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『映画アンパンマン』川越淳(監督)&米村正二(脚本)インタビュー

映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』監督・川越淳さん&脚本・米村正二さんインタビュー|「今作でのばいきんまんの姿を見て、元気づけられる人はいるんじゃないかなと思っています」

今まで描かれていなかった、ばいきんまんの意外な一面

ーー作品の中で、特に見てほしいシーンや、注目してほしいポイント(見どころ)をお聞かせください。

米村:今回の作品は、ばいきんまんがメインなので、実はTVシリーズでもあまり描かれてはいないばいきんまんの一面が描かれています。

ばいきんまんがコツコツと地道にメカを作り上げて、アンパンマンに挑むけど、負けてしまう。ドキンちゃんにもきついことを言われながらも、めげずに、またもう一度頑張る、というばいきんまんの姿です。これまでの作品でああいった部分は、それほど表面的に描かれてはいませんでした。

例えば、失敗して落ち込んでいる時、何をやってもうまくいかない時に、ああいったばいきんまんの姿を見て、意外と元気づけられる人はいるんじゃないかなと。やはり見てもらいたいのは、その部分ですね。

ーー監督はいかがですか。

川越:小ネタになりますが、冒頭に、アンパンマンのロゴが地球に変わって、だんだんとカメラがフォーカスして行くんですけど、真ん中に原作者のやなせたかしさんの故郷・四国大陸があるんです。そこから、雲に突入してアンパンマンロードに入るという演出をしています。「なかなか気づかないだろうな」と思いつつ、遊び心として入れてみました。

あとは、ばいきんまんのハイスペックなDIYを見ていただけると嬉しいです。「何もない状況に追い込まれても何とかする」というばいきんまんの能力、前向きな考え方が良いですよね。ヘタレなルルンもそれを見て、だんだんと変わっていきます。一歩踏み出せない子というのは、現実にもたくさんいるじゃないですか。そういう子どもたちが作品を見て、「ばいきんまんは、すごいな!」と思ってもらえたら良いですね。

ーーばいきんまんはハイテクなメカを作るイメージが強かったので、トンカチを叩く、ノコギリで木を切るというアクションが新鮮に感じました。

川越:そうですよね。ただ、もともとはメカの人ですから。あの世界には恐らく木と少量の鉄しかないので、やむを得ず「ウッドだだんだん(ルルンとばいきんまんが協力して生み出した木製のメカ)」を作るという。それには何が必要かというところから考えて、いちから組み上げていくんです。

米村:普通にバイキン城にいたら、恐らくかびるんるんにやらせていますよね。頭は良い人なので、自分が楽をしても事が成しえるなら、そうすると思います。でも、ああいった何もない世界へ行った際には、自分がやらざるを得ない。最初はバイキンUFOもないですし、そういう時は自分でやるということですね(笑)。

ーー今作に登場する砂漠の先に広がる大きな森という世界観は、どのようにイメージして作られていったのでしょうか。

川越:最初のイメージは、巨木の世界です。屋久島じゃないですけど、いろいろな大きな木や古い木がたくさんある世界。もともとルルンは森の妖精なので、そういったイメージで作っていきました。

ーー森の中で、ばいきんまんとルルンが木に登るために利用する葉っぱエレベーターも素敵でした。あのシーンでもトライ&エラーが描かれていていましたよね。

川越:まぁ、失敗の連続だったよね(笑)。

米村:(笑)。あれも映像を見ながら「こういうふうに上下に動かすことができるんだ」と。実際に動いているところを見て、改めて納得しました。

映画では「ストーリーはシンプルに、展開は面白く」を意識

ーー映画とアニメでは時間も作風も違ってくると思います。子どもたちに映画(長時間作品)を観てもらうために、こだわっていることや意識していることはありますか。

米村:昔、TVアニメシリーズの監督・永丘昭典さんに言われたことなんですけど、「ストーリーはシンプルに、展開は面白く」。だから、今回の作品では、子どもたちがばいきんまんと同じ視点で絵本の世界に入っていきますが、ストーリー的にはシンプルに進んでいって、そのシーンごとに展開を面白くしていくということは、大切にしています。

極端な例でいうと、絵本の世界とアンパンマンワールドを並行で描いて、カットバック(複数のシーンを交互に入れ込む描写方法)するとか、そういうことはやらない。ひとつの世界でお話がずっと進んでいって、一緒に追っていけるという作りにしています。

川越:その通りなんですけど、そのせいでアンパンマンの登場が遅くなって……。30分経ってから、やっとアンパンマンが登場するんですよね。

米村:そうですね。オープニングには出ていますけど(笑)。でもセリフはないし、アンパンマン役の戸田(恵子)さんが喋ったのは30分後でした。「それでいいのか?」という話も出てはいたんですけど、最終的には「このままで大丈夫です」と。

ーーその分、アンパンマンの登場シーンにはグッと惹きつけられました。

米村:そうでしたね。あれは川越さんの演出も相まって、良いシーンになっていました。

川越:シナリオに良いセリフが書いてあると、コンテで割っていて「こうではない。こうでもない」と何度も試行錯誤して、たどり着くことがあります。

米村:ありがとうございます。

川越:単純にカットで割っちゃう人もいますけど、セリフの時に顔をアップにするとか。そういうふうに単純に割らないで、感情の流れがあるようなコンテバックを考えています。良いセリフを疎かにはできないので、その辺はちょっと大変ですね。なので、遅れて迷惑をかけました(笑)。

一同:(笑)。

ーーあのアンパンマンのセリフは、すぐにひらめいたんですか。

米村:ひねり出したという訳ではなく、自然に出てきた気がします。

ーー書いている時は、アンパンマンのお気持ちになられているんですか?

米村:多分そうですね。書く時はそうなっていると思います。

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