『キングダム』龐煖(ほうけん)とは? 王騎や信のゆくてに立ちはだかる“武神”。その勝敗は?
『キングダム』は、中国の戦国時代末期(紀元前245年頃から)を舞台にした、週刊ヤングジャンプで連載中の原泰久先生の漫画作品です。主人公は、中華統一をめざす秦王 嬴政(えいせい)と、大将軍を目指す信(しん、李信)。彼らを取り巻くたくさんのキャラクターも魅力的です。
ここでは、秦の敵国趙の“武神”龐煖(ほうけん)を取り上げます。
※注意
2024年6月現在、アニメは第5期まで放映済み、原作単行本は72巻まで出ているという状況で、書かせて頂いた記事です。そのため「龐煖の死」までを含む記事となっています。
アニメや映画で追っている方にはネタバレとなりますので、充分ご注意ください。
目次
『キングダム』龐煖とは
龐煖は、趙(ちょう)の武人です。趙は秦の中華統一を阻む最大の敵国。つまり、龐煖は政と信の敵になります。
冷めた見方になりますが、少年漫画の敵というとその場限りというか、倒されたら出番が終了となることが多いような(?)気がします。でも、龐煖はなかなか倒れません。特に信とは戦場で何度も刃を交えますが、なかなか決着がつかないのです。
このように、成長していく主人公 信がいつまでも手古摺るということは、それだけ“龐煖は強い”ということになります。
とはいえ龐煖は、軍を率いる将としての能力はありません。龐煖は単独で斬り込んでいくことで、圧倒的な強さを見せるのです。こうした龐煖の強さに、得体の知れない不気味さと、作品中どの敵も持たない個性を感じた方は多いのではないでしょうか。
個性的な彼の強さを支えるのは、「自身の“武”を神の領域に到達させようとする生き方」です。戦場に揉まれて強くなっていく他の将兵たちとは異なり、山に籠って修業をするなど、成長の仕方も独特です。
このように一癖も二癖もある龐煖ですが、ここからは作品上の年代の古いほうから、印象に残るところを見ていこうと思います。
龐煖エピソード①王騎(おうき)と摎(きょう)
まだ信たちの物語が始まる前、政の曾祖父 昭王(しょうおう)の頃。
趙の馬陽(ばよう)を攻めていた秦の将軍 王騎と摎が、龐煖の軍と対峙したときのことです。
摎は一軍を率いる将ですが女性で、周囲には秘密にしていますが昭王の娘です。王騎とは、将来を約束する仲にあります。
戦いの混乱の中、摎は龐煖と一騎討ちの状態に陥ります。摎も相当な腕の持ち主ですが苦戦の末、死亡。
これに気付いた王騎は怒り心頭。いつもの余裕を失った王騎の最大の激情が描かれるシーンです。王騎は、摎と龐煖のいる場所に駆けつけますが、龐煖の顔に傷を付けたものの、討ち取るまでには到りませんでした。
必ず摎のかたきをとることを誓う王騎と、自分が信じる絶対の武力を越えて傷を付けられたと恨む龐煖。王騎と龐煖の因縁が始まります。
龐煖エピソード②王騎から信へ
信15歳、人生2回目の戦場となったのも馬陽(ばよう)です。
ここで、王騎と龐煖は一騎討ちとなり、龐煖は王騎に致命傷を与えます。つまり、二人の勝負は、龐煖の勝ちという結果になったのです。
傷を負った王騎は、信に自分の矛を託し、馬上で亡くなります。当然、信は王騎のかたきをとることを心に誓うことに。王騎から信へ、「vs.龐煖」が受け継がれた瞬間です。
一方、龐煖は王騎に勝ったのに満足感を覚えることなく、戦場を立ち去ります。王騎の強さを認めざるをえない、自分が一番強いとは言えないといった気持ちだったのでしょうか。龐煖はこの後、修業をするために山に籠ります。
龐煖エピソード③信
この後、信が再び龐煖と対峙することになるのは、信18歳の時「函谷関(かんこくかん)の戦い」(紀元前241年、秦vs.楚・趙・魏・韓・燕)です。
この戦いの中、前線から離れた城都 蕞(さい)を不意打ちしてきた趙軍。蕞を守るために急ぎ駆けつけた信は、突然現れた龐煖と一騎討ちとなります。
信は、龐煖に傷を負わせたものの、討ち取ることはできませんでした。
次の機会は信23歳、「鄴(ぎょう)攻め」(秦vs.趙)の際にて。趙の総大将 李牧(りぼく)の本陣を狙う信。しかし、信の行く先をはばむ人物が現れます。龐煖です。
二人は一騎討ちとなり、信はついに龐煖を葬ることに成功します。
信は龐煖より強かったから勝てたのでしょうか。
否(いな)、二人の強さの違いゆえではないでしょうか?
次からは、この二人の強さの違いについて考えてみたいと思います。