タマは“パーティの中で”一番のしっかりもの! ダメなセンセーを放っておけない素直さが素敵――夏アニメ『異世界失格』タマ役・鈴代紗弓さんが第3話を振り返る【インタビュー連載第3回】
「とある文豪」が異世界に転移してモンスターを倒す……わけでもなく、ダメな作家のまま、しかし確実に異世界に影響を与えていく異色作『異世界失格』(野田 宏さん原作、若松卓宏さん作画。小学館『やわらかスピリッツ』連載中)。本作のTVアニメが2024年7月9日(火)から放送中です。
第3話では、センセー、アネット、タマが、旅の道中にドラゴンを操る「憤怒の魔王」の娘・ウォーデリアと遭遇。センセーが転移者だと知った途端戦闘になるも、その強力な魔力にアネットとタマは屈してしまいます。そしてセンセーにも攻撃を加えるウォーデリアですが、傷付きながらもにじり寄り、問いかけをやめないセンセーの得体の知れなさに違和感を抱いたのかその場を立ち去り、一同は危機を免れました。
その後、アネットの同僚の神官・イーシャの元で傷を癒していたが、そこで憤怒の魔王が別の転移者によってすでに倒されたことを知らされます。
更に、街には転移者のスズキとコータローが突如現れ、そんな魔王を滅ぼした転移者こそが世界を統治するべき存在であると宣言。住人たちが動揺する中、コータローから「アネットから暴行を受けた」と聞かされたスズキは、アネットの頭にそっと手を伸ばし……? 今後の展開はどうなるのでしょうか?
アニメイトタイムズでは、声優陣のインタビュー連載を実施。第3回は、センセーたちと旅を続けるタマ役・鈴代紗弓さんです。
作品の印象や放送されたばかりの第3話の振り返り、尊敬する先輩の神谷浩史さん、大久保瑠美さんについて、更にはオススメの文学作品まで語っていただきました。
異世界ものの常識とかけ離れたことばかりに驚き、センセーの紡ぐセリフにハッとさせられた作品
――原作を読んだり、演じられて感じた作品の印象と魅力をお聞かせください。
タマ役 鈴代紗弓さん(以下、鈴代):異世界ものというと「転生」するというイメージを持っていましたが、この作品は「転移」で。一般的な異世界ものの主人公といえば、転生した先ではめちゃめちゃ強かったり、生きて元の世界に戻るために頑張るなどポジティブだったり、プラスのイメージがありますが、この作品の主人公のセンセーはまったく生きる気がなく、むしろすぐ死のうとして。物語がいつ終わってもおかしくないような(笑)。
異世界ものの常識とはかけ離れた新鮮なことばかりで、何度も驚きながらおもしろく読ませていただきました。あと個人的には絵のタッチもめちゃめちゃ好きです。
――センセーの絵を見たら、「どこかで見覚えがあるな」と思いませんでしたか?
鈴代:そうですね。文豪に詳しくない私でもピンとくるくらいの(笑)。「文豪」って、威厳や格式があって、普通の人とは違う印象があって、「頭の中はどうなっているんだろう?」とすごく気になっていました。なのでセンセーの紡ぎ出すセリフにハッとさせられたり、参考になることも多かった気がします。
タマはパーティで一番のしっかりもので、適応能力が高いキャラなので友達になりたい
――演じるタマの印象とご自身と似ている点や魅力を感じる点をお聞かせください。
鈴代:タマは、センセーが異世界でアネットの次に出会ったキャラですが、いきなりデスツリーに囚われる絶体絶命の状況で。しかもセンセーに助けてもらえるのかと思ったら全然弱くて、「運が悪かったな」と思ったという不思議な出会いでした(笑)。
最初の印象は、おてんばで元気な女の子で、場を掻き回すトラブルメーカー的なポジションなのかなと思っていました。でも、お話が進んでいくにつれて、センセーやアネットとの掛け合いを見ていると、このパーティの中で一番しっかりしているし、良く言えば環境にすぐに適応できる、悪く言えば流されやすい(笑)、柔軟なタイプなのかなと。
例えば第1話の終盤で、センセーが棺桶に入った時、「あんたよくそういうことできるわね」と驚いていたのに、第2話の冒頭ではアネットと一緒に、もう当たり前かのように棺桶を引いてましたから(笑)。それどころか本名はタマじゃないのに、センセーに呼ばれたことでずっとタマになってしまって。そんなところもいいですね。ダメなセンセーを放っておけない素直なところも素敵ですし、根の性格の良さがみんなから慕われる理由なのかなと。私も友達になりたいですね。
タマと似ているところは、私自身も「この状況、おかしいな」と思っても、気付いたら慣れてしまっているところでしょうか。無意識での適応能力があるみたいなので(笑)、そういったところはタマと似ているなと思いました。だから私も生きているセンセーが入った棺桶を引きずって移動していることに、そのうち何の疑問も抱かず、当たり前のように思っていました(笑)。
――タマはこの作品の中では唯一のツッコミ役といっても過言ではないような。
鈴代:最初はアネットがまともな人だと思っていたんですけど、すぐにそうでもないということがわかって(笑)。そうなると消去法で、ツッコミはタマだけになりますね。
はっちゃけるところははっちゃけて、バトルでは負けん気の強さなどを意識
――演じる際に意識された点や収録前・中に受けたディレクションで印象的だったものをお聞かせください。
鈴代:タマ役のお話をいただいた時、「どこまでやっていいのかな?」と。主人公が死にたがっていると聞くと重たくてミステリアスな感じがしますが、物語としてはリズミカルなので、そのバランスと、アニメらしくどうデフォルメしようかを悩みました。
アネットはセンセーのことに関してはデフォルメされた表情やコミカルっぽい雰囲気になることが多く感じますが、キャラ的にはタマが一番、異世界っぽい要素を持っていたので、ワーワー叫んだり、ツッコミを入れるところも、会話の流れとして突っ込んだほうがいいのか、あくまでツッコミとして際立ってやったほうがいいのか、序盤は結構考えていた気がします。
収録が進んでいくと、アドリブを受け入れてくださる現場だったこともあり、コメディ色の強い展開でははっちゃけて、バトルシーンでは負けん気の強さや守ってあげたり、引っ張っていく側としての強めの軸は意識していました。
――タマはバトルの時は体力勝負のパワー系ですからね。
鈴代:パワー系なんですけど、攻撃の時に猫っぽく、ちゃんと「猫拳(猫パ~ンチ!)!」と言っているキャラは初めてだったので、「いいな」と思いながら楽しんで演じていました(笑)。
――収録はすごく疲れませんか?
鈴代:すごく疲れました。毎回「出し切らないと」と思いながらやっているので、終わるたびに体力が削られていく感じで(笑)。要所ではしっかりキメないとカッコよくならないので、そこも意識してやっていました。
でもディレクションでは「そんなに張ってやらないで、もうちょっと自分に自信と余裕がある感じで」と言われたこともあって。叫ぶというより、お腹に込めながらキメとなるシーンを演じていたことが多かったかと思います。