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『真夜中ぱんチ』 キャラクター原案・ことぶきつかさインタビュー【連載第5回】

夏アニメ『真夜中ぱんチ』キャラクター原案・ことぶきつかささんインタビュー|“エモ過ぎず今風過ぎず”という絶妙なさじ加減は、すごく難しかった【スタッフ・声優インタビュー連載第5回】

90年代にいたような、尖ったキャラクター像をイメージ

──そもそも「20年ぶりのキャラクター原案」という点について、ことぶきさんはどのようなところに楽しさや難しさを感じられていましたか?

ことぶき:難しさというところで言うと……この20年、いちユーザーとして、いろいろなアニメを見てきて思っていたことがあって。この20年で、アニメってすごく変わったんですよね。当時はまだ20世紀でしたから、当然変わるとは思うんですけども。

例えば、僕がキャラクターデザインをしていた頃のアニメは、4クールあるのが普通でした。だから各キャラクターのエピソードも豊富で、ちょっと脇のキャラクターでも1話もらえるくらいのボリュームがあったんですね。でも、昨今は1クールで終わることがほとんどじゃないですか。そうなると、必然的にキャラクターの掘り下げはほとんどできないと思うんです。

つまり、今はキャラクターデザインをするにしても、その作品の物語を転がしていくために、どうしても駆け足になってしまう。「キャラの掘り下げの難しい時代だな」などと思っていました。そんな時に今回のお話をいただいて……「1クールで、みんなの心に残るようなデザインにできるのかな」と。原作がありきではなく、オリジナル作品ですから、なかなか難しいんじゃないのかなという心配がありました。ただでさえ、その時々の流行りや移り変わりに、ついていけていないところもあるので。

──流行りという意味では、本間監督は「昨今、いい子が出てきて感動する話が多いように感じていたんです。僕自身はそういう話が好きで、普段から読んでいますが、少しだけ食傷気味だった」とこぼされていましたね。

ことぶき:ええ。そこも大きく変わったところでしたよね。最初は『真夜中ぱんチ』も「クズしか出てこない話」と伺っていて(笑)。今はやりにくそうな、90年代の悪ノリのようなものを出したいという意図があってこそのオファーだったんだろうなと思いました。

だから僕自身は今どきのコンプラをあまり気にせず、主要メンバーを描かせてもらっていたんです。尖ったイラストを用意しても、そこはきっと、有間さんたちがなんとかしてくれるだろうと。ただ、あまりに尖りすぎたデザインでも、ウケもしなきゃ笑われもしない状態になってしまうので、そのラインは気をつけました。

──その他、リクエストのようなものはあったのでしょうか。

ことぶき:監督からは「今の人たちはおとなしい表情しか描けない方が多いので、大ラフで良いので、はっちゃけている顔の表情集を作ってほしい」というお願いをされていたんです。だから、最初に提出した真咲(CV.長谷川育美)の大ラフは、喜怒哀楽の表情に、できるだけデフォルメをかけたような、オーバーなものにしていました。

そうしたら監督に「そうそう! こういうのが今の人には描くのが難しいんです。すごく有り難いです。このテイストは最後まで残すようにしたい」といったことをおっしゃっていただいたのを覚えています。

──ちょっと話は逸れてしまいますが、「今の人たちには描けない」という理由について、ことぶきさんはどう分析されているのでしょうか?

ことぶき:多分ですけど……第一線でキャラクターデザインをされている人は自由に描けるとは思うんです。ただ、その後の作業をする方たちは、それこそコンプラなどもあるので、設定にある絵以上の表現は描きにくいところがあると思うんですね。それが良い・悪いではなくて。そういうものになってきているんじゃないかなと考えています。

ヴァンパイアと人間の対比

──真咲の最初のキャラクター原案も、私自身は拝見させてもらったのですが、本当に表情が豊かで。

ことぶき:そうですね。ただ、監督的には「あまりデフォルメをかけすぎるとお姉さんっぽさがなくなるので、押さえてもらえると」と。「あれ? なんか言ってることが変わってきたぞ?」と(笑)。

──(笑)。ことぶきさんの絵を見たことによるインスピレーションで微調整が入ったんですね。

ことぶき:ええ、徐々にそういう微調整が入っていきましたね(笑)。

▲真咲の初期案

▲真咲の初期案

──本間監督から「当時はまだコンテがない段階だったので、このキャラクターたちがどう動くか、スタッフ全員が共有できているわけではなかったんです。そのため、中には“視聴者が受け入れてくれるのか”という厳しい意見もありました」と伺いましたが、キャラクターの個性もあまり決まっていなかったということなのでしょうか。

ことぶき:それぞれのキャラクターが昔こんなことをしていたという経歴くらいですね。でもコンテに入る前に、暫定のキャラ表がほしいとのことだったので、真咲(CV.長谷川育美)とりぶ(CV.ファイルーズあい)という、メインのふたりから固めていくことにしました。

例えば、監督がイメージされている声優さんとか、声のイメージがあればまた少し違ったんですけど、それもなかったので(笑)。本当に探り探りでしたね。

──では本当に少ない情報の中から。

ことぶき:はい。「5人がヴァンパイアで、真咲1人だけが普通の人間なんです。その対比をきちんと描きたい」とは伺っていました。でも「ヴァンパイアは普通の人間ではない」という表現をどう入れ込むかによって、普通の人間の描写が随分と変わってくるなと。

例えば、ヴァンパイアだけカラフルな髪色、人間だけは地味な髪色にする……って方法もあると思うんですけども、髪色を変えるだけでヴァンパイアとしてしまうと、モブも含め人間との差別化を計るのは難しいなと。

ですが一旦ヴァンパイア達は陽キャな雰囲気かつカラフルな髪色に、真咲を徹底的に地味な雰囲気かつ黒髪に、という設定にしました。そういうわかりやすい差別化を測ろうかなと思ったら、監督から「いや、真咲は黙ってれば綺麗どころのオシャレなお姉さんみたいなイメージです」と言われてしまったので(笑)。

じゃあ、りぶと真咲をどう差別化しようかと悩んでいたところ、「最初に描いていた初期のりぶのほうが、真咲っぽいイメージなんですよね」と。

──確かに、いま初期のりぶ案も拝見させていただいておりますが、げんなりとした表情が真咲っぽいような……。

ことぶき:そうですね。僕は最初、りぶに対してヤンチャっぽいイメージがあったんですけども、見た目が派手なだけで、きっと真咲よりも純情なキャラクターなんですよね。それで、りぶとして考えていた設定を真咲に移植し、新たにりぶを作っていきました。それはデザインだけじゃなくて、性格的なところも。初期のりぶのデザインが最終的な真咲のデザインに影響を与えています。

──逆に初期の真咲は、ゆき(CV. 茅野愛衣)っぽさもあるような?

ことぶき:最初の原案は、いろいろなキャラクターにつながってるところがあるんです。真咲の髪の毛の雰囲気は、苺子(CV.伊藤ゆいな)に移植しています。

──真咲、りぶのある程度のキャラクターが固まってきたところで、ヴァンパイア4人のキャラを決めていったのでしょうか。

ことぶき:そうしたかったのですが、結局ふたりがまだ決まってない段階で、残りの4人の第一稿を出していました。そうしたら監督から真咲とりぶよりも具体的な意見が返ってきたので、そこから各キャラクターを調整していきました。

──十景(CV.上田瞳)のスラッとした雰囲気というのは、当時のままだったんですね。

ことぶき:そうですね。十景に関しても確か「黙ってれば美人」といった設定だったので、姉御肌の高身長としました。

──現在のキャラクター設定になるまで、何度かご提案を出されているのですか?

ことぶき:大きく二転三転したのはりぶと真咲くらいで、他のキャラクターに関してはそんなにありませんでした。ほぼ固まった段階で「全部のキャラクターがクズすぎている気がするので、萌えとセクシーが欲しい」という要望があったと伺いました。

そういう意見があるのも当然だなと思ったのですが、僕としては、他のキャラクターと馴染まない印象があって……ですが最終的に苺子と十影が犠牲となり(?)今のデザインに落ち着きました。

──苺子はかわいらしいキャラクターですが、十景はどちらかというとグラマラスですよね。元デザインとはかなり違うのですか。

ことぶき:ファッションだけを変えた感じですね。最初の案だと十景はもう少し、時代錯誤な70年代のヤンキーみたいな格好をさせていたのですが「ちょっと分かりやすくセクシー系のキャラにしませんか」という事で修正しています。

──譜風(CV.羊宮妃那)に関してはどうでしょう?

ことぶき:最初は「眼鏡を外したら可愛い女の子」「着痩せしていて、実は脱ぐとナイスバディ」というような、昔ながらのキャラクターのパターンで考えていましたが、それを無くして再度デザインをしています。現在の設定だと序盤から片目は出ていますが、もともとは目は常に隠れている設定でしたね。

──ゆきは最後に手掛けられたのでしょうか?

ことぶき:そうですね。他のキャラクターたちとは被らない要素で描きたいなと思っていたので、逆に他のキャラクターが決まれば自ずと決まってくるかなと。最初の髪型は監督的には「ちょっと違うな」という感じだったのですが、第二稿からはほぼ変更していないですね。

──はりきりシスターズの橘花(CV.安済知佳)と乙美(CV.近藤玲奈)に関しても、ことぶきさんがデザインされているのでしょうか?

ことぶき:一応僕が描いてはいるんですけど、大元のラフデザイン自体は総作画監督・サブキャラクターデザインの合田真さ美さんが担当されています。そのラフがあまりにしっかりしていたので、それを清書したような感じでしたね。

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