『夜のクラゲは泳げない』連載第11回:伊藤美来×高橋李依×富田美憂×島袋美由利|声優陣が第11話までの名シーンを振り返る
オリジナルTVアニメ『夜のクラゲは泳げない』。監督:竹下良平 × 脚本:屋久ユウキ × アニメーション制作:動画工房が贈る青春群像劇。
第9話ラストの思わず言ってしまった花音の言葉。第10話ラストのめいの歌。第11話ラストのキウイの心の底からの叫び。毎話、心にグサッとささるシーンが続いている『ヨルクラ』。第11話はそれ以外にも、まひるがサンフラワードールズのプロジェクトに参加したことで、大きな壁にぶち当たり、それを乗り越えていくシーンも描かれました。クリエイター魂を感じるシーンは必見!
連載第11回は、第3回目ぶりとなる、光月まひる役の伊藤美来さん、山ノ内花音役の高橋李依さん、渡瀬キウイ役の富田美憂さん、高梨・キム・アヌーク・めい役の島袋美由利さんの4人が登場! 第3話から第11話までのことについて、語ってもらいました。
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ボロ泣きで録った11話ラストの叫び
――第3話ぶりとなるので、4人には、放送された第11話も含めて、ここまでで印象的だったシーンを語ってもらおうと思うのですが、名シーンが多すぎるので聞きたいシーンを絞らせていただきました。まず、第9話から、まひると花音の関係に変化がありましたね。
高橋李依さん(以下、高橋):ヨルの絵が、お母さん(雪音)に認められたんですよね。お母さんの話題が出たときの空気の変わり方。そこは演じていてもすごく胸が苦しかったです。
――第9話のラストのシーンですね。まひるに言ってはいけないことまで言ってしまいましたが、花音にとって、雪音がどんな存在なのかということまで考えると、花音の気持ちもわかるというか。
高橋:まひるも母親との関係性に気を使いつつ電話口で触れてくれていたけど、沈黙がいつもより長いとか、続く言葉がないというような触れちゃいけないオーラというのがあって。それがすっごく伝わってきて、苦しかったです。
伊藤美来さん(以下、伊藤):りえりーのお芝居も、急にスッと声色が冷静になる感じがあるんです。そんな花音に、まひるも「ごめん 急に電話で聞く話じゃないよね」みたいな。「話したくなったらでいいから」って感じになっちゃうんです。
――花音は空気を作るのがうまいんですよね。
高橋:まひるが優しいから、言いたくないときには黙っちゃってもいいという、ちょっとした素の姿なのもあるのかな?って思います。気を遣う相手だったら、もう少しうまく言い回せたりすると思うんですけど、二人の関係性があるから、瞬間的に「イヤだな」っていう自分の感情が先に湧いてしまうというか……。心の扉は開いているんだけど、閉めやすいみたいな。まひるとはそんな感覚があった気がします。
――まひると花音の関係性は、最初から丁寧に構築されてきましたからね。
高橋:そうですね。最初にグッと近づいて、一緒にバイクに乗ったり、初詣に行ったり、ギュギュギュっと近づいていって。
伊藤:友達以上、みたいなところまでね。
高橋:もともと花音って学校もそんなに行ってないし、友達もそんなにいない中で芸能活動をやってたんですよね。そこでさらに学校にも行かなくなるという流れがあったから、本当に友達がいない状態で、大ファンだった絵を描いている子と友達になって、そのまま一緒に活動をすることになったんです。だからもう、かけがえのないものになっていたんですよね。だからこそ、0か100か、みたいな感じはあったと思います。一度テリトリーに入っちゃったから、もう100みたいな(笑)。
伊藤:そこから後半、まひるが雪音の仕事を受けるというひとつのことで、スッと離れちゃったりして。それこそ10話、11話では、ほとんど会えていないんです。掛け合えもしなかったんですよ。
高橋:そうなんだよねぇ。
―― 一気に0になっちゃうんですね。でもまひるとしては、あの誘いには断れないですよね。
伊藤:そうですね。もしかしたら自分が成長できるのではないか、何者かになれるのではないかって思うから、その気持ちもわかるなと思いました。
――皆さんはどうでしたか? その仕事を受けちゃダメだよって思う人もいたりするのかなって。
富田美憂さん(以下、富田):う~ん、でもあれは雪音さんの誘いが良かったです。
伊藤:雪音さんが敏腕だったよね!
富田:あの雪音さんのセリフの吸引力って、半端じゃないんですよ。
高橋:確かになぁ。
富田:アフレコでご一緒したときも、これはついて行っちゃうよなという感じだったんです。
伊藤:この人に認められたなんて!という気持ちになりました。
――ここのセリフは、屋久ユウキ先生も、よく考えたと話されていました。
高橋:やっぱりすごいなぁ。そうですよね。だって頑張って修正した絵のところにちゃんと気づいてくれる。クリエイターが一番わかってほしいところをわかってくれるって、作り手側からすると救いなんですよね。
――花音は、デッサンが狂っているところも含めて肯定するんだけど、雪花はそうではないという。一方で、第11話では、自分の絵が好きなのかどうかを問いただすところも、プロデューサーだなぁと思いました。
伊藤:自分の絵のどこが好きなのかわからなくなっちゃって。でもそれって、本当にツラいことですよね。「ヨル先生、あなたはこの絵のどんなところが好きなの?」と聞かれて、言えない。言えないからこそ早口でばばばばばって話しちゃうんだけど、それも全部見透かされてしまうし……。
――クリエイターは見ているのがツラいだろうなと思いました。最終的に時間切れで、この通り描いてくださいなんて、プロの世界では本当に有り得ることなんですけど、キツすぎますよね。
高橋:あそこで、ひとりで帰っているシーンもツラかったなぁ。
伊藤:大きい声を出して、自分に言い聞かせようとするんだけど、やっぱりまひるは、負けず嫌いなところがあるんですよね。それでキウイちゃんと一緒に大宮に行くという話につながっていくんですけど。
――大宮に行くところは、今度はキウイの問題になるんですよね。
富田:ここはもう胸が痛くて痛くて。私がVtuberをやっていたとかではないんですけど、似たような経験をしたことがあるんです。だからこの第11話のキウイに関しては、屋久先生、私の人生覗いていました?って思ってしまいました。そのくらいまったく同じ状況だと思ったんです。あそこのゲーセンのシーンも、あの日は収録をひとりでやらせていただいたんですけど、一人ぼっちという環境が逆に良くて、ボロ泣きでやっていました。
――あの叫びのシーンですよね。
富田:はい。
――そこも胸に刺さりました。キウイがJELEEでやっていることとか、竜ヶ崎ノクスとしてやっていることって、本当にすごいし、キウイはちゃんと前に進んでいるんですよね。それをバカにする資格があるのか!と感情的になってしまいました。
高橋:「自分を好きになれるように」っていうフレーズがすごく好きで。自分を好きになろうとして、諦めなかった結果が竜ヶ崎ノクスだったんですよね。それを否定されるのって、どれだけ苦しいか。こんなにも頑張ってるのに!って思ってしまいました。
――あとキウイって、本当に絵もすごくうまいし何でもできるんですよね。でも結局、ずっと続けている人に負けるというのも、すごく共感できたというか。
富田:そうなんですよ! そうなんです! 最初はできるんだけど、好きという気持ちが大きい人とか、才能がある人に追い抜かれて、ああ自分なんて……となっていく感じとか、共感する人はいるだろうなと思いました。
――あと、キウイは竜ヶ崎ノクスでしたけど、実際に顔を変えるという方向へ行った小春さんと仲良くなるというエピソードも好きでした(第7話)。
富田:そうなんですよ。小春さんとは不思議な友達になりました。
高橋:あそこのアドリブ、楽しかったね。
富田:胸を揉むところね(笑)。
高橋:「芸術じゃん」って(笑)。
富田:あれ、アドリブです。
高橋:しっかり聞こえてたね(笑)。