ついに「蛇の呼吸」と言えて嬉しかった――『テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』伊黒小芭内役・鈴村健一さんインタビュー|「こんな人なんだ」という新しい発見がたくさんあった【連載第2回】
『鬼滅の刃』待望の新シリーズ「柱稽古編」が、全国フジテレビ系列にて好評放送中!
先日放送された第五話では、炭治郎が蛇柱・伊黒小芭内の稽古を受けることに。括られた隊士たちの間を縫って、伊黒の剣を避けながら自分も攻撃しなくてはいけないという難題に苦戦しますが、連日の稽古の末に少しずつコツをつかんでいき、見事突破します。
続く風柱・不死川実弥の稽古では、炭治郎が実弥と不死川玄弥の間に入るも乱闘になってしまいます。実弥との稽古は中断かつ接近を禁止され、その後岩柱・悲鳴嶼行冥と伊之助たちが滝で稽古を行っている様子を目撃したところでエンディングを迎えました。
アニメイトタイムズでは、キャストインタビュー連載を実施中! 今回は伊黒小芭内役を演じる鈴村健一さんに、「柱稽古編」でついに発した「蛇の呼吸」のシーンで意識したことや、第五話までで印象深かったシーンなどを伺いました。
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「柱稽古編」は、超“エンタメしている”
――「柱稽古編」の台本を読んだり、演じられた印象をお聞かせください。
伊黒小芭内役・鈴村健一さん(以下、鈴村):「これから何かが起きるんだろうな」というような空気感が第一話から展開されていますよね。
お館様の容態だったり、無惨や鳴女が暗躍している様子が描かれていたり、鬼がたくさん集まっている場所があったりと気になる要素ばかりで、「柱稽古編」は超“エンタメしている”なと思います。そして、緊張感が圧縮されているという印象です。
――柱たちがフィーチャーされて、炭治郎たち隊士に稽古をつけていく様子が厳しく、ときにコミカルに描かれながらも、無惨たち(鬼)が暗躍するシリアスさが同居するシリーズに感じます。第五話までで、印象深かったシーンを挙げていただけますか?
鈴村:やっぱり第一話の伊黒と不死川が一緒に戦うシーンですね。声をあてられて嬉しかったです。伊黒の登場がないときもアニメを観ていましたが、毎回ため息が出るほど映像が美しくて、「ここに伊黒が登場するのはいつなんだろう?」と心待ちにしていました。
あと、若い隊士たちと戦っていますが、隊士の1人を事務所(インテンション)の若手の内田修一が演じていて、一緒に戦えたことが僕にとってはとても感慨深かったです。僕自身は温かく見守る気持ちで現場にいましたが、伊黒にそれが乗らないように気を付けました。
――炭治郎がいろいろな柱と稽古をしていく中で、第五話で甘露寺の稽古を受けた後に伊黒の元を訪ねたときの伊黒の形相がすごかったですね。
鈴村:「刀鍛冶の里編」で蜜璃に靴下をあげるシーンがありましたが、実は原作であのエピソードを知ったとき、「ああ、そうなんだ」と思った覚えがあります。「刀鍛冶の里編」でやり取りが描かれていたことで、今回のエピソードも相まって、伊黒のいろいろな面を知ることができて嬉しいです。
――その後、伊黒が炭治郎たちに行った稽古は、太刀筋矯正というハードなものでした。
鈴村:彼は真面目ですよね。「それくらい鬼との戦いは過酷だ」ということだと思います。いつも優しい甘露寺が行う稽古でさえも、すごいストレッチで炭治郎が痛がっていましたし、みんな真面目で厳しいというか。超人的なことをやるためには、高いハードルを越えなくてはいけないんでしょうね。
ただ、ああいうシーンを見て「週刊少年ジャンプ」の王道だなと思いました。僕が子供の頃に見ていたマンガでも敵が強いと主人公たちが修業するんですよね。それを見て僕も空き地で修業した覚えがあるし、今の子供たちも「大変なことがあったときは、修業をして成長しなくてはいけないんだ」とうまく真意が伝わって感じ取ってくれたらいいですね。
「蛇の呼吸」はあえて声を張らず、リアリティを持たせられるように
――今年2月にワールドツアー上映に際して行われた舞台挨拶では「リアクションをとっているところは昔に比べて、人間らしくなった」とおっしゃっていましたが、そのような変化や成長を感じた点は?
鈴村:「最初の印象よりも、いろいろな人と意外と関わるんだな、コミュニケーションがとれるんだな」というところが描かれてきたなと感じました。演じる側の目線から言えば、そういうシーンが出てきてホッとしましたし、嬉しかったです。僕らは台本から役をどう広げるかを拾っていくので、伊黒がどんな人物なのか描かれるシーンが出てくることによって、ヒントをたくさんいただけますし、「こんな人なんだ」と新たに発見している感覚です。
――炭治郎と初めて出会ったときの柱合会議前の裁判のシーンでは松の木の上に寝そべっていましたね。
鈴村:きっと感じ悪かったですよね。そこから考えれば、不死川と一緒に行動したり、しゃべっていたり、任務で背中を任せたりするシーンもあって、「意外と人のこと信用してるじゃん」と思いました。
以前の裁判のシーンでは「信用しない」と言っていましたが、ちゃんと彼の中には誰を認めている、認めていないという線引きがあって、描かれてはいないけれど、何かのきっかけでその判断をしているのではないかなと思います。
――先ほどお話しいただいたように、第一話の冒頭の戦闘シーンはカッコよかったです。
鈴村:ここまでずっと「呼吸」をしないできましたから。やっと「蛇の呼吸」を言えて嬉しかったです。
「こんなふうに戦うんだ」とか「こんなふうに鬼と向き合っているんだ」と以降の話数への展開に期待が膨らむシーンにもなっていたと思うので、ご覧いただいた皆さまにも喜んでもらえたのではないでしょうか。
――伊黒は、「竈門炭治郎 立志編」の柱合会議前の裁判のシーンや、「遊郭編」のラストの天元との会話、「刀鍛冶の里編」の甘露寺の回想シーンなど、これまでスポット的に登場していましたが、「柱稽古編」では戦闘シーンなども描かれています。どんな想いで収録に臨まれたのでしょうか?
鈴村:「柱稽古編」の台本をいただいて、読んでみたら第一話の冒頭のシーンがあったので、嬉しい気持ちになりました。僕の中では「まだ伊黒としてそんなにしゃべっていないんだよな」とずっと引っかかっていたので、今回やっと伊黒がたくさん描かれたことで、今後はやっと胸を張って「『鬼滅の刃』に出ています」と言える、そんな気持ちでした。
――今回、「蛇の呼吸」を発したときに意識されたことは?
鈴村:必殺技的なものなので、声を張るのが一番フィットしやすいし、ましてや戦闘シーンということで、敵もたくさんいて、音楽も確実に盛り上がっているし、SE(効果音)もすごいので、負けないくらいに声を張るのがセオリーだと思います。でも伊黒は、ちゃんと力点を置きながら声を張らない、決めるところは決めつつ、セオリーにはのっとらずにセリフを言わないといけないので、実は結構難しくて。
技を出す前に言葉を発するのは、「見栄を切る」ような、日本の伝統文化的なところがありますが、形骸化させないことも大切なので、声を張らなかったり、見栄を切るところだけに傾倒せず、日常的に繋がっているように発声できるかどうか、みたいなところが伊黒としては大事なんじゃないかと思うので、リアリティを持たせられるように意識してやっています。