主人公の強烈な個性に観客が騒然!? 映画『トラペジウム』がなぜ話題になっているのかを調査|これを読めば世の中のトレンドに追いつける!?【めざせ! トレンドマスター!】
日夜多くのコンテンツが生み出されていく昨今。異なる界隈で同時多発的に様々なコンテンツ、ミームがバズり、トレンドは常に変わり続けています。
「そんな世の中で、今流行っているモノに敏感でありたい」——
本企画は、現在インターネット等を中心にブームになっている、アニメ・漫画・ゲームなどのワード、コンテンツを調査し、理解することによってみんなで流行に乗っかっちゃおうという試みです!
今回取り扱うコンテンツは、先日公開されたばかりのアニメ映画『トラペジウム』です。
乃木坂46の元メンバーである高山一実さんの小説を原作に制作された本作品は、アイドルを目指す女子高生・東ゆうが、自らメンバーをスカウトし、4人のアイドルグループを結成。トップアイドルになるため、4人の女子高生が奮闘する物語。
一見、爽やかな青春アイドルアニメに思えますが、公開初日には「主人公がやばい!」という内容の感想が多くSNSに投稿されていました。公開から数日経過すると、主人公の東ゆうに対する意見や物語全体を通してのレビューなど、様々な感想がどんどん投稿されていき、Xのトレンドに連日挙がるほど話題になり続けています。
筆者も実際にアイドルとして活躍していた高山さんが描くアイドルの姿や、多くのアニメファンの興味を惹いた東ゆうの言動を味わうためにすぐさま映画館へ。見終わってみると「ゆうの言動わかるわ〜……」と共感してしまいました。
映画『トラペジウム』は、思春期特有の焦燥感や不安から、突っ走ってしまった少女の青くて、痛い「黒歴史」を描いた作品!? 本稿では、主人公ゆうが本当にやばかったのかレビューさせていただきます!
※本稿には物語のネタバレが含まれます。
『トラペジウム』あらすじ・概要
あらすじ
1)SNSはやらない
2)彼氏は作らない
3)学校では目立たない
4)東西南北の美少女を仲間にする
半島地域「城州」の東に位置する城州東高校に通うゆうは、他の3つの方角の高校へと足を運び、かわいい女の子と友達になる計画を進める。その裏には、「東西南北の美少女を集めてアイドルグループを結成する」という野望があった。
西テクノ工業高等専門学校2年生で、高専ロボコン優勝を目指す“西の星”大河くるみ。
聖南テネリタス女学院2年生で、お蝶夫人に憧れる“南の星“華鳥蘭子。
城州北高校1年生で、ボランティア活動に勤しむ“北の星”亀井美嘉。
ゆうの計画を知り協力する男子高校生・工藤真司のサポートもあり、ゆうは3人の美少女と友達になる。
ロボコン大会や文化祭といった青春のイベントをこなしながら、ゆうは着々と「東西南北」4人の結束を固めていく。
そんな中、観光客のガイドボランティア・伊丹秀一を手伝う女子高校生たちの活動が注目され、ゆうたちにテレビ出演のチャンスが舞い込む。
さらに、番組制作会社のAD・古賀萌香との出会いをきっかけに、ゆうたち4人は徐々に仕事を得て、世の中に知られていく。
そしてついには、「東西南北」のアイドルデビュープロジェクトが始動することになる。
「私が選び抜いたメンバー。私の目に狂いはなかった。私たちが、東西南北が、本当のアイドルになるために。私がみんなを、もっともっと輝かせてみせる。」
しかし、夢への階段を登り続けていく中で、ゆうは〈大きな問題〉に直面することになる――
キャスト
(C)2024「トラペジウム」製作委員会
ゆうは本当にやばいのか——誰もが経験する「黒歴史を糧にすること」で、成長した少女の物語
TVの中で輝くアイドルを見てから、どうしてもアイドルになりたくなってしまったゆうは、東西南北から個性的な美少女を集めてアイドルグループ「東西南北(仮)」を結成します。
ゆうは、自分で目をつけた学校や、美少女のもとを訪れ「友達になりたい」と話しかけ距離を詰めていきます。メンバー候補たちの趣味嗜好を徹底的に調査し、自身も好きになることでどんどん落としていく徹底ぶり。作戦が成功し、友人関係を築いた際に2人、3人と指を折り数えていくシーンが印象的でした。
東西南北を集め終えてからも、イメージアップのためにボランティア活動をしたり、町おこし系テレビ番組に取り扱われそうな観光名所にてガイドを行うなど、チャンスがありそうだと感じれば貪欲に行動していきます。しかも、彼女の思うがままに物事は進み「東西南北(仮)」はTV番組でパフォーマンスをするまでに成長するのでした。
彼女の打算的な行動や、貪欲さ、周囲のことを全く考えていない発言。物語後半で描かれる、他のメンバーの気持ちや精神を犠牲にしてでもアイドルとして売れようとする行動などが「主人公やばい」と人々に思わせてしまう要因です。
確かにかなりやばい行動ではありますが、自分自身の過去を振り返った時、ちょっと思い当たる節がありませんか……?
ゆうはなぜ、こんなにも自分勝手なの?
ゆうの家が描かれたシーンに注目してみると、母以外の家族が登場しないことがわかります。彼女がアイドルを目指したきっかけが描かれたシーンでは、暗いリビングでひとり、TVの中のアイドルのパフォーマンスを視聴していました。
詳しい家庭事情は描かれていませんでしたが、ひとりで過ごすことの多い子供だったかもしれません。そんな中、キラキラと輝き、人々の注目を集めるアイドルの魅力にゆうは取りつかれていきます。
また、ゆうはアイドルのオーディションに全落ちしています。どうしてもアイドルになりたいのに、箸にも棒にもかからないので、自分でメンバーを集め、アイドルになってやろうと考えているわけです。
10代も後半に差し掛かった思春期真っ只中のゆうにのしかかっている様々な不安や焦りを考えると、彼女が身勝手になってしまうのも理解できます。普通に生きていくだけで、たくさんの悩みを抱えてしまう年頃なのに、アイドルという存在の輝きと残酷さが呪いのように彼女を蝕んでいます。ゆうたちの活動がそこそこ上手く行ってしまうのもそういった言動を加速させてしまう要因でしょう。
誰もが黒歴史を経験して成長する
思い返してみれば、ゆうの身勝手さや感情的になりやすいところ、焦って突っ走ってしまうこと、自分と他人の境界が曖昧になってしまう感覚など、思春期の頃に経験したような気がしませんか?
彼女のような激しいものじゃなかったとしても、過去を振り返ってみると今にも消えたくなってしまうような、恥ずかしい言動や誰かを傷つけてしまった経験が多くの人にあるかと思います。
物語後半、ゆうは起こってしまった最悪の出来事と、自分自身の行動を振り返って自己嫌悪に陥るシーンがあります。そこで母親や傷つけてしまったメンバーたちに、自分の良いところも悪いところも一緒くたに受容されることにより、ゆうは再び立ち上がります。
彼女はやばい行動をたくさんして、それを自覚して、それでも受け入れて貰える誰かと出会って少し大人になったのです。
彼女についてあれこれと議論をしてしまうのは、東ゆうの一挙手一投足がそういった私達のなにかしらの過去の痛い想い出に触れてしまうからなのかもしれませんね。
ゆうは確かにやばいけど、その後の変化も描かれていた!
本作は、誰もが乗り越えてきたものに真正面から向き合う少女を描いた素敵な青春映画でした!
物語冒頭から手放しでゆうを応援できるかと言われると、決してそうではありません。「ひたむきに努力するキャラクターを応援したくなる」というアイドルアニメの王道な楽しみ方はできないかもしれませんが、限られた尺の中で、等身大の東ゆうが描かれています。
今回は、主人公を中心にレビューしましたが、物語やキャラクターデザイン、キャスト陣の演技、作画など多くの感想がSNS投稿されていますので、ディグって様々な意見を取り入れるのもトレンドマスターへの第一歩!
また、アニメイトタイムズでは、本作に出演した結川あさきさん、木全翔也さんのインタビューなど作品をより楽しめる記事を掲載しておりますので合わせてお楽しみください!
今回もトレンドマスターに一歩近づけた……ハズ!