夏アニメ『下の階には澪がいる』日本語吹き替え版:坂本真綾さん(如月 澪役)×河本啓佑さん(杉浦 陽役)インタビュー|女子大生役に“何で私なんだろう”。年上ヒロインたちとの純愛劇が始まる――
原作は韓国のwebtoon『イドゥナ』。中国ではbilibiliにてアニメが配信され、6千万再生を記録した青春ラブストーリーの日本語吹き替え版『下の階には澪がいる』が、フジテレビ「B8station」にて2024年7月3日から放送される。
憧れの先輩・桃井真珠を追いかけて青葉大へ入学した杉浦 陽。真珠先輩と過ごす楽しい大学生活を思い描く陽だったが、ある日、下宿先の前で、元人気アイドル・如月澪と出会う――ー。
TVアニメ放送を記念し、如月 澪役の坂本真綾さんと杉浦 陽役の河本啓佑さんへ、作品について聞いた。
それぞれのキャラクターの演じ方。アニメ吹き替えへのアプローチを語る
――作品の印象とオファーが届いたときの率直な感想をお聞かせください。
杉浦 陽役 河本啓佑さん(以下、河本):真っ直ぐなラブコメというか、リアルな大学生の恋愛を描いているというところで、日本では最近見かけないタイプの作品だと思いました。
僕は、(同じ原作の)韓流ドラマ版『イ・ドゥナ!』で同じ立ち位置の役をやらせていただいていたので、事務所からアニメがあるっぽいよという話を聞いたときは「やりたいです」と伝えていたんです。そうしたら、ありがたいことにお話があったので嬉しかったです。
ただ同時に、どうしよう……という気持ちもありました。同じ役柄ではあるけど、アニメの杉浦 陽となるので演じ方も変わるでしょうから、どう演じようかなと考えるようになりました。
――坂本さんはいかがですか?
如月 澪役 坂本真綾さん(以下、坂本):何で私なんだろう……と(笑)。イヤ、本当にありがたいことで、こんなにかわいい、現役女子大生の役なんて久しぶりだったんです。海外ドラマの吹き替えとかではあるけど、アニメならばもっと若い声優さんがやられるイメージだったので、正直驚きました。
まだドラマのことや原作のことも知らないときに、うっすら「元アイドルの女の子が大学にいた!っていう話です」とあらすじを聞いて、「あぁ、30代くらいになった元アイドルが、学び直しをする話なんだなぁ」と勝手に想像していたら、陽のひとつ上の先輩で、え――!って衝撃を受けたことを覚えています(笑)。
そこから実際に映像を見たり、原作を読んで見ると、日本のアニメではあまり見ないタイプのリアルなラブストーリーで、お酒を飲んでリバースしちゃうとか、キスシーンが割と濃厚とか、アニメは間が多くBGMが流れる中で見せる表情が長めとか、すごく大人っぽい作りになっていると思いました。
――お二人が演じているキャラクターについてと、演じてみての感想をお聞かせください。杉浦 陽は、先輩の真珠(CV.大久保瑠美)を追いかけて、同じ青葉大へ入学した、純粋で優しく、誰からも好かれる男性、ということになります。
河本:ドラマを忘れて原作と向き合ったとき、すごく陽がカッコよく見えたんです。かわいい女性たちとも普通に会話ができて、すごくコミュ力が高い。普通、二十歳でこんな振る舞いはできないぞ!と、優しさだけでないカッコよさを持っていると感じたんです。
でも実際に収録に臨んでみると、「そんなにカッコよくなくていいです」と言われまして……(笑)。女性と話すのが慣れていない感じを出すことになりました。色っぽいシーンも「少し大人っぽいです」というディレクションがあったりしたので、何とか、自分の二十歳くらいを思い出しながら演じています。
――如月 澪は、人気アイドルグループの元メンバーで、陽と同じ下宿先の1階で暮らしている女性になります。
坂本:もともと人気の絶頂にあったアイドルなんですけど、突然仕事を辞めてしまった。すごくキラキラして華やかな世界にいたはずの彼女が、陽くんと出会ったときは、ライターの火を点けて弄んでいたり、いきなり凄んできたり、(アイドルの)イメージとのギャップに驚くようなところがあるんです。きっと何かがあって、人間不信気味になったり、自分を素直に見せることに抵抗がある状態だったと思うんですけど、それがミステリアスに見えるところでもあったと思います。
そうやってすごくいろんな表情を見せてくれるので、「澪はこういう子です」とひと言では表現できないところがあるんですね。演じている私自身も、同じ女性として、何でこんなことを言ったんだろう、何でこんな行動ができちゃうんだろうとわからないところがある。
でもきっと、澪も自分の行動を全部説明できるわけではないと思うので、そういう意味で、誰にも掴ませない本心があるというところが、見ている側が引き込まれてしまう要素なのかなと思っています。
――実際に演じてみていかがでしたか?
坂本:原作漫画を読んだときよりも、アニメは表情がマイルドに感じて、かわいらしさが強くなっていると思いました。なので微妙なさじ加減で小悪魔っぽさ?みたいなところを探るのが難しかったです。ところどころでデフォルメした澪になったりするので、いろいろな澪の表情を私自身も楽しんで収録をしていた気がします。
――中国語の吹き替え、という面での難しさもありましたか?
河本:それは、すごく難しかったです。吹き替えの場合、原音のニュアンスや息遣いとなるべく同じようにやりたいんですけど、中国語の感じでやると、全部強く聞こえてしまうので、それを日本語の感じに合わせていくのは難しいなと思いました。
ただ、映像はあるので、それを見た感じで、原音ではブレスが入っているけど、日本語ではつなげて言ってもいいんじゃないかと思うところでは、相談させていただいたりしました。
坂本:今回は実写でなくアニメの吹き替えなので、見ている人に違和感がなければある程度自由に、原音をトレースするだけではなく日本語のニュアンスを大事に演じてもいいのかなと勝手に解釈していました。
ただ、陽くんは、テンションが高くなったり、原音だと語気が強く感じるところが確かにあったので、日本人の感覚で、マイルドな感じに調整するのが必要な役なのかなと思いました。逆に澪の原音は、すごく甘くなかったですか?
河本:甘かったです。すごくかわいい声で。
坂本:澪の声優さん、ものすごくいい声なんですよ。でも中国語の特性もあるのか、語尾が全部伸びる印象があって。それに引っ張られすぎちゃうと、甘える感じが強くなってしまって、もしかしたら同性から嫌われるような媚びたしゃべり方になっちゃうのかな?と思ったので、その甘さをどのくらい活かして、かつ芯がある感じにすればいいかは少し意識しました。役名も日本人になっているし、日本の感覚に合わせることで、視聴者さんには伝わりやすいのかなと。
――今回、日本版の設定になっているのは面白いところだと思ったのですが、演じていて、何かカルチャーの違いを感じたところはありましたか?
河本:お酒を飲むシーンがすごく多かったのは、文化の違いみたいなところになるのかな? 元は韓国の原作なので、お酒に強いのかなと。
坂本:これは私の感覚が違うのかもしれないんですけど、すごくお勉強をちゃんとするんですよ。試験のとき、みんなちゃんと勉強するんです(笑)。
――確かに、日本の大学だと、大学に入ったら遊ぶ、みたいなイメージがありますよね(笑)。
坂本:もちろん、ちゃんと勉強している人はいますよ。優秀な方は勉強していると思うんですけど、私はどれだけ上手にサボるか、だったんで(笑)。でも作品内では、みんなすごく真面目に勉強をしている。受験社会が日本より大変なイメージもあったから、きっと大学に入っても大変なんだろうなぁと思いながら、やっていました。
河本:確かに学生ラブコメで、勉強しなきゃ!っていうのが定期的に入ってくる作品は少ないかも。
坂本:学生だから勉強が大事なのは当たり前なんですけどね。でも、ちょっと自分の感覚と違っていたので面白かったです。
あと韓国ドラマとかでよく目にするんですけど、年上の人には基本的に敬語っていうのが、韓国の文化だと思うんですよね。澪は陽くんの1個上なので、最初はずっと敬語で、先輩!っていう感じだったんですけど、ある時から「澪」と呼ぶんです。それは日本人の感覚よりももっと、かなり距離が近づいた証という表現なのかなと思いました。