『夜のクラゲは泳げない』連載第9回:美術監督・金子雄司さん|より人物の感情に寄り添った風景になってほしい
オリジナルTVアニメ『夜のクラゲは泳げない』。監督:竹下良平 × 脚本:屋久ユウキ × アニメーション制作:動画工房が贈る青春群像劇。
第9話は、まひるの絵描きとしての葛藤が描かれていました。無観客ライブをきっかけに、まひるに訪れた巨大プロジェクト参加の誘い。自分の絵が認められた、そして自分のしてきた努力も分かってくれるプロデューサーとの出会いによってくだした大きな決断。花音とまひる、どちらの気持ちにも寄り添いたくなる苦しいエピソードでした。
連載第9回は、いろいろな葛藤をしながら生きているキャラクターたちの心情にも寄り添った背景を描いてくれている金子雄司さんに、『ヨルクラ』の美術について語っていただきました。
前回の記事
より人物の感情に寄り添った風景になってほしいと思った
ーー『夜のクラゲは泳げない』の物語、そして放送中のアニメを見ての感想をお願いします。
金子: 作っている最中は必死でなかなかわからないのですが、出来たものを見ていると、とても面白く、素晴らしい作品に関わらせてもらえたんだなとしみじみと感じています。
ーー竹下監督からのオファーがあったときの率直な感想を教えて下さい。その際、監督から、どのような言葉がありましたか?
金子: 私が以前関わってきた作品もたくさん見ていてくれて、なんだかたくさん褒めてくださり照れました(笑)。手描きの背景のルックでお願いしたいと言ってくれたことがうれしく、作品の雰囲気的にちょっぴり意外な感じもしてワクワクしました。また、竹下監督からは女優さんを昔の「写ルンです」フラッシュ付で撮ったような写真集を見せていただき、そういう雰囲気を出せないだろうかとお話しいただきました。その時点ではうまくいく確証が持てなくてハラハラもしましたが、リスクを恐れない監督の姿勢は学ぶところが多かったです。
ーー本作は、渋谷のリアルな景色、ストリート感、でも実際の渋谷に行っても味わえないような、絵だからの良さも感じました。『ヨルクラ』では、どのようなことにこだわられて、景色を描いていきましたか?
金子: 一見、見慣れた景色をただ絵にしてあげる面白さというのは、背景美術の醍醐味のように思っています。ただ、今回はそれだけでなく、より人物の感情に寄り添った風景になってほしいと思ったので、絵の具で描いた玉ボケのような素材を被せて、撮影さんとも共有させていただき、面白い雰囲気が出せないかなと試みました。
光学的に正しいかどうかというよりはキャラクター心情に寄り添った背景になってほしいと思っていました。
ーー「美術」と「撮影」によって、『ヨルクラ』の世界観はできていると思いますが、光の演出などについては、やり取りなどはあるのでしょうか?
金子: 基本的には、監督や演出さんとお話を詰めさせていただくという感じでした。ただ、出来上がってくる完成画面の撮影処理がとてもきれいで、撮影の皆様にもすごく助けていただきました。いつも撮影上がりを拝見するのが楽しみでした!!