この記事をかいた人
- タイラ
- 99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えない間「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行いライターに。
日夜多くのコンテンツが生み出されていく昨今。異なる界隈で同時多発的に様々なコンテンツ、ミームがバズり、トレンドは常に変わり続けています。
「そんな世の中で、今流行っているモノに敏感でありたい」——
本企画は、現在インターネット等を中心にブームになっている、アニメ・漫画・ゲームなどのワード、コンテンツを調査し、理解することによってみんなで流行に乗っかっちゃおうという試みです!
今回取り扱うコンテンツは、先日公開されたばかりのアニメ映画『ルックバック』です。
本作は、『チェンソーマン』『ファイアパンチ』などでお馴染みの人気漫画家・藤本タツキ先生による短編作品を原作としたアニメーション映画。原作が公開された際にも、SNSを中心に話題となった本作ですが、6月28日に映画が公開されるやいなや、各方面で話題に!
本稿では、本作のどのような点が注目されているのか、描かれているテーマは何か、流行の要因をチェックしていきます!
藤本先生は秋田県出身の漫画家。後に短編集として刊行される連載前の読切作品からその才能を発揮し、注目を浴びていました。「ジャンプ+」編集者・林士平氏と『ファイアパンチ』を同媒体にて連載を開始すると、斬新な設定や、衝撃的な展開・ストーリーが読者の心を掴み、話題の作品となりました。
『ファイアパンチ』の連載が終了すると「週刊少年ジャンプ」に活動の場を移し、原作コミックス・TVアニメ共にヒットし、最新映画も公開予定となっている『チェンソーマン』の連載が開始。本作も、主人公・デンジをはじめとする個性的なキャラクターや、少年漫画らしからぬダークさが魅力的です。
『チェンソーマン』第1部の連載が終了すると、『ルックバック』『さよなら絵梨』『フツーに聞いてくれ(原作担当)』、短編集『17‐21』『22‐26』など、短編作品を多く発表。連載作品とはまた違った作家性が話題に。
現在は、『チェンソーマン』第2部が連載中となっており、今後の活躍も注目される作家となっています。
2024年6月28日(金)より公開されたアニメ映画『ルックバック』。藤本先生による短編作品を原作とした本作は、上映時間58分、チケット料金が一般1700円と現在では珍しい体系になっており、本作のストーリーも相まって公開前から注目されていました。
ふたりの主人公である藤野・京本を演じるのは気鋭の俳優である河合優実さん、吉田美月喜さんが担当。アニメ制作はスタジオドリアンが行い、ドリアンの代表取締役を務める天才アニメーター・押山清高さん(『電脳コイル』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『風立ちぬ』などに参加)が、監督・脚本・キャラクターデザインなどを担当しています。
原作のテーマ、画のタッチを踏襲しつつ、音楽やアニメオリジナルの描写でより作品世界に没入できる作品となっています。
学生新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられる...。
二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思い。しかしある日、すべてを打ち砕く出来事が...。胸を突き刺す、圧巻の青春物語が始まる。
まず、本作の注目すべき点はその原作の再現度。元が短編ということもあり、原作のエピソードや出来事、細かな描写を余す所なく映像化されています。それは、テーマやメッセージ性も同じです。
丁寧に原作を拾いつつも、コマとコマの間にあったであろうキャラクターの動きであったり、漫画では描かれていなかったカメラ視点での描写など映像媒体ならではの表現がされています。また、本作オリジナルのセリフやシーンが挿入されており、原作のストーリーが細かく補正され、より受け取り手が感じるものが増えていた印象です。
個人的には、引きこもり・不登校児童である京本が「自分の好きでたまらないもの」のために勇気を持って家から飛び出すシーンなどは、原作でたった数コマですが(それでもかなり良いシーン)、映像になったことでより彼女の外に出る動機・覚悟・衝動が伝わってきます。
原作を最大限にリスペクトしながらも、作品のテーマ性を増幅させる映像化になっているため、原作ファンはもちろん映画から鑑賞した方にも刺さる作品になっていると思います。
上記の原作再現度にも関連しますが、本作のキャラクターデザインや背景美術等も話題になっているひとつのトピックスです。
キャラクターデザインはかなり原作の画に近く、藤本先生のキャラクターがそのまま動いているという感想もちらほら。近年で言うと『THE FIRST SLAM DUNK』でも同じような声が上がっていましたね。画から映像になっても違和感なく、藤野や京本が動き、生きているのを感じることができます。
背景美術もこだわりが感じられ、のどかな山形の風景や建物が写実的に描かれていたり、キャラクターの部屋にある漫画本やポスターに至るまで、世界観を醸成する一助となっています。また、本作は音楽も特徴的。藤本先生が長年ファンだったというharuka nakamuraさんによる情緒的な楽曲たちが作品を彩ります。
現在、劇場等で発売中の映画パンフレットには、藤本先生・押山監督の対談インタビューや、主演のおふたりのインタビューはもちろん、美術監督のさましまきよしさん、haruka nakamuraさんらをはじめとする制作スタッフの方々のインタビュー・コメントも掲載されており、読み応え満載。
創作をひとつのテーマとした本作らしい貴重なパンフレットになっているので、映画とあわせてチェックするとより作品を理解できるでしょう!
本作は、漫画・絵を描く、という共通項をもつふたりの少女の物語になっているので、創作に纏わる様々な出来事や感情がたっぷりと描かれています。『ルックバック』というタイトルひとつを取っても、いろんな解釈の仕方ができますよね。
自分や作品を振り返ることでもあり、誰かの背中を見て、追いかけることによって創作やものづくりが始まるとも言える。その中で、幸せ、挫折、悲劇を経験しそれでも何かを作って、生み出していくしかないのかもしれません。
また、本作は直接創作に関わっていなくとも十分に共感し、心が揺さぶられる物語です。作中で描かれる初期衝動や、作品やコンテンツ・趣味への愛情、何かに打ち込んできた経験など、多くの人が持っている思いを内包しています。
鑑賞した人全員が、何かしらの自分の体験や喜び、苦い経験を刺激され感想を吐露したり、誰かと共有したくなってしまう作品なのではないでしょうか?
公開館数は少ないながら、多くの人を魅了している『ルックバック』。何かを作っている人も、何かを楽しんでいる人も、そうでない人も、何かしらの感情が呼び起こされるような作品になっていますので、ぜひ劇場で体験してみてください!
原作も大変素晴らしい作品なので、どちらもあわせてチェックするのがオススメです! ちなみに、本作と同日に公開された『アンパンマン』の最新映画もかなりの評判なのでチェックしたいと思っています。トレンドマスターへの道はまだまだ、険しく遠いっぽいです……!
99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えなかったので、「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行い、ライターに舵をきりました。面白いコンテンツを発掘して、壁に向かってプレゼンするか記事にしています。アニメ、お笑い、音楽、格闘ゲーム、読書など余暇を楽しませてくれるエンタメや可愛い女の子の絵が好きです。なんでもやります!