『アストロノオト』インタビュー連載(最終回):高松信司(総監督)×春日森春木(監督)|狙ってはいなかった? 素晴らしすぎるラスト
狙ってはいなかった? 素晴らしすぎるラスト
――高松監督は、第11話からのロボットバトルのシーンを担当されていたのですか?
高松:第11話で拓己とミラがキスしたところから、急にアニメが変わるじゃないですか(笑)。突然あれよあれよと展開していくんですけど、そこからコンテ・演出をバトンタッチしています。
春日森:全然違う話が始まりましたよね(笑)。
高松:第12話のAパートいっぱいまでが私の担当で、Bパートはまた春日森さんに お渡しする感じでした。
もともと、最初の企画がロボットものだったので、ロボットものではなくなったとき、最終話だけやっていいですか?という話をして、「じゃあ最終話だけロボットものにしましょう」と言ってくれたので、やらせていただきました (笑)。
春日森:あれがカタルシスですよね。あのために11話までがあったのではないかっていう(笑)。
高松:窪之内英策さんにキャラクター原案をお願いしたとき、頼んではいないんですけどロボットも描いてくれていて(笑)。採用はしていないんですけど操縦席とかも畳になっていたんです。アパートの一室がコックピットになっているという絵だったんですけど、面白かったです。
春日森:アパートの内部はあまり変わらないっていうのは、残っているかもしれないですね。
高松:もともとのアイデアが、今となってはどうするつもりだったんだろうって思うけど、毎週ロボット戦をやってラブコメをやる予定だったんですよ(笑)。
春日森:敵もいろいろ作らなければいけなかったでしょうね。
高松:そうそう。あと最初の設定は、住人はアパートの中にいるけど、ロボットになってバトルをしていることには気付かないという設定だったんです。拓己とミラだけがロボットを操縦していて、住人は住んでいるんだけど、中でご飯を食べていたりする。でもその感じは、第12話のAパートで残っていましたね(笑)。
――モニターで宇宙に行ったってことはわかっているみたいでしたけど、普通に生活していましたね。
高松:あとはロボットが急に出てきたので、テレコムさんが大変だっただろどうな っていう。
――ロボットのデザインや設定を考えたり、作画をするのも大変ですからね。
高松:何がこの作品でカロリーが高かったかというと、最後がロボットバトルとテルルンの歌なんですよ。実は歌とのシンクロも大変だったんです。
春日森:そうでしたね(笑)。テルルンの曲は、振り付けもお願いしていましたから。
高松:振り付けしてもらったのを作画でおこしてもらって、それを音に合わせるっていう。
春日森:しかもテルルンの衣装が結構透けていたり、動くと大変な衣装でもあったので、ライブシーンの作画さんは大変で、ご苦労をかけてしまいました(第10話)。
高松:「Future’s diary」と「ぴゅあぴゅあラブリー右フック」(歌:松原照子/CV.降幡 愛)は、『TV「アストロノオト」全曲集』に収録されているので、聴いてほしいですね。
――最終話は、ミラが地球に残ることを決心し、ナオスケとお別れするという、ほろっとする展開でもありました。印象に残っているシーンはありますか?
春日森:やっぱり速水奨さんですかね(笑)。最後の最後にゴシュ星人の皇帝を誰にしようかと迷っていたんですけど、素晴らしかったです。あのキャラクターデザインも頭から下はちゃんとかっこよくしなければいけないけど、頭が魚っていうところでのバランスが難しくて。キャラクターデザインのあおきまほさんが苦労していました。
高松:あとはエピローグが本当にうまくいって良かったなと思っています。あそこでいろいろなことを回収したよね?
春日森:水族館デートとか。
高松:初稿のコンテだと、いろいろ回収できていなかったんです。最後になっていろいろ入れて、最後は『アストロノオト』なので、ノートで終わろうと思いついて、最後に入れました。
――そうなんですか!
高松:初めから考えてました!みたいな感じになっちゃったんだけど(笑)。
――内容はちょっと違っていたかもしれないですが、小説家である山下正吉さんが書いた物語でした、みたいな締めくくりになっていましたよね。
高松:そうですね。それで、ノートで終わるあのエンディングにしました。あとは、キャラクターのその後とかも描いて。
春日森:富裕は無職ですけど、どこかで稼いでいることがあるので、何をしているんだろうと。でも、普通にコンビニでバイトしていたらつまらないじゃないですか。だから発掘をしているということにして。あと、あすトろ荘がロボットに変形するのをおばちゃんだけが見てて、他の人に言っても信じてもらえないとか(笑)。そういうのも面白かったです。
――結構何度か隕石らしき飛行物体が落ちてきているんですけどね、なぜか誰も見ていない。
春日森:そういうツッコミどころを、ここで回収できたような感じでした。
――その他、葵ちゃんが犬好きになっていたり、ショーインが働いていたり……。1クールで、キャラクターのエピローグを描いて感動させるのは難しいと思うのですが、それぞれのキャラクターが個性的で、お当番回も印象的だったからこそ、すごく感動的なエピローグになっていました。
高松:ありがとうございます。でも、実はシナリオにはエピローグはなく、フラッシュモブで終わっていたんです(笑)。だから、え? ここから踊るの?ってなって(笑)。
春日森:あの登場人物たちを踊らせるのは、作画的に結構大変だというのもあって。
高松:そうそう。だからサプライズでフラッシュモブを始めはするんだけど、そのままOP曲に入り、そこでエピローグを作ろうということになったんです。結構行き当たりばったりでやったわりには、いろいろうまくいったんで良かったです。最初から考えていた体でできたので(笑)。
――今、言っちゃいましたけどね(笑)。では最後に、TVアニメ『アストロノオト』を見届けてくれたファンへメッセージをお願いします。
春日森:本当に作っていて楽しかった作品でしたし、この話が終わっても、そこから先の未来に、それぞれのキャラクターが活き活きと生き続けているんだろうなと思いました。
第2期は考えてはいなかったけど、ミボー星に帰ったナオスケとか正吉がどうなっているのかとか、いろいろ想像したくなる作品なのではないかと思っています。そして、最終回まで見てくださった方。みんな大好きです!
高松:80年代テイストのアニメということで、作り方も昔のアニメみたいにできました。シナリオを1話ずつ決定させていく送り書きにしたり、先がわからないまま作っていくところも含めて、現場は大変だったかもしれないけど、作り手としては、すごく楽しくてやりがいのある作品でした。あ〜楽しかった(笑)。
[取材&文・塚越淳一]
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あらすじ
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(C)アストロノオト/アストロノオト製作委員会