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『異世界失格』アネット役・大久保瑠美インタビュー【連載第2回】

センセーにハマるアネットに「私もすごく心配です(笑)」 無気力過ぎるセンセーから学ぶ、“生きていく”ということ――夏アニメ『異世界失格』アネット役・大久保瑠美さんが第2話を振り返る【インタビュー連載第2回】

センセー役の神谷浩史さんは現場でも「先生」!?

――前回、センセー役の神谷浩史さんにインタビューした時、アネットはダメな男に貢いでしまう女性の部分が瞬間的に出てくるとおっしゃっていました。

大久保:そうだと思います(笑)。センセーって、絶対に好きになってはいけないタイプじゃないですか。アネットの想いにリアクションしてくれれば、もしかしたら成立するかもしれませんが、センセーはまったく興味がなくて。アネットのことを全然考えていないわけではないけど、今の時点では好意を向けてくれないし、そもそもセンセーにはさっちゃんという想い人がいるし。

でも、彼女は自分をハッとさせてくれるなら身分や職業はなんでもいいというタイプなので、私はすごく心配です(笑)。恋愛経験がなさ過ぎるのですが、そこがかわいいところでもあるんですよね。

――あと神谷さんがおっしゃっていたのが「大久保さんも(タマ役の)鈴代(紗弓)さんも本当に上手な人たちで、コメディエンヌの素質があるんだろうな」と。

大久保:神谷さんはいつも現場でほめてくださるんです。きっとご本人に言ったら否定されると思いますが、私たちからすれば大先輩で、一緒に掛け合いさせていただくことはとても光栄です。神谷さんはとても気を遣って、「声優業界は競争が激しい中で、最前線でやっているのはすごいことなんだよ」とか、叫ぶシーンでは「今みたいに声を張れるのはなかなかできることじゃないんだよ」と言ってくださいます。また何気ない話題をこちらから振ってみたら、続けていろいろ教えてくださって。私たちの先生みたいな存在だなと思いました。

――作中のセンセーではなく、現実的な先生なんですね。

大久保:そうです(笑)。シーンに合わせたお芝居のやり方やノドの使い方など、参考になるアドバイスをいただきます。身が引き締まりますね。レギュラー作品で、しかも同じパーティメンバーに神谷さんがいらっしゃるのはなかなかないことなので。更に神谷さんは異世界ものの主人公は今回が初めてとおっしゃっていたので、光栄な立ち位置で演じさせていただいているなと思っています。
センセーはセリフ数が少ないから感情表現が難しいんですけど、的確に演じられて、こちらの想像していたものを軽く超えてくる。本当に尊敬する先輩です。

――そんな大先輩にほめられるというのは本当にすごいことですね。

大久保:はい。これだけコメディ色を求められる作品はなかなかないですが、アニメっぽさやコメディっぽさを良しとしてくれて、「大久保ならできる」と思ってスタッフの方は選んでくださったんだと思うし、共演している神谷さんにもそう思っていただけるのは、役者としてこんなに嬉しいことはないと。そのことだけであと20年は頑張れそうな気がします(笑)。

――センセーがローテンションなので、掛け合うアネットの針が振り切れないと中途半端に聞こえてしまう危険性もありますが、ここまで面白くなっているのは神谷さんの存在感に引けを取らない大久保さんの実力だと思います。

大久保:ありがとうございます。神谷さんがいいパスをくださるからです。これはアネットのシーンではありませんが、第1話でタマがデスツリーに捕まっていたところに、センセーも捕まってしまい精気を吸い取られるシーンで、センセーがいい顔で「グッド・バイ……」と言うところがすごく面白くて。あんな風に言われたら紗弓ちゃんも「お、おい! 諦めんなって冒険者!!」と思わず言いたくなりますよね(笑)。神谷さんのセリフに応えられる紗弓ちゃんもすごいけど、神谷さんは小さくつぶやいたひと言が印象に残るように作ってくださるんです。

この作品はセンセー主導では動きませんが、センセーが主役であることを忘れないでいられるのは、ほんの少しのセリフ、ほんの少しのシーンでも神谷さんのお芝居がしっかりされているからなんだろうなと。
あの領域にいくにはたくさんの作品、たくさんの役を演じてこないとたどり着けないと思います。私もアフレコの度にその素晴らしさを実感しています。

――作中のセンセーのセリフが名言みたいに感じられることが多々ありますね。

大久保:ひと言ひと言に説得力があるからこそ、神谷さんがセンセー役になったんじゃないかなと思います。

あふれて止まらない鈴代紗弓さんへの愛……!?

――あとアネットとタマの掛け合いも楽しいですね。

大久保:私、紗弓ちゃんのことが大好きなんです。紗弓ちゃんが新人の頃、レギュラーでご一緒したことがあるのですが、「この子、天使なのかな」と思うくらい(笑)。

紗弓ちゃん本人にも「紗弓ちゃん、本当にいい子だね。かわいい、かわいい」といつも言っています。話しかけてくれて会話を繋げようとしてくれたり、人の変化に敏感で、「瑠美さん、髪切りました?」とか「今日のお洋服すごくかわいいですね」とか自然に声をかけてくれて。

そんな素直さと純粋さと、周りをよく見ている観察眼みたいなものがお芝居にもつながっているんじゃないかなと。私がマネージャーだったら、絶対推したくなりますもん(笑)。そういう魅力がある方だなと思います。

――大久保さんの、鈴代さんへのあふれ出す愛が十分伝わってきました(笑)。それだけ仲良くて、信頼できる相手だから息がピッタリ合った掛け合いができるんですね。

大久保:そうですね!

現場ではキャスト同士のパイプ役を意識

――収録はまだ分散収録だったそうですね。

大久保:はい。最初はセンセーとアネットとタマの3人にゲストキャラが加わる、もしくはセンセーとゲストキャラが絡むことが多かったので、アネットはタマと誰か、みたいな。でも基本的にはタマと一緒のことが多くて、あと前半はセンセーと、途中からニアも入ってきました。分散収録でしたが、スタッフさんのおかげでまんべんなく一緒にできたかなと思います。

――神谷さんが時期的なこととマイク前はアクリル板で区切られていたので、あまりお話しする機会がなかったとおっしゃっていました。

大久保:でもブースには4人くらいしか入っていなくて、それぞれ離れて座っていたこともあり、もちろん気を付けながらですが、想像よりお話しすることができました。他の現場ではもう全員で録り始めているところもありましたしね。話し出すきっかけは、だいたい私が多くて(笑)、神谷さんに「このシーンはこうですよね?」と尋ねたりすると、そこに紗弓ちゃんがのっかってきて。そしてまた私がニア役の小市眞琴ちゃんに「ね?」と振ってみたり。

アフレコ現場がしーんとしている時には2種類あって、集中している時と「しゃべろうかな? どうしようかな?」と躊躇している時です。私はコミュニケーションを取りたいタイプですし、どっちなのかは何となく空気でわかるので、「しゃべっていい瞬間だな」と思ったら、なるべく交流するようにしています。特にこの作品は4人のパーティで行動していきますし。

でも座長といえど先輩の神谷さんに引っ張ってもらったり、バランスを取ってもらう役割をしていただくわけにはいかない。そうなると香盤表的にも芸歴的にも2番手の私がやろうと思って。

紗弓ちゃんがすごくしゃべってくれるのはわかっていましたし、眞琴ちゃんとはレギュラーでがっつりご一緒するのは初めてだったのですが、「どれくらいしゃべってくれるかな?」と思って声を掛けてみたら結構話してくれて。現場の雰囲気的は和やかで、でもわーっと賑やかな感じではなく、会話の中でお芝居の話になって、神谷さんが「こういう技術なんだよ」と説明してくださると、みんなで「なるほど!」と聞くみたいな。あとゲストの方が来てくださった時は、その方も含めてお話ししていました。

――現場の雰囲気作りをそこまで意識されているのは素晴らしいです。声優の鏡ですね。

大久保:いえいえ、そんな。でもあるところで、「大久保さんみたいな現場での振舞いと、お芝居ができる役者になりたいです」と、別の事務所の方が言ってくださっていたと又聞きしたことがあって。それがすごく嬉しくて泣いたことがあります。

「うちの事務所の後輩ですか?」と聞いたら違う事務所の方で、ちょっと自信が持てたというか、自分のやっていることは間違っていないんだなと思えて、嬉しかったです。

(C)野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会
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