あんずちゃんは猫である――『化け猫あんずちゃん』久野遥子&山下敦弘監督インタビュー|“寺の化け猫”という設定に込められた作品の裏テーマも判明!?
あんずちゃんは猫である
ーー本作は原作を再現しつつ、オリジナルの要素も入れて、ひとつのアニメ映画になっています。本作のテーマや作品を通して伝えたいものは意識されましたか?
山下:あまりテーマやメッセージを決めないようにしているんですが、ずっと作りながら思っていたのは「あんずちゃんは猫なんだよな」ということです。化け猫ですし、中身はおっさんのようなものなんですけど、猫なんです。
脚本を考えているなかで、「あんずは何だかずっとそばにいる」という感覚に辿り着きました。かりんの面倒を見るのではなく、ただそばにいる。それもまた猫っぽいですよね。ずっと、猫と人間の関係性を表現していたんだなと。
久野:かりんにとっての家族は、悲しい思い出も含めて、良い意味でも悪い意味でも密接なものなんです。だからこそ、家族とは微妙に違う関わりに救われる、何なら救われているかどうかも分からない淡い関係性になっていく。かりんとあんずの不思議な関係は、この作品においてもひとつのテーマ的なものだったと思います。
ーーあんずちゃんがおしょーさんや、子どもたち、かりんちゃんと共にいることで、結果的にみんなのケアをしているように見えました。
山下:実は、裏テーマは人助けなんです。
久野:原作の漫画はそうですね。
ーー人助けですか。
山下:あんずちゃんの使命というか。要するに、寺の化け猫であるあんずちゃんの使命は人助けなんだということらしいです。原作を読んでいても気づかないと思いますけど(笑)。
久野:「助けてたっけ……?」という(笑)。ただ、1話に1回良いことをしていますから。
山下:ラストの少し不思議なシーンは、そういった部分を踏まえています。でも、本人が自覚しているかと言うと……わかりません。
久野:なぜなら、あんずちゃんは猫なので(笑)。
ーー綺麗なオチがつきました……! では、公開を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。
山下:『化け猫あんずちゃん』自体がいましろ先生作品の中でも特殊で、「ボンボン」で連載されていたこともあり、子どもたちが読むものとして描かれています。いましろ先生も今までにないアプローチをしたと思うんですが、僕としても同じ感覚がありました。
アニメーションになるということも、今回のような題材を扱うことも、オリジナルキャラクターを追加することも。これまでやったことがあるようでなかった。ストレートなテーマで、普段できないことを素直にやれた気がします。今作で言うと「お母さんに会いたいという子どもの気持ち」とか。
子供向け、大人向けという区分は置いておいて、良い夏休み映画になったなと。今までに味わったことのない感触でした。なのでシンプルに観て欲しいです。僕の作品を応援してくれる方、久野さんが好きな方、そしていましろ先生のことが好きな方、アニメが好きな方、どんな人が観ても楽しめるような作品になっていると思います!
久野:特殊な方法で作られた作品なので、まずはお芝居の部分や画作りを面白がっていただければと。シンプルに夏休み映画として楽しく観て欲しいです。私自身も初めて観るお客さんの反応を楽しみにしていますので、ぜひ観にきてください!
[インタビュー/タイラ 撮影/MoA 編集/小川いなり]
『化け猫あんずちゃん』作品情報
あらすじ
だが、おかしなことに10年・20年経っても、死ななかった。30年たった頃、どうした加減なのかいつしか人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」になっていた。
移動手段は原付。お仕事は按摩のアルバイト。現在37歳。 そんなあんずちゃんの元へ、親子ゲンカの末ずっと行方知れずだった和尚さんの息子が11歳の娘「かりん」を連れて帰ってくる。しかしまた和尚とケンカし、彼女を置いて去ってしまう。
大人の前ではいつもとっても“いい子”のかりんちゃん。 お世話を頼まれたあんずちゃんはしぶしぶ面倒をみるのだが、どうも一筋縄ではいかない気配が……。
キャスト
(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会