『時光代理人 -LINK CLICK- Ⅱ』李兄妹を一人二役で演じる村瀬歩さんに聞く男女キャラクターの演じ分け|「小さじ一杯分くらい多めに自分が思う女性の要素を足してみる」
2021年4月よりbilibili動画にて配信され、わずか4か月で世界での総再生回数1.6億回を突破したオリジナルアニメーション『時光代理人 -LINK CLICK-』。2022年1月に放送された第1期に続いて、第2期『時光代理人 -LINK CLICK- Ⅱ』日本語吹替版が、フジテレビ「B8station」にて放送中です。
繁華街の一角に佇む「時光写真館」を舞台に、特殊な能力を持ったトキとヒカルがコンビを組み、過去を引きずるクライアントからの依頼を解決していく本作。第1期は写真館の大家の娘・リンが何者かに乗っ取られ、ヒカルを刺すという衝撃の展開で幕を閉じました。第2期ではリンの体を乗っ取ったのは誰だったのか、第1期から続く一連の事件の黒幕は誰なのかを解明するためにトキらが奔走。登場人物が増えて謎が深まるなか、物語は果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか。
アニメイトタイムズでは第2期の重要人物である李天辰(リー・ティエンチェン)・李天希(リー・ティエンシー)の兄妹を演じる村瀬歩さんにインタビュー。他作品含めて、男性・女性どちらのキャラクターも見事に演じる村瀬さんに、作品の見どころや、演じ分けるうえで意識していることについてお聞きしました。
関連記事
お芝居に正解はないけれど評価はされる
――村瀬さんは第2期から登場する李天辰(リー・ティエンチェン)・李天希(リー・ティエンシー)の兄妹を演じます。最初に本作の台本を読んだときの感想を教えてください。
ティエンチェン・ティエンシー役・村瀬歩さん(以下、村瀬):まず、台本上で最初に出てきたのが妹のティエンシーのほうだったので、「女の子だ、頑張らなきゃ」という使命感に近い気持ちが生まれました。そこから台本を読み進めていくうちに、このキャラクターたちがどういう運命を辿るんだろうというドキドキ感が増してきて。謎が解けていくごとに「こういうことだったのか!」という驚きの連続でした。
――本作では、兄妹の役を一人で演じられています。演じ分けるのは難しかったのではないかと素人ながらに思うのですが、アフレコはいかがでしたか?
村瀬:僕が最初に演じたのは、ティエンシーの幼少期でした。そこがこの兄妹のフックになるということで、視聴者の方々に印象付けておくのが大事という話を現場でいただいて。なので、しっかりとかわいい小さい女の子に聞こえるように……というより、もう「聞こえろ!」と強く思いながら頑張って演じました。それもあって、ティエンチェンに関しては、ティエンシーのお芝居からお兄ちゃん要素を足して演じています。彼自身が大人びたいというところがあったので、ティエンシーをベースにそのエッセンスをプラスしていきました。
――男性・女性キャラクターを演じるうえで、意識する点はそれぞれで異なりますか?
村瀬:全然違いますね。僕は女性として生きてきた訳ではないので、分からないことも色々とありますから。参考にしているのは、少年役などを演じられている女性声優さんのお芝居やディレクションのやり取りです。
これは感覚的な話なのでちょっと説明が難しいのですが、僕の目から見た女性声優さんが演じられる少年役って、僕が少年を演じるときよりも、男性の要素を主張している気がするんですよ。
――なるほど。
村瀬:なので、僕はその逆をやるというか。僕が女性の役を演じるときは、小さじ一杯分くらい多めに自分が思う女性の要素をちょっと足してみるんです。単に役を作るというところ以外で、意識しなきゃいけないところが多いと感じていますね。
――それくらいが、最終的にはちょうどよい加減になる。
村瀬:実際に監督さんやスタッフの方々が考えていることは分かりませんが、自分のなかでは、小さじ一杯分くらい足すというところに落ち着いています。でも、それがよいか悪いかなんて、分からないんですよ。
――お芝居には正解がある訳じゃないですし。
村瀬:そうなんです。ただ、正解はないけれど評価はされます。「この人って、ああいうお芝居が得意だよね」とか、「あの人はこういうことをやらせたら、最初に名前が出てくるよね」とか。評価されなくなるということは、イコールこの業界では仕事がなくなるということだと思います。評価され続けるためにも、ちゃんと考えていかないといけないんですよね。
――評価されている部分が分かれば、求められていることが分かるかも。
村瀬:それが分かればありがたいのですが、そもそも、その評価されている部分が分からないんですよね(笑)。作り手側になったら、もしかしたら何となくのパブリックイメージはつかめるかもしれませんが。どこが評価されているのか、何がいいのか、自分の思っていることが正しいのかと考えても結局は答えが出ないから、自分の落ち着くところでやるしかないのかなと。僕はそうやって割り切って演じています。
――そんな村瀬さんが、お芝居をするうえで大切にしていることをぜひ教えてください。
村瀬:作品を作るというマクロな視点としては、原作の先生、原案の方、監督などスタッフの方々・パッケージを販売される版元の方など、作品に関わるみなさんに「村瀬に頼んでよかった」と、満足してもらえることを目標としています。
一方の自分の作業というミクロな視点では、とにかくモヤモヤした状態でお芝居をやらないことを心がけています。原作があるものは原作を読む、原作がない作品なら疑問に思ったことはちゃんと監督さんなどに聞く。そうやって、とりあえず情報を入れてから芝居をやります。
作品によっては「情報をいれないままやってください」と言われることがありますが、そういうときはとりあえずやってみて、ディスカッションすることをより大事にしていますね。
――情報を入れないと、物語や作品のことも分からないですもんね。
村瀬:例えばひとつのセリフであっても、この場で大事なことなのか、作品が進んで行く流れのなかで言ったことなのかによって、意識することも異なると思うんです。何でこのキャラクターがそのセリフを言うのか、このキャラクターは何を考えているのかという目的や意図などは、大切にしていますね。