檸檬の失恋に「自分の気持ちと向き合うことをちゃんと出来ていて偉いなって思います。」――『負けヒロインが多すぎる!』連載 第2回:若山詩音さん(焼塩檸檬 役)インタビュー
負けて輝け少女たち! マケインたちのはちゃめちゃ敗走系青春ストーリー、TVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』がついに放送スタート!
映画のようなクオリティと、怒涛の展開。面白いけど、なぜか泣けてくる本作。第2話での檸檬の負けっぷりは、あまりにも切ないものでした。お色気シーンから、衝撃の展開、そしてラストの青春感までたっぷり楽しんでください。
連載第2回は、元気いっぱいのスポーツ系ヒロイン・焼塩檸檬を演じる、若山詩音さんへインタビュー!
前回はこちら
マケインの思いの人に抱いてしまう、もどかしさ……
――まず、オーディションの思い出から聞かせていただければと思います。
若山詩音(以下、若山):スタジオオーディションは、温水和彦役と八奈見杏菜役で受けている方と、3人の掛け合いでした。私も、焼塩檸檬ちゃんのキャラクター性というところを考えて持って行ったんですけど、オーディションの時点でディレクションをしていただきながら、形を変えていくようなやり方でした。
――どう変わっていったのですか?
若山:最初は元気いっぱいで持って行ったんですけど「ちょっと頑張りすぎている感じがします」と、音響監督の吉田光平さんからディレクションをいただいたので、少し力を抜いて、等身大の女の子でやろうと思って固まっていった感じでした。
ただそのあと「もう1パターン見たい」と、ボーイッシュな感じでもやることになったんです。私には檸檬ちゃんはかわいい系のイメージだったので、そこは未知の領域でした。
結局は最初にディレクションいただい方向で本編は演じています。オーデションの時から、掛け合いを重視している作品なんだなというのは強く感じていましたね。
――第1話にも多くのキャラクターが登場しましたが、彼らとの話し方も、掛け合っていく中で固めていく感じだったのですね。
若山:かなりたくさんのキャラクターが出てくるので、それぞれがどういう関係なのか、というのを意識して決めていきました。
第1話に限らず、この作品は、とても丁寧に録っていただいているんです。温水くん(CV.梅田修一朗)とマケインたちとの会話の中で、どっちがどのように会話をリードしていくのか、というのはかなり細かく決めていったので、最初は特に、収録時間も長かったと思います。でも、「みんなで作っていこうね!」という優しい空気を作ってくださる現場だったので、みんなで一致団結して頑張っていく、和気あいあいとした雰囲気でした。
――確かに、それぞれが温水くんと絡んでいるから、彼との距離感は難しいかもしれないですね。
若山:温水くんの立ち位置ってすごく難しいですよね。おせっかいをすることもありますが、基本的には目立ちたくない、というタイプの男の子だと思いますので…。
――第1話での檸檬の登場シーンの思い出はありますか? 相手によって声色も違う印象を受けました。
若山:綾野光希(CV.小林千晃)くんを呼び止めるところは、すごくテンションが高くなるのかなと思って、ずっと上ずりながらしゃべっている感じにしていたんです。ただ、「上ずった感じが出ると、檸檬のキャラ感からは少し外れてしまう」というディレクションをいただいて、あまり雑音が出ないよう、聴きやすいところでしゃべるように意識しました。
――光希のことを好きなわけだから、声色が変わりはするでしょうけど。
若山:実際、変わっているとは思います。わかりやすくガラッと変えるとかではないんですが、第1話よりは第2話で、乙女らしい一面が見えてたどたどしくなったり、カラ元気で高いところでしゃべるようなトーンになったりしています。
――第2話は檸檬にスポットが当たる回ですが、台本を読んだときは、どうでしたか?
若山:もちろん事前に原作の小説は読んでいて、「おお、ついに体育倉庫のシーンが来るんだよな」と思っていました。だから台本をいただいて、さて、ここをどう演じようかってすごく考えました。
この作品的に、あまりにセクシーに振っちゃうと、聞いているほうも恥ずかしくなっちゃうし、間違えた方向に行っちゃうと思ったんですが…。個人的には「サービスだな! 最高最高!」って感じだったので、そういう要素も多少は欲しいと思ってしまったんです。ですので塩梅を意識しましたね。
――確かに、コメディ寄りではありましたね。
若山:最終的にはそうなりました。ト書きにも、『セクシー過ぎず、「あーれーー」みたいな感じでお願いします』と書いてあったので、それならば、セクシーさもありつつ、基本はコメディというところで演じていこうと思いました。
――でも、原作で読んだとき、何だこのシチュエーションってなりませんでした?
若山:「いいな、このラッキースケベは!」と。相手が温水くんだからこそ起きたイベントだったんでしょうね(笑)。
どうにかこうにか、全体を映さないようにしている感じでしたけど、こだわりをすごく感じました。日焼け具合がすごく良かったです!やっぱり日焼けはいいですよねえ…。この作品の放送時間ならきっと大丈夫!
――そんなお色気シーンもありつつ、第2話で、檸檬のキャラクター性と恋の行方がわかるという意味では、相当濃密でした。
若山:本当に振られるのが早いこと早いこと(笑)。もちろんマケインですから、振られることはわかっていたんですけど、行末がわかっていたとしても、その話数ではそのときのキャラクターの気持ちに肩入れするものなので、「まだ行ける!」という気持ちがどこかにあったんです。でもBパートで、「俺、彼女いますし。」と言われて……本当にショックでした。
――何もせずに負けるって、かなりキツいですよ。
若山:キツいですよ。これから描かれていく部分ですが、後悔というか、悔しいと思う背景が彼女にもありますので、今後も楽しみにしていただきたいです。
あと、振られたあとのテンション感というところでは、檸檬ちゃんと言えど、凹むときは凹みますよね。実際繊細な子だと思うので、しっかり凹むんだろうなと思って、優しさもありつつ、キツいなぁっていう気持ちの表現ができていたらいいなと思いました。
――ラストで、走って吹っ切ろうとしていたのも良かったですね。
若山:「なにか掴めそうなんです」って小抜小夜先生(CV.斎藤千和)に言うところで、「振られてその気持ちになるって、なんてツラいの」…と思っちゃったんですけど、本当に切なかったです。
ここの小夜先生とのシーンは、もう少し明るめに話すのかなと考えたこともあったんです。凹んだところから自分を上げていくために、最後だけは明るくしているという方向なのかな?って。ですが、収録に向けて映像を見ながら家で合わせていくうちに、ここは真剣に自分と向き合っているから、あまり明るくしすぎなくてもいいというところにたどり着きまして、収録のときもそれでやらせていただきました。檸檬ちゃんは、自分の気持ちと向き合うことをちゃんと出来ていて偉いなって思います。
――映像を見て考えた自分のお芝居の方向性が、スタッフと一致していたのは嬉しいですね。
若山:そうですね。ディレクションをいただいてシーンが出来ていく感じも嬉しいですけど、こういったシーンで、自分が作っていった気持ちに「それ、いいですね」と採用していただけるのも、すごく嬉しくなります。
――ただ、文芸部でのやり取りを見ていると、光希は、檸檬はモテるから自分なんかとは釣り合わないと思っていたみたいですね。
若山:らしいですね! 眼中にないとかではなく、「俺なんかじゃ釣り合わないです」って言ってるくせにもう彼女ができてるって! 意味がわからない!!
――それ、若山さんの感情も入っています?(笑)。
若山:ちょっと入ってます(笑)。釣り合わないと言いながら彼女がいて、それが朝雲千早さん(CV.上田麗奈)なわけで……、「それって、言い訳なんじゃないの?」って思っちゃったんですけど。でも光希くん的には、檸檬が本当に輝いていて、かわいい子で、檸檬という存在を好きにならないようにしていたのかな?とか思いました。
私から見たとき、マケインが惚れている男子たちには、多様なもどかしさを感じてしまうんですよ。何でそこに気づかないんだ、どうしてそういうことを言うんだ、って。そういうもどかしさを抱えてしまうところはありますね。でも、みんな根っこから優しい方々なので、意図してやっているわけではありません。私が勝手にいろいろ求めてしまってるだけです!
――ホントに鈍感なのかな?みたいな気はしてしまうんですけど、マケインが惚れている男子たちって、やっぱり結構モテるんですよね。
若山:ザ・モテ!ですよね。それがこの作品の特徴でもあります。本来は勝った者たちが主人公になるんですけど、この作品は負けた側を描くものなので。
だからこそ、こういう属性の男性主人公、確かに見たことがあるなぁ、モテるよなぁっていうのが、しっかり表されていました(笑)。
――勝ちヒロインたちも、なかなかに王道ヒロインですからね。
若山:今はまだ、勝ちヒロインがどういう子たちなのかわからないと思いますが、とても多種多様なので、今後を楽しみにしていただければと思います。でも、ひとまずビジュアルは、本当に王道ヒロインでしたね。華恋ちゃんの髪の毛なんて、ザ・ヒロインです。あの髪型でピンクの髪色、そしてボン、キュッ、ボンのスタイル。このキャラクターデザインが絶妙だな!って思いました。さすがすぎます。
――キャラクター原案はいみぎむる先生ですね。
若山:いみぎむる先生の絵が本当に魅力的なんです。その原案の良さをしっかり踏襲したキャラクターデザインなので、いみぎさんの絵が動いている感じがしました。ふとしたカットで、いみぎさんらしい顔の輪郭とかしなやかさが表現されているなと感じました。