『夜のクラゲは泳げない』連載12回(最終回):伊藤美来×高橋李依×富田美憂×島袋美由利|「つまりはまだまだ『ヨルクラ』は終わらないということです!」
まだ全然満足していない! まだまだ足りないっていう気持ちです
――EDで手を振っている演出も泣きました。OPアニメーションと同じ構図で同じキャラたちが手を振っている。そして4人が走る姿も同じという。OP/EDアニメーションも監督が手掛けていたからこその仕掛けだったなと思いました。最終話だけ「1日は25時間。」をJELEEが歌っているんですよね。
高橋:ホントに嬉しかったです。「1日は25時間。」って、なんていい曲なんだと思っていて。アフレコ前に家で見るチェック映像にちょこちょこ入っていたんです。それを聴きながら好きだな〜と思っていたら、最後にカバーで歌っていいということで、すごく気合が入りました。嬉しくて楽しくて。
――「人間の体内時計って、本当は1日25時間なんだって」というED前の会話で、この曲の伏線回収までするという。本当にニクい演出の連続だなと思いました。
伊藤:その会話をしていた最後の、JELEEで壁画を描いているシーン。スマホで動画を撮りながらわちゃわちゃしているところは、すごく好きなシーンでした!
高橋:そこ、いいよね。
富田:私もあそこ、すごく大好き!
伊藤:新しいクラゲをみんなで描いているんですけど、私たちも張り詰めたシーンを全部録り終わって、「もう、やっちゃう?」みたいな気持ちでワクワクしながら収録した記憶があるんです(笑)。急に蟻を映していたり、キウイちゃんが「ヤンヤンつけボー」を口に入れられたりしてて。
富田:キウイがスマホで動画を撮って、みんながお菓子を食べてて、それをどうぞってされて、「私のお菓子」って言うんですけど、こういう状況だったらかわいいなっていうのを詰め込んだんです。
――そうなんですね。
富田:テストのときに、すでに花音に、口の中にめちゃめちゃお菓子を詰め込まれていたらかわいいなと思ってて、もごもごしながら言ってみたんですね。そしたら「キウイはまだ食べてないと思います」と返ってきたんですけど、私は「詰め込まれててほしいんです! いいですか?」と聞いてみたら「いいですよ」と言ってくださって。だからあそこは、みんなでお菓子を食べているんです(笑)。キウイだけ食べていないのは切なかったから、私も食べたいなって思ってしまいました。
伊藤:最後さ、使われていなかったかもしれないけど、ラーメンの話もしてたよね?
高橋:帰り何を食べに行く?って流れだったよね。
伊藤:「ラーメン! 全部頼んじゃおうよ!」とか言って大爆笑して終わった気がする。だから泣かずに収録は終わったんです。
高橋:アドリブもちょこちょこ入れさせてもらってたね。ラーメンは使われていないかもしれないけど(笑)。
――最終的に壁画のクラゲが、JELEEバージョンになっていましたね。
伊藤:キラッキラになって、作者の名前もJELEEになっていました。
――この壁画もTシャツになればいいですが。
高橋:『ヨルクラ』グッズ、めちゃめちゃ欲しいです!
――あとは、ライブのエンドクレジットで「早川花音」と本名が出てきたのも驚きました。雪音の粋な計らいというか。
高橋:ずっと山ノ内と名乗っていたけど、本名は早川ですからね。自分で名乗る苗字に、花音の心境とかも全部詰まっていたんだなって思うと、本当にこの作品は改めて丁寧に練られているよなぁと思います。
――あそこで泣くところは、音がないという。
高橋:そうですね。特に収録でも私の声は入れなかったです。
――まひるも最終話では、早川雪音と肩を並べて話していて、正真正銘のヨル先生になっていたなと感じました。
伊藤:この経験を経て、大人になって、成長もした感じはありました。かなりしんどいことも言われましたけど、やらないと成長できないですから。ツラくてもやらなければいけない瞬間は、あるんだと思います。
――では最後に、この作品を終えての率直な気持ちを教えてください。
高橋:終わりたくないです!
伊藤:続いてくれー。
富田:でも、本当に1クールで終わっちゃうのはもったいない。
伊藤:まだまだ書けます(笑)。
島袋:本当にもっとやりたいです。こういう最後の質問で、この作品がどうだったかを言葉にするのが惜しくなってしまうというか。だって、言ったら終わっちゃうじゃないですか。
高橋:じゃあ、やめちゃう?
島袋:大事に大事に、秘めておきたいものが大き過ぎて。こういうのなんて言ったらいいんでしょうね。
高橋:でもそうだよね。振り返って、こことこことここが良かったって言ったらおしまいになっちゃう気がする。クリエイターの作業って一生じゃないですか。一生満足することってないから、1クール、皆さんに見ていただいて、良いものを作れたとは思うけど、まだ全然満足していない! まだまだ足りないっていう気持ちです。
――まだこの先に行きたいと。
高橋:こちらの気持ちとしては(笑)。
伊藤:我々の気持ちはそうです。クリエイターさんたちは、大変な思いをしながらあのクオリティの絵を描いてくださっていたと聞いていますが。
高橋:そのくらいやらないと、やっぱり届かないですし、本当にこの全12話に全力を懸けてくださっていたのはわかっているんです。ですが、まだ終わりたくないんです。
富田:私もやりたいし、先ほど、この作品を通して気づけたところの話もしましたが、キウイには共感できるところがいっぱいあって。昔のことを思い出したくないなって思ったんですけど、この子を演じる上では、思い出さなくてはいけなくて。特に第11話の収録前は、台本をいただいてから1週間、ずっと胃が痛かったんです。
――「似たような経験をしたことがある」と、前回話していましたね。
富田:この気持ちを出さなければいけないんだという気持ちだったんですよね。でも、収録を終えてから、自分の消したかった過去も、この子を演じるためにあったんだと思えたんです。ある種私は、この作品とキウイに救われた気持ちになったので、本当に携われて良かったなという気持ちと、まだまだ続きがやりたいという気持ちです(笑)。
伊藤:私もアフレコを終えて思ったのは、JELEEのみんなは仲良くなったり喧嘩をしたりしながら、どんどん大きくもなっていくんですけど、それに声を当てている私たちも、どんどんどんどんお互いのことを知っていくことができたんですよね。
みんながマイク前に立っている姿を後ろで見ているだけで、この人たち、ホントにすごいなと思っていたんです。そうやって、みんながリスペクトし合える現場に、このメンバーでいられたことが、本当に素晴らしい時間だったと思います。
――「明日も明後日も、ずーっと一緒にいればいいの」ってセリフもありましたけど、ずっと一緒にいてほしいですね。
伊藤:そうです! つまりはまだまだ『ヨルクラ』は終わらないということです!
[取材&文・塚越淳一]
TVアニメ『夜のクラゲは泳げない』作品情報
あらすじ
明日話すべき話題も、今週買うべき洋服も、
全部スマホ(ルビ:トレンド)が教えてくれる。
何者かになってみたい——そんな願いを持つ間もないほどこの世界は忙しい。
活動休止中のイラストレーター“海月ヨル”
歌で見返したい元・アイドル“橘ののか”
自称・最強Vtuber“竜ヶ崎ノクス”
推しを支えたい謎の作曲家“木村ちゃん”
世界から少しだけはみ出した少女たちは匿名アーティスト“JELEE”を結成する。
自分じゃない“私たち”なら——輝けるかもしれない。
キャスト
(C)JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会