最後はこの曲を聞いて笑ってもらえたら|TVアニメ『逃げ上手の若君』連載第3回:EDテーマ曲担当・ぼっちぼろまるインタビュー
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』を手掛けた人気作家・松井優征先生が描く歴史スペクタクル漫画『逃げ上手の若君』がTVアニメ化。2024年7月よりTOKYO MX・BS11ほか全国30局にて放送中です。本作の主人公は、信頼していた幕臣・足利高氏の謀反によってすべてを失った北条時行。時行は逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で仲間と出会い、訪れる困難を「逃げて」「生きて」乗り越えていきます。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力を深掘りする連載インタビューを実施! 第3回目は、作品のOP・EDテーマ曲を歌唱する2組にお話を聞きました。今回はEDテーマ曲「鎌倉STYLE」を担当したぼっちぼろまるにインタビューした内容をお届け。ダンスロックナンバーをチョイスした理由や歌詞に込めた思いを語ってもらいました!
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『逃げ上手の若君』における幸せって、どういうことなんだろう
――最初に原作を読んだときの感想をお聞かせください。
ぼっちぼろまるさん(以下、ぼっちぼろまる):「週刊少年ジャンプ」の本誌で連載が始まったときに読んだのですが、最初はヘビーな話だなと感じました。そこから読み進めていくうちに、前向きな部分がとても際立ってきて。史実での出来事に沿いつつもコミカルに描いている部分もあって、エンターテインメントとしてすごく面白い作品だなと思いました。毎週楽しく読んでいます。
――本作のオファーがある前から、「週刊少年ジャンプ」を読んでいた?
ぼっちぼろまる:もちろんです。もう10年以上も「週刊少年ジャンプ」を隅から隅まで読み続けてきました。ジャンプの漫画で人格が形成されている部分は大きいかもしれません。松井先生つながりで言うと、僕は『ボボボーボ・ボーボボ』が特に好きでした!
――松井先生は、『ボボボーボ・ボーボボ』の作者である澤井啓夫先生のアシスタントだったんですよね。
ぼっちぼろまる:だから、松井先生の作品も大好きで。「週刊少年ジャンプ」で先生の新作が始まると知ったときは嬉しかったですし、歴史ものだと分かってからは「なるほど!」と少し驚きました。でも、読み進めていったら「これは松井先生の作品だ」と腑に落ちたんです。
――松井先生らしい、ちょっと……いや、だいぶ癖のあるキャラクターが登場して。
ぼっちぼろまる:そうなんです(笑)。特にキャラクターのリアクションを見たときに、「これこれ!」と思いました。全体的なストーリーは重ためですが、随所にコメディ要素があって、そのバランス感覚が絶妙ですごく面白い作品です。さすが松井先生と唸りました。
――もともと読んでいた作品のEDテーマ曲を担当して欲しいとオファーがきたときは、どんなお気持ちでしたか?
ぼっちぼろまる:ただただ嬉しかったです! 一方でプレッシャーを感じる部分もやっぱりあって。というのも、『逃げ上手の若君』のEDテーマ曲ということは、時行の心象や風景みたいなものを表現したほうがいいんじゃないかと思い、そうなると、壮大で美しい曲を書かなければと勝手に難しく考えていたんです。
ただ、いざアニメ制作スタッフの方々に楽曲の方向性を聞いてみたら「ハッピーな感じで」と、自分が思っていたのとは真逆のオーダーをいただきまして。
――自分のなかでは想定していない方向性だった。
ぼっちぼろまる:驚きました。ただ、その予想を裏切られるようなオーダーが、まさに松井先生の作品らしいなとも思ったんです。とはいえ、『逃げ上手の若君』における幸せって、どういうことなんだろうなとは考えたんですよ。あの時代と現代では幸せの価値観や概念がちょっと違うような気もして。
――なるほど。
ぼっちぼろまる:そう思いながら『逃げ上手の若君』を読んでいたら、おいしいものを食べたり、歌って踊って騒いで楽しんだりしているときに、キャラクターたちがみんなすごくいい笑顔で幸せそうにしていたんですよね。あの絵を見たときに、ひょっとしたら当時の人たちのほうがピュアに幸せというものを感じていたんじゃないかなと思ったんですよ。そこに着目して、曲を作り始めました。
――明日は自分の身がどうなるのか分からない時代だからこそ、目の前のことに対してまっすぐ楽しめるという側面があるのかもしれません。
ぼっちぼろまる:そうかもしれないですね。当時は些細なことで幸せを感じられたのかもしれないです。ただ、大変なこともあるけれど、今は今で便利な世の中になって幸せの形も色々と増えました。
そう考えると、形は違えど人々の幸せというのはずっと変わらずにあるものだと思うんです。そういう思いを込めて、「みんな、ハッピーに生きていこうぜ!」と考えながら、エンディングテーマ曲の「鎌倉STYLE」を書きました。