“嫌われたくない僕”、“嫌われてもいい彼女”。ふたりの対比に込められた子どもならではの距離感と甘酸っぱさ――映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』八ツ瀬柊役・小野賢章さん×ツムギ役・富田美憂さんインタビュー
観る人の年代によって、共感できる部分が変わる
――今作にはロードムービー的な要素もあり、柊とツムギが旅を通じて、沢山の人々に出会います。
小野:ひとりひとりのシーンは短いんですけど、印象に残る人たちが多かったですし、何より地方に行きたくなりました。「こういう人、絶対いるよな」と思えるキャラクターたちを作り上げられたのは、役者のみなさんやスタッフさんたちの力だと思います。個人的に、旅館の主人を演じた斎藤志郎さんとは『ハリー・ポッター』で近い関係性の役だったこともあり、「すごく安心感のある声だなあ……」って(笑)。
富田:(笑)。ツムギの両親も印象的でした。事前にツムギのパパ(三上哲さん)とママ(日髙のり子さん)の声は収録されていたのですが、収録中に聞くおふたりのお芝居がとても温かくて……。以前、日髙さんのラジオに何度か出演させていただいたのですが、共演は初めてだったんです。個人的にもワクワクしながら、収録させていただきました。
――ふたりを演じる中で、自身の10代とリンクした瞬間もあったのではないでしょうか?
富田:私はやはり父との関係ですね。実家を出るタイミングで、「喧嘩別れはよくないから、話しなさい!」と母に言われて、今までお互いにどう思っていたのかを話し合ったんです。それまでは「私にあまり関心がないのかな」と思っていたんですけど、女兄弟がひとりだけだったお父さんは、「女の子にどう接してあげたら良いかが分からなかった」と。それからはふたりでご飯に行くほど仲良くなれましたが、「当時はこう思っていたな」と懐かしい気持ちになりました。
小野:良いですね……。僕にそんな素敵な話はないです(笑)。
――(笑)。小野さんは柊とツムギのどちらに近いタイプでしたか?
小野:10代の頃は、どちらかと言うとツムギの方でしょうか。柊のように、「みんなと友達になろう」というタイプではなかったです。
親との関係性で言うと、進学の話題でかなり衝突しました。ただ、基本的に大喧嘩することは少ないです。親兄弟も仲が良くて、今でも月に1回くらいのペースで集まっています。
――素敵なお話をありがとうございます! 最後になりますが、公開を楽しみしている読者に向けて、今作の注目ポイントを教えていただけますか。
小野:夏に雪は降るのか……。
富田:そこですか!?
小野:というのは置いておいて(笑)。今作では、大人になりきれない少年少女たちが「自分はどうしたいのか」を見つけていく過程が丁寧に描かれています。ワクワクするファンタジー要素もあって、どの世代の人でも楽しめるはずです。柊とツムギのように悩んでいる子たちが今作を観て、自分の勇気に変えてもらえたらなと。沢山の方に観ていただきたいです。
富田:私は親世代の方々にも観ていただきたいと思っています。観る人の年代によって、柊とツムギに共感する人もいると思いますし、親目線から感じることもたくさんあるはずなので、色々な方々と一緒に観ていただけると嬉しいです!
[取材・文・写真/小川いなり]
『好きでも嫌いなあまのじゃく』作品情報
あらすじ
季節外れの雪が降ったある夏のこと。
いつも通り頼まれごとを頑張ってみたものの、やっぱり“何か”が上手くいかない。
「なんだかな」と家に帰る途中、泊まるあてがないというツムギを助けるが……その夜、事件が起きる。
とあることで父親と口論になりそうになるも、“本当の気持ち”を隠してしまった柊。言葉にできない何かを抱えながら、部屋で居眠りをしてしまう。ふと寒さで目が覚めると、部屋が凍りついていて!?柊はお面をつけた謎の化け物に襲われるが、異変に気付き助けに来たツムギとふたりで、部屋を飛び出す。
一息ついた先でふとツムギの方を見ると……彼女の頭には“ツノ”が!?
ツムギは自分が“鬼”で、物心つく前に別れた母親を探しにきたという。そして、柊から出ている“雪”のようなものは、本当の気持ちを隠す人間から出る“小鬼”で、小鬼が多く出る人間はいずれ鬼になるのだと……。
柊はツムギの「お母さん探しを手伝って欲しい」という頼みを断り切れず、一緒に旅に出ることに。しかし、時を同じくして、ツムギの故郷・鬼が暮らす“隠の郷(なばりのさと)”でも事件が起きていて――。
キャスト
(C)コロリド・ツインエンジン