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『響け!ユーフォニアム3』北宇治カルテットの4人が作品への想いを語りつくす【連載06】

3期は久美子にとって「特別じゃない人生」に向かう 物語だった――『響け!ユーフォニアム3』北宇治カルテット(黒沢ともよさん×朝井彩加さん×豊田萌絵さん×安済知佳さん)インタビュー|最後まで『ユーフォ』ならではの音楽とエンタメを楽しんでほしい【連載第6回】

 

葉月の決断の早さと、フットワークの軽さは変わらない

――皆さんは、それぞれのキャラクターが高校に入学したときから演じてきたわけですが、3年生になってからの成長や変化などを感じますか? 黒沢さんと安済さんには連載第1回でも同じ趣旨の質問をしているので、まずは朝井さんと豊田さんからお願いします。

豊田:ミドリちゃんに関しては最初から人間ができているので、大きな変化はあまり感じていないです。本人のセリフでも、(4回で)久美子に対して「いつの間にか、先輩になっちゃってますもんね。久美子ちゃんもミドリも」というセリフがあって。根本的には変わっていないけれど、自分の中ではいつの間にか、気づかないうちにくらいの感じで、一歩一歩成長しているんだろうなと感じました。

 

 

――葉月に関してはいかがですか?

朝井:低音パートは、1年生のときから本当に先輩に恵まれていたなと感じていて。きっとそんな先輩の姿を見てきて、葉月の中に「自分がなりたい先輩像」みたいなものができたのかなって。ちょっとしたシーンでも「良い先輩をしているな」と感じることがすごくありますし、そういう部分で成長を感じるというか、先輩としてすごく頑張っているなと思います。

あと、(第七回で)久美子と一緒に大学説明会に行ったんですが、その場ですぐに進路を決めたんですよね。迷わず決められる決断の早さと、気になることに踏み込むフットワークの軽さは、1年生の最初に部活を決めたときと全然変わらないなって。ああいうところは彼女が元々持っている性格だと思うし、葉月らしいなと感じるシーンでした。

――では、改めて第十二回までの内容を含めて、久美子と麗奈に関しても、成長や変化を感じたことはありますか?

黒沢:久美子は、「特別じゃない人生」に向けてどんどん進んで行ったなって。麗奈を見ていると、「成長すること」=「特別になること」だと感じるし、1期、2期では、久美子もそう感じて、そこに向かって邁進していたと思うんです。

久美子は麗奈と会話するよりも、圧倒的に(顧問の)滝(昇)先生とのほうが会話できるようになっていって。私も滝先生や美知恵先生とのシーンの方が芝居をしやすかったんです。27歳の私に、久美子の感覚がどんどん近付いてきたのか、「特別になりたい」と言っている子(麗奈)を「可愛いな」って思うようになっていきました。

安済:あはは(笑)。

 

 
黒沢:久美子の中には、自分は特別になれなかった悔しさもあるから、(第十二回で)「死ぬほど悔しい!」と叫んだのだと思いますが、久美子の本質としては、普通の大人たちのほうに共感できるようになっていったんだろうなって。

知佳ちゃんは、役の中に入り込むタイプのお芝居をする人だから、先ほどのように、きっと麗奈が思っていたのと同じように「(久美子と麗奈の)楽しいシーンもいっぱいあったよ!」と言ってくれたんですね。

安済:(黒沢さんを見て)楽しくなかった?

黒沢:私としては楽しかったよ。でも久美子としては、「離婚を決めた後の穏やかな日々」というか。

――「もう別れるという結論が出ているから、揉めることはない」みたいなことでしょうか?

黒沢:そうです、そうです。今回、「麗奈は特別だから」という言葉が、どんどん(2人の)距離になっていった感覚があって。これまでの久美子は、“麗奈ウイルス”と“(田中)あすかウイルス”に感染して、熱に浮かされていた状態だったんですが、3年生になってからはその熱が冷めて、普通の人生に戻っていく過程なんだなと感じました。

安済:それは、真由という(以前の)自分を見ているかのような人に出会った影響もあるのかな。

黒沢:それはあるかも。

豊田:真由が“麗奈ウイルス”の特効薬だったんだ。

安済:そうそう。

 

 
朝井:そういえば、『アンコン編』(『特別編 響け!ユーフォニアム ~アンサンブルコンテスト~』)の舞台挨拶のとき、石原(立也)監督も仰っていたんです。「真由は久美子にとって、自分と同じ性質な上にプラスアルファも持っている存在で、やばいラスボスみたいな相手」って。3期が始まってから、真由を見ていて「まさにこれか」って思いました。

黒沢:人間的に抱えているものは、久美子と真由は似ているんですが、音楽性が似ているのは、たぶん真由と麗奈なんですよね。(資料を見ながら)今、この絵を見て、すごくよくできたキービジュアルだなと思いました。

――北宇治カルテットの4人と真由が茶畑の前を歩いているビジュアルですね。

黒沢:楽器を持っているのは真由と麗奈だけで、2人は鏡映しみたいに描かれているんです。でも、髪の毛の色は久美子と真由が近い。この絵の真由って、内側から生えているものは久美子に近いけれど、外に持っている物は全部、麗奈にすごく似ているんですよね。

朝井:楽器を持っているのが、ふたりだけなのはすごいね。

安済:めちゃくちゃネタバレの詰まったキービジュアルだったんだね。

豊田:たしかに。伏線すぎる。

安済:そんな2人は、第十二回にして初めて会話しましたけどね(笑)。「高坂さん、よろしくお願いします」「ええ」って。

 

 

麗奈は、“高坂麗奈濃度”がますます濃くなった

――前回の取材のとき、安済さんは「高坂麗奈は、ずっと高坂麗奈」と話されていましたが、第十二回まで物語が進んでも、その印象は変わらないですか?

安済:そうですね。もう“スーパー高坂麗奈”です(笑)。“高坂麗奈濃度”がますます濃くなっていて、十一回、十二回を録ったときは「どうなっていくんだろう」って思いました。あと個人的には、アメリカに行ってからの麗奈のことがすごく気になっています。

黒沢:向こうには、麗奈みたいな子がいっぱいいるんじゃない?

――“各国の高坂麗奈”が集っているわけですね。

安済:麗奈だらけかー。どんな風にぶつかるんだろう?

黒沢:ぶつからないんじゃない? 「あなた特別なの? 分かる! 私も特別なの!」って(笑)。

朝井:「me too」って(笑)。

豊田:アメリカンコメディみたい(笑)。

 

 

――では、全国大会でのソロ奏者が決定した第十二回についての感想を伺いたいと思います。まずは、黒沢さんからお願いします。

黒沢:原作(『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』)を先に読まれていた方は、「あれれ?」ってびっくりする展開だったと思うんです。

――ユーフォニアムのソロ奏者をかけて久美子と真由が再オーディションすることになり、覆面投票の結果、真由が選ばれるのは、アニメオリジナルの展開です。

黒沢:スタッフの皆さんがたくさん話し合いをされて、熟考した末にこの結論に至ったということなんですが、「すごく良い!」と思って。

安済:良いよね。

黒沢:「久美子が特別にならない」ということが、徹底的に貫かれていて。作品に携わらせていただいている身としては、「やったぜ、『響け!ユーフォニアム』!」という感じでした。久美子を演じている身としては、もちろん、しんどかったですけど。

――大吉山で、久美子が「死ぬほど悔しい」と泣くのもアニメオリジナルのシーンですが、素晴らしいなと思いました。やはり黒沢さん自身も、気持ちが重なるところはありましたか?

黒沢:もちろん悔しいですし、久美子も麗奈の顔を見て、より悔しい気持ちになったのだと思います。でも、あそこが久美子の「熱に浮かされパート」のラストというか。線香花火が燃え尽きる前、最後にバチってなるような感情の起伏だったのかなって。

 

 

――他の皆さんは、どのような感想を抱きましたか?

朝井:最初に台本を読んだとき、「マジか!」ってなりました(笑)。でも、最後まで読み終えたときは、自分の中ですごく納得できて。最終的には久美子が吹くと思っていたんですが、『ユーフォ』の場合だと、真由が吹くことも有り得るなって。たぶん観ている皆さんの中にも「『ユーフォ』だから、久美子が吹くとは限らないぞ……」と思っていた人は多いのかなと思います。

それに、久美子たちが(第十一回で)演奏会を観に行ったとき、(鎧塚)みぞれ先輩に「音大に通っている久美子は想像できない」と言われて、本人も少し納得していたじゃないですか。あそこで「真由ルートに入ったかもしれない」とちょっと思いました。

黒沢:真由ルート(笑)。

朝井:それでも、第十二回の台本を読んだときは衝撃的でしたね。

豊田:久美子と真由のオーディションは、演奏者を隠した覆面オーディションだったじゃないですか。でも(投票する部員たちが)手を上げるとき、演奏だけでどちらの演奏か分かっている人と、分からなくて純粋に「こっちが良い」と思って上げている人がいて。そこに、それぞれの部員の特徴が出ているところもすごく良いなって思いました。例えば、ミドリちゃんは、たぶん久美子の音だと分かった上で手を上げていて。葉月ちゃんは……

朝井:分かってないよね。

豊田:うん。たぶん、純粋に音だけで真由ちゃんの方に上げたんですよね。あと、奏ちゃんも絶対に分かっていて久美子に上げている。観ている皆さんも絶対に「この子はどっちに上げたんだろう」って細かく観るじゃないですか。そういう風に、投票する側も見られている感じがして少しドキッとしました。でも大変なのは、最後に投票した麗奈ですよね(笑)。

朝井:一番、分かっている人だからね。

 

 
安済:私、いただいていた第十二回の台本を読む前に、あやちゅ(朝井さん)に会う機会があって。先に読んでいたあやちゅに内容を聞いて、覆面オーディションをやると知ったんです。それで「覆面オーディションでも、麗奈さんは音でどっちか分かるでしょ」って言ったら、「そう! 麗奈は分かるんだよ!」って。

朝井:「それで、最後の決定権は麗奈が持つんだよ」って言ったら、「マジかー」って言ってたね(笑)。

安済:「そこで出す麗奈の答えはどっちなんだろう」と考えたとき、たぶん音楽の方を大事にするとは思うけれど、久美子は麗奈の中でも特別だから。どちらを選ぶかで、音楽を取るか、久美子を取るかの決断が見えそうだなと思ったんです。でもそこで真由を選んだ理由が、久美子との約束を守ることでもあったので、「麗奈も可愛いところある。ちゃんとそれを軸に生きてきたのね」と思いました。

黒沢:最後までヒロインだったね。

安済:たしかにヒロインだった。

――2人の絆の強さというか、絆の形が分かる展開でした。

豊田:久美子のことを(ただの)友達じゃなくて、特別だと思っているからこその選択だよね。普通だったら友達を選んじゃう。

黒沢:選んじゃうよ~。

安済:金(賞)を取るための最善の選択をする。それが久美子との約束でもあるんですよね。

 

 

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
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