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『ウルトラマンアーク』メイン監督・辻本貴則インタビュー

『ウルトラマンアーク』メイン監督・辻本貴則さんインタビュー|偽りなきウルトラマン愛で紡ぐ<夢の架け橋>。第4話以降は監督陣も想像力を解き放つ!?

第1話の“3分間ワンカット”は如何にして生まれたのか

ーーストーリーの構成として、第1話がウルトラマン出現から3か月後、第3話が初変身回になっている点も新鮮でした。

辻本:「第1話でウルトラマンと出会って、変身のやり方を覚えて……」という初回のフォーマットは、これまでも散々見てきたじゃないですか。シリーズを毎年観てくださっている方たちにしてみれば、また同じ流れを見ることになってしまいます。

子供の想像力から生まれたウルトラマンの物語なので、そこは丁寧に描きたい。一方で、普通に第1話から順にやっていくのは面白みがない。そこで「初変身の描写を後ろに回そう」と考えました。脚本打ち合わせでよく言っていたのは、海外ドラマのあるエピソードのなかで、なんの説明もなく回想だけの回が始まる感じ……今回はあれをやりたいんだと。

ーー海外作品ではよくありますよね。1クール目の終盤でいきなり回想が始まるとか。

辻本:そうそう!「ちょっとくらい説明してよ」と(笑)。第3話でも「3か月前」のような説明のテロップは、敢えて入れていません。変身のチュートリアルやユウマの過去は全て第3話に回して、第1話ではウルトラマンアークになってから3か月後を描く。そこから物語を始めることで、ウルトラマンの活躍にも勢いが出ると思ったんです。

ーー特撮周りのお話も伺わせてください。第1話でシュウがウルトラマンアークを見上げて、スマホの画面越しに戦闘が始まる流れには度肝を抜かれました。

辻本:あのシーンは、約3分間のアクションシーンを擬似的ワンカットで演出しています。できれば事前情報なしで観ている方が、「あっ、これワンカットでいきそう」と途中で気付くようなシーンにしたかったんですよ。

ーーまさに同じことを思いました。怪獣と対峙する間などに良い意味で違和感があったので、「もしかしてワンカット? いやまさか……」みたいな。

辻本:良かった! そういう予想外のワクワクを体験してほしいと思っていたんです。実は『ウルトラマンタイガ』の頃から、スマホのメモ帳に、特撮のアイディアをずっと溜めこんでいまして。その中に「3分間の戦闘をワンカットでやり切る」というものがありました。

ーーアイデア自体は、かなり前からあったんですね。

辻本:シリーズが続いていく中で、長めのワンカット演出が流行った時期がありましたよね。ただ、“3分間ワンカット”は見たことがないと思って、密かにチャレンジしようと目論んでいたんですが、「予算と手間がものすごくかかるから、各話監督の立場では実現できない」と分かったんです。一方で、「メイン監督なら許してもらえるかも」と。加えて、田口監督からもメイン監督としての経験談として「第1話は頑張らないとまずい」と聞かされていたので……(笑)。

ーー(笑)。確かに『ウルトラマンブレーザー』の第1話は、かなり挑戦的な内容でした。

辻本:そうなんですよ。第1話で視聴を切られることが多いらしく、田口さんが「第1話はとにかく頑張らないと……」と呪われたようにずっと言ってくるんです(笑)。

ーー呪われたように(笑)。

辻本:それを自分も聞かされていたから、「“1話切り”だけは避けなきゃ」と思って、“3分間ワンカット”をやるしかないと。岡本プロデューサーたちとに交渉しつつ、具体的に「3分ってどれくらいあるんだろう?」ということを調べていきました。例えば、『ウルトラマンデッカー』第1話の戦闘シーンでいうと、初回の怪獣を倒すタイミングはギリギリ3分に届かないくらいなんです。『ウルトラマンデッカー』はさらにその後、もうひと盛り上がりがあるんですが……3分でもアクションシーンの尺としては満足感が得られるんだな、と参考になりました。

あとは、インナースペースをどうするか。インナースペースに入った瞬間、いくら頑張ってもワンカット演出には見えなくなる。『ウルトラマンブレーザー』で一度廃止しているから、その流れを僕の方で断ち切りたくないという思いもあって。メイン監督としては、今回もインナースペースは無しにする方針で進めたいと話しました。、色々な方に協力してもらいながら、なんとか“3分間ワンカット演出”が実現した感じですね。

第4話以降は監督陣の“想像力”が解き放たれる

ーー最後に、第4話以降の見どころについてもお聞かせいただけますでしょうか。

辻本:第4話以降は僕以外の監督も加わって、単発回が増えていきます。それぞれの監督の味と各話それぞれの面白さに注目していただきたいですね。岡本プロデューサーが「単発回で名作を作りたい」と言っていて、それは僕も賛同するところなので、異質なエピソードも出てくると思います。更に言えば、今後僕が担当する回にも、トリッキーなものがありますから。

『ウルトラマンアーク』は、監督陣の想像力が解き放たれている作品なのです!……これ、他のインタビューでも言えばよかった(笑)。

一同:(笑)。

辻本:とにかく、監督陣や脚本家チームの発想力が解き放たれているのは間違いないです。解き放たれ過ぎている回もある……かもしれません。

ーー今後の放送が益々楽しみになりました。

辻本:ありがとうございます! 観ていただければ、「これか!」とすぐに分かりますよ。

ーーこれまで各話監督として、様々な挑戦をされてきた辻本さんだからこそ、尚更グッとくるものがあるなと。

辻本:当時の僕もそうですが、「この回で爪痕を残してやる!」というギラギラした感じは、今回の各話監督陣も持っています。その勢いをぜひ体感してください。僕は僕でメイン監督として、縦軸の物語をしっかりやる。他の監督は単発回の楽しいエピソードを紡いでくれているので、その融合を楽しんでいただけたらと思います。

[インタビュー・撮影/小川いなり]

『ウルトラマンアーク』作品情報

ウルトラマンアーク

あらすじ

とある町、星元市。
市内の獅子尾山には、異彩を放つ巨大な物体がそびえ立っている。「モノホーン」と名付けられたそれは、実は、16年前の事件当時から突き刺さったままの「怪獣の角」だった。

世界各地で怪獣が同時に出現した「K-DAY」と呼ばれるその事件以降、怪獣災害が日常化し、日本では地球防衛隊が武力で怪獣への対処を行う一方、怪獣防災科学調査所・通称「SKIP(スキップ/Scientific Kaiju Investigation and Prevention center)」は、怪獣災害の発生・甚大化を防ぐため、地域に密着して科学調査や避難誘導を行っている。

この「SKIP」が今も調査を続けている「モノホーン」は、「K-DAY」で出現した宇宙獣・モノゲロスの角。

獅子尾山で両親とキャンプ中にモノゲロスの襲来に出くわした当時7歳だった「ユウマ」は、奇跡的に無傷で生還したのを機に怪獣生物学研究の道に進む。辛い過去を持ちながら夢見る「想像の力」をなくさずに成長を遂げたユウマは新人調査員として「SKIP」への入所が決まり、星元市分所へと配属された。

だがそんな矢先、星元市に大規模な怪獣災害が発生。目の前にいる絶体絶命の人たちを「守りたい!」その強くまっすぐな想いが心の底から湧き出した瞬間、「ユウマ」の脳裏に幼い頃に見た光の使者「ルティオン」が語りかける。

「私は君であり、君は私だ…想像力を解き放て!

手の中に現れた神秘の光がユウマの身体を包み込むと、解き放たれた想像の力が光と人とをひとつに結び合わせ、未来を守る光の巨人「ウルトラマンアーク」へと変身! 大切な仲間とともに、ユウマが、そしてウルトラマンアークが、絶やさぬ夢を追いかけていま走り始める!

キャスト

飛世ユウマ:戸塚有輝
ユピー:広瀬裕也(声)
石堂シュウ:金田昇
夏目リン:水谷果穂
伴ヒロシ:西興一朗
飛世テツヤ、ウルトラマンアークの声、ルティオンの声:萩原聖人
スイ―ド:佐藤江梨子

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京
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