夏アニメ『魔王軍最強の魔術師は人間だった』福山潤さん(アイク役)×立花日菜さん(サティ役)インタビュー|魔王軍の内情などディープな魅力もありつつ、ライトに楽しめる作品。アイクをめぐるキャットファイトにも注目!?
羽田遼亮先生の小説を原作とし、2024年7月から放送スタートとなるアニメ『魔王軍最強の魔術師は人間だった』。
人間と激しい戦いを続ける魔王軍の最強の魔術師・アイクは実は「魔族のふりをした人間」!? 彼が魔族を装い、魔王軍で戦う意味や目的とはーー?
アニメ化を記念し、主人公のアイクを演じる福山潤さんと、アイクの元で働くメイド・サティ役の立花日菜さんに作品の見どころや収録の裏話などを語っていただきました。
人間社会を知らずに魔族社会で育ったアイクは純粋。サティは「アホの子」なところが魅力!?
――原作小説やコミックを読んだり、演じてみて感じた作品の印象や魅力を感じる点をお聞かせください。
アイク役・福山潤さん(以下、福山):魔王軍は人間たちと戦っているのに、その魔王軍の中枢にいるアイクは魔族ではなく、実は自身を魔族と偽った人間というのがおもしろいですね。
魔王軍の中でもそれぞれの思惑やパワーバランスがあって、実は複雑なお話ですが、ライトに、わかりやすくマイルドに描いていて。正義を描いていくと、巨大勢力を打ち倒す過程にカタルシスを感じるものですが、例えば、(主人公が)正義側の存在だったのに、次のシリーズでは敵が正義側として描かれる意趣返しみたいなものがあったり、正義側がすべて正しいわけではないと思い始めたりして。人間というものは複雑なもので、善悪でシンプルに分けることが難しいと思いますが、人間と魔王軍に置き換えることで、キャラの関係性や心情がよりわかりやすくなっているのもいいなと思いました。
また、軍勢としては人間の軍のほうが圧倒的に多いこともありますが、魔王軍はそれぞれが固有の生命体としての強さがあるゆえに、戦術にこだわらないために劣勢になっているのもおもしろいなと思います。
サティ役・立花日菜さん(以下、立花):私も、人間側が正義として描かれることが多い中で、魔王軍の視点で描かれていることが珍しいと思いましたし、「アイクはどうして魔王軍側にいて、目的は何なのかな」とすごく興味が湧きました。
また、シリアスなお話の中に、コメディ要素も多いし、ハーレム要素もあって、かわいい女の子たちがみんなアイク様のことが好きで。白魔法と黒魔法の違いとか、難しそうな部分もありましたが、理解しやすいし、楽しみながら演じることができました。
――演じるキャラクターの印象や魅力を感じる点をお聞かせください。
福山:アイクはつかみどころがまったくなくて。人間だけれど、魔族のロンベルクに育てられ、彼の能力を受け継いだわけですが、設定のほうが人格を持っている感じで、サティとの出会いや軍団長のセフィーロとのやり取りなどから少しずつ、人間としての性格などを、読者や視聴者の方が形作っていく印象です。
また、魔王軍にいる人間で、魔族と人間の共存を願っていますが、人間社会で生活したことがないわけです。魔族社会で育ったことで、人間であることを知られたら殺されてしまうというリスクと背中合わせではあるけれど、人間社会の複雑な駆け引きや策謀、憎悪などにまみれず、純粋なまま成長できたんじゃないかなと思います。
立花:コミックを読んだ時、サティは世間をあまり知らない子だなと思いました。アニメになって、よりその部分が強調されていて。奴隷だったので、悲しい過去もあったと思いますが、自分を救ってくれたアイクさまにとても恩義を感じていて、素直に付き従うし、忠誠心も強くて。たぶんアイクを慕う女の子のなかで一番下心がないと思います(笑)。そんな素直さがかわいいです。
――作中の緊迫した雰囲気を和らげる存在でもありますね。
立花:アイク様も癒されるひと時になっているのかな。戦いの場には出ないので、いつもお留守番していましたが、お話が進むにつれて、陣地の守りを任せられる存在になっていって。心情の変化や成長が見えてくるので演じていても楽しいです。
アイクはサティと出会い、少しずつ人間らしいコミュニケーションを獲得していく
――演じる際に意識した点や、スタッフからのオーダーやディレクションなどがあれば合わせて教えてください。
福山:最初の収録で(ながはまのりひこ)監督から、「アニメではアイクが転生者であることは描きません。だから人間性はサティと出会ってから最終回までの間に獲得していってほしい」とお聞きしました。僕自身としても、ただでさえ情報量が多い作品なので、転生者である要素を入れたら処理できなかっただろうなと思いました。
なので例えば、ジロンとのコミカルなシーンで、アイクがツッコミを入れる時もあえて冷静に言ってみたり、人間的なギャグシーンとして成立させないようにするけど、セフィーロのお色気シーンへのツッコミは若干成立させてみたり、アイクなりにできる幅を少しずつ広げていくような。大きく成長するわけではないけれど、少しずつ人間らしいコミュニケーションを獲得していく過程を意識して、最終回で完成するように演じました。
立花:収録の最初に監督から「原作と違う設定があります。サティが、一番キャラが変わっているかも」と言われて。コミックを読んだ時は、サティの内面に重い過去を感じましたが、アニメの台本を読んだ時、アイク様との出会いのシーンも重い部分が感じられなくて、「湿っぽくしなくていいのかな」と。なので、ゼロから作り上げるつもりでサティを演じてみたら、ゴーサインが出たので、思うがままやらせていただきました。
あとアイク様と一緒のシーンが多いんですが、呼び方も意識した点で、原作では「アイク様」や「ご主人様」など呼び方がシーンごとに変わっていたので、統一したほうがいいのか相談させていただいて、1カ所以外は「ご主人様」と呼ばせていただくことになりました。
――お互いのキャラクターの印象とお芝居についての感想をお聞かせください。
福山:サティとはよく一緒にいるけど、実はそれほどセリフは交わしていなくて、ポイントポイントのみで。
立花:一緒にいる時はお互いに、視聴者の方が何をしているのかわかるように説明するようなシーンが多くて、心情的な掛け合いはあまりなかったですね。
福山:むしろサティとリリスとジロンの会話によって、ほんわかさせてもらっています(笑)。
立花:収録前は「アイク様はつかみどころがないからどう演じられるのかな」と思っていました。でも第1話の収録で福山さんのお芝居を聞いたら、すごくしっくりきて。ただセリフ数がとても多いので、「大変そうだな」と思いながら、後ろから見守らせていただいています(笑)。
――アイクはモノローグも多いですから大変ですね。
福山:でもモノローグでも本ゼリフでも仮面をかぶっているので、逆に助かっています(笑)。ただ、第1話の収録が体調不良で参加できなくて。その翌週に、病み上がりの状態で収録しました。皆さんの声が入っていたので、普通に収録するのと変わらなかったんですが、「せっかく、みんなと収録できるようになったのに」とすごく寂しくて。その分、第2話からの収録は楽しもうと。作品はシリアスなのに、現場はとてもうるさくて(笑)。
立花:めちゃめちゃにぎやかでしたよね。
福山:それに加えて途中からクシャナ役のくじらさんが参加されたら余計にぎやかになって。本番が始まる前に、僕とくじらさんが息切れするくらいしゃべって。
立花:すっかり疲れてしまわれて(笑)。
福山:そんな笑いが絶えない現場でした。