で、最初のプロットではそんなに強調していないんですけど、それ以降に描いているものは毛先が渦になっています。そこのシルエットで、ミラだということを認識できるように工夫しました。

 

 

――この髪型も、少し懐かしいですね。

窪之内:オーソドックスなヘアスタイルなんだけど、今でも通用するし、でもよく見るとちょっと懐かしい感じもあるんです。

――このエプロンは指定だったのでしょうか?

窪之内:いや、特に指定はなくて、僕が勝手に「エプロン」「可愛い」で検索して出てきただけです(笑)。

――続いて宮坂拓己です。

窪之内:この子も同じですね。黄金比が決まっているので、髪型で少しシルエットをひし形にして特徴付けている感じになります。割と今風な髪型にしつつ、そこまで嫌味じゃない感じにしています。あまりデザインパーマ的な作りすぎたものにすると、そういうヘルメット被ってるキャラクターみたいになっちゃうので、できるだけ自然さがあるようにしています。

――今作の主人公とヒロインは「王道」ということなのでしょうか?

窪之内:意図的に「王道」は踏まえました。王道って良いものがあるから王道なので、そこを無視しちゃうと、ただ単に奇をてらったものになってしまうんです。だから、そこでいかに自分のオリジナリティを入れていくかが重要だと思います。

 

 

――若林富裕は、窪之内さんらしいキャラクターでした。

窪之内:意味不明・正体不明な感じはありつつ、ビジュアル的には、ちゃんと自分のテイストを入れようと思って描いたキャラクターです。まぁ確かに大好物ですね。

(ここで、若林の原案を見せてもらう)

――窪之内さんの原案は、メモ書きが多いというのは聞いていたのですが、本当に多いですね!

窪之内:いただいたプロットってここまで書いてないんですよ。これは完全に暴走して僕が書いているだけなので。先ほどお話ししたように、最終的に使える使えないのジャッジはお任せする形でやっています。

――カラオケではこういうのを歌うというのまで書いてあります。

窪之内:自分の中でひとつひとつの仕草や表情や動きや癖に、整合性のある理由がないと描けないんです。ビジュアルだけを作ってくれと言われてもピンとこないというか……。そこで自分なりの物語を紡いでいきながら描いていくと、キャラクターもイキイキしてくるんです。

――なぜ窪之内さんのキャラクターに物語性を感じるのかがわかりました。でもここに書いてあるメモは、公式設定ではないんですね。

窪之内:そうですね。だからこの原案も見せたいですけど、実際のアニメとは違うんで、あまり発表できないのかもしれない(笑)。

 

 

――ここまで細かく決めているのに、実際にそうならなくても構わないのですね。

窪之内:全然構わないです。それは僕の原作ではなく人様の作品だから。あくまでもキャラクター原案という役割のひとつでしかないので、そこを一生懸命全うして、あとはもう自由に使ってくださいという感じです。

このメモはあくまで僕のわがままで、こうしないと描けないというだけなので、あとは自由に料理してくださいという感じでした。だから、キャラクターの配置とかも変えちゃっていいし、別のキャラにしてもいい。そこは全然自由です。

スタッフ:実際、窪之内さんのメモから設定に取り入れたりしていますので、そういう意味では、監督方との共作でキャラクターが出来上がっていると思います。

窪之内:そういうきっかけになってくれるのがすごく嬉しいんです。キャラ原案で、人物の視覚的なものだけでなく、内面も含めて、脚本や演出に影響が出るようなものが作れたら、この仕事のやる意味があるんじゃないかなと思います。

――若林 蓮ですが、こういうメガネで小さい少年というのは、窪之内さんのイラストのイメージにありました。

窪之内:この子の場合は見た目は幼いんだけど、内側はちょっと大人びたものがあるような感じをイメージして描いているんです。だから原案で描いた仕草が大人っぽいんです。ただ当初は母子の物語だったんですよね。だから母親の前では子供っぽくなるのかなというイメージもして、母親との絵も描いたんですけど、実際は父親との物語になっていました。

 

 

――(原案を見せていただきながら)確かに、母親との背中合わせのイラストがありますね。

窪之内:別にこの絵がほしいという指定があったわけではないので、僕が勝手に描いただけなんですけど、こんな背中合わせのシーンがあったらなぁと。互いが別々の方向を向いてるけど本音で話し合っているとか、そういう物語がなんとなく僕の頭には浮かんできたんです。

――子供を描くのも お好きですよね?

窪之内:すごく好きですね。おじいちゃん、おばあちゃん、おじさんおばさん、子供も含めて、同じ人間なので、僕の中ではひと続きなんです。当たり前だけど、僕たちは子供だったし、これから老人になっていくでしょう。それを全部ひと続きでイメージして描いているから、何の苦もないんです。

――おばあちゃん・おじいちゃんになってくると、等身が変わっていくのがいいですよね。山下正吉がまさにそうでしたが。

窪之内:まあ実際、現実世界でも、ちょっと小さくなりますからね。うちの母親も小さくなっていました(笑)。

 

 

――松原照子は、住人でありつつ地下アイドルもやっている。今っぽい設定かなと思いました。

窪之内:これを描いているときよりロリータファッションも進化しちゃってるから、もう古いなとは思ってるんですけどね(笑)。アイドルで可愛くしてはいるんだけど、微妙に小生意気な感じにしています。猫みたいな口角の上がり方とか。ちょっとあざとい感じは意図的に入れています。

――普段とだいぶ印象が変わりますね。

窪之内:この子に限らず、どのキャラクターでもギャップを考えるのが好きなんです。そのほうが人間味が出るので。たとえば、喧嘩が強い奴でも注射が超怖くてビビってるとか。そこが人間臭いんですよね。松原の場合は、ビジュアル的なギャップですけど、内面的なギャップも含めて考えちゃいます。

これは漫画をやっていたからかもしれないですけど、そのほうが読者が共感しやすいんです。強いキャラクターがひたすら強いって面白くないでしょ。どこかで不意に弱くなったりする瞬間に「この人好き!」ってなっちゃうんですよ。

 

 

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