最近のバーキンのコラボってなんかすごくない？ 株式会社ビーケージャパンホールディングス 野村一裕 社長が語る「バーガーキング×WIND BREAKER」コラボの真実！

Google Mapに仕込まれた遊び心

――コラボ前日の4月18日に渋谷センター街店が落書きされていると話題になり、媒体からの問い合わせに対して「4月19日の追加情報とキャンペーンをお楽しみいただけますと幸いです」と発表。そして4月19日に『WIND BREAKER』コラボとメニューが発表される流れも面白かったです。

※編集部注：バーガーキングPR事務局の発表全文は「こちらはプロモーションの一環で、4月19日からスタートするキャンペーンのティザー告知として実施しております。4月19日のバーガーキングからの追加情報、キャンペーンをお楽しみいただけますと幸いです」

野村：昔、ハロウィンのタイミングで「渋谷が荒れているからその日は臨時休業します」と告知して、その次の夜にゾンビの家にしたことがあったんです。

当時のニュース記事（PR TIMESより）

その反響が結構あったのですが、今回もそれとやり方は似ていますね。でも、それをPRとして出すか出さないかというのは、結構タイミングや細かい調整をしています。

落書きを見て「何これ？」と言う人は絶対にいると思ったし、もちろん「ダサい」と言われることも覚悟の上でした。ただ、コラボ体験の全体ストーリーを考えた時に『WIND BREAKER』やバーガーキングのファンが「こだわってる！」と思ってくれる方が大事だと思っています。

だから、アニメイトタイムズさんが取材に来てくれたことで、もう僕は認められたと思っているんです。このコラボ体験のストーリーを理解して感動してくださる人たちに、最後にどう思われるかが大事ですから。

……そういえばGoogle Mapは見ました？

――すみません、確認していません……！

野村：Google Mapで「バーガーキング　渋谷センター街店」と検索してください。

――あっ！ 店舗名が「バーガーキング 東風商店街店」に変わっています。これは簡単に変えられるものなんですか？

※編集部注：「バーガーキング 渋谷センター街店」と検索すると、渋谷センター街店の位置を示しつつ「バーガーキング 東風商店街店」と表示される（2024年5月1日時点）

　
野村：簡単に変えられますが、簡単にGoogleさんに見つけられて戻されるんです。今回はまだ戻されていないですね。

――ちなみに株式会社ビーケージャパンホールディングスは日本国内のバーガーキングを管轄する会社ですが、こういったコラボをやる時には本国にも報告はするのでしょうか？

野村：報告をするしないで言うとしますが、本国から止められることはほとんど無いんです。

――4月19日からコラボが始まりましたが、ファンの方々からはどういった反応がきていますか？

※編集部注：取材は4月下旬に実施

野村：原作者の にいさとる先生がX（旧Twitter）で呟いてくださって、それで僕は本当に上手くいったなと思いました。

バーガーキングとのコラボとても素敵なコンセプトだ
空間と時間を使ったストーリー表現、なんとおしゃれ…！！ https://t.co/XpEzhEUdNe

— にいさとる「WIND BREAKER 」連載中 (@nii_satoru) April 19, 2024

　
あとは、コラボをするということは「こんな感じじゃない」と言われるリスクをはらんでいますが、今回は『ウィンブレ』を好きな人たちから「バーガーキングありがとう」と言われることが多かったので嬉しかったですね。僕自身が作品のファンですから、心が通じ合った感じがしました。

今明かされる「バーガーキング® バーリント店」に仕掛けられていた施策とは？

――先ほど『SPY×FAMILY』の話も少し出ましたので、過去のコラボについてもお伺いさせてください。あくまで個人の印象ですが、一般的な外食チェーンは毎月のようにコラボをするイメージがありますが、バーガーキングのコラボはタイミングが読めないのも特徴かなと思っています。

野村：『ディアブロ』シリーズに関しては、グローバルでコラボ展開をしております。バーガーキングチャイナやバーガーキングタイワン、バーガーキングコリアなど、世界の他の地域でも『ディアブロ』コラボはやっています。ただし、コラボの中身は地域ごとに任せられていたので、どこまで何をやって良いかだけ教えてもらえれば日本でもやりますよという感じで進めました。

それ以外のコラボ作品は、全て僕から話を切り出しているんです。これだという作品が出てきた瞬間に社内に伝えて、ブッキングしてスタートみたいな感じなので、コラボをやるタイミングは読めないはずです。

もっと言うとお金がないのもあります。お金がないので、そんなに「今月は『星のカービィ』コラボ」「来月は『ドラえもん』コラボ」みたいな展開はできないんです。

――それを伺うと、作品選定やタイミングと話題作りなど、ヒット率の高さはすごいですね。

野村：それはやはりこだわるからです。こだわってこだわることで、僕たちの持っている「作品愛」が届けば良いなと思っています。

『SPY×FAMILY』コラボ時のティザー広告を見たことありますか？ アーニャに向けた「お手紙」が、アーニャの背の高さに貼り出され、大人は屈むと読めるようになっているんですよ。要するにお店の前に貼られたお手紙がアーニャの目線の高さなんです。

アーニャさま、渋谷にもいませんでした・・・。
どこだろう？ pic.twitter.com/Dqq5P9ANIY

— バーガーキング・ジャパン (@BURGERKINGJAPAN) October 18, 2022

　
すごくないですか？ クリエイティブディレクターが考えてきたんですが、あれは僕も驚きました。そういう作品に愛とこだわりを持ったチームでやっていますね。

――以前には「ブッチャー・ダブルミートBBQチーズバーガー」や「ピーナッツバターロワイヤル」といった面白いコラボバーガーもありましたが、こういった過去のコラボ時のファンからの反応で印象的だったものはありますか？

野村：『ディアブロ』コラボに関しては、さすが海外の人気ゲームということで商品はすごく売れましたが、反響がどうだったかと言うとそこまで一緒に盛り上げてくださる人が少なかったというのが正直なところです。

『SPY×FAMILY』コラボに関しては、あの「ピーナッツバターロワイヤル」ですね。女性ファンはもちろん、小さい子供も来ると思ったので、小さい子供が来るのに辛い物を出しては駄目だと考えて、本当にピーナッツにこだわって美味しいものを提供しようとしてできあがったんです。

――やはり『SPY×FAMILY』コラボ時は、子供や子供連れの方の来店が多くなりましたか？

野村：かなり多くなりました。実はそこも僕たちの課題なんです。みなさん子供を連れている時は、広くて綺麗で待たされないマクドナルドさんを選ばれます。でも、少し狭くて待たされる上に、あまり食べたこともないバーガーキングに来てもらうためには、ちゃんとテーマを持ったコラボでプレゼンテーションすれば良いのではないかという思惑が当たったのだと思います。

――『SPY×FAMILY』コラボだと、劇中のバーリントの世界観を表現した「バーガーキング® バーリント店」のインパクトもすごかったです。

当時のニュース記事（PR TIMESより）

野村：実はあの「バーガーキング バーリント店」には気付かれなかった仕掛けがあって、店内に展示しているイラストが入った額縁の一つにエアタグを仕込んでおいたんです。

もしエアタグに反応があったら、Xに「返してください」とポストして追跡したりして、これがリアル『SPY×FAMILY』という感じでバズらせようという施策だったんですけど、誰も盗まなかったですね（笑）。

※編集部注：上記写真内の額縁の一つが、実は外れるようになっていたとのこと

　
――店内の装飾品を盗もうとする人なんて、そうそういないですよ（笑）。この記事でその仕掛けを知ったという人が大半だと思います。

野村：ここはファンのみなさんの作品愛とか真剣度を改めて感じました。

この間、AnimeJapan 2024に行って、その前は家族とジャンプフェスタ2024にも行ってきましたが、会場にいるファンのみなさんの真剣度は半端ないですよね。真剣だし、楽しんでいるし、心の癒しもあってエキサイトメントもあるし、ここまで高いテンションをずっと持っていられるコンテンツは他ではあまりないと思います。

そういったコンテンツビジネスに、僕らはちゃんと勉強した上で参入して、人を傷つけないことはもちろん、コラボで味わえる高揚感を出すために何をすべきかを日々考えています。

これからも様々な作品を一緒に盛り上げていけたらと思いますので、バーガーキングの動向を楽しみにしていてください。

　
企画・取材：岩崎航太、編集：石橋悠、写真：二城利月