制作は発見の連続、人生と同じだね——これからのピクサーを率いるピート氏が本作に込めた思いとは?|『インサイド・ヘッド2』チーフクリエイティブオフィサー、ピート・ドクターインタビュー
ピクサー流、誰もが共感する物語の生み出し方
ーー本作に限らず、ピクサーの作品ではキャラクターたちに自分を重ねることができると感じます。作品を作る際に人々へ共感できるような物語、キャラクターを意識されているのでしょうか?
ピート:意図している部分ももちろんありますが、自然にそのような作品になっているとも思います。意図的に共感を誘ってしまうと、観客の方たちはその空気を感じ取り、押し付けられているような感覚に陥ってしまいます。
ピクサーの作品作りっていうのは、まず絵コンテから始まります。脚本に合わせて制作した、絵コンテをコミックのように繋げて、本格的な映画の製作に入る前に、映画全体を可視化しています。その後、一度試写をして、みんなの感想をもらって、そこから作り上げていく。このプロセスを何度も何度も繰り返しています。
監督含めたチームの表現したいものをみんなで一度確認するんです。この段階でも音楽やエフェクトをある程度つけているので、物語の軸の部分は伝わってくるのですが、思った通りにいかないことももちろんある。
そういうときは大体、アイデアや表現方法のどちらかが違っていたりします。アイデアや表現方法を活かして、上手にストーリーテリングできるかが重要なんです。うまくいかなかった場合は、そのアイデア自体を全部なしにすることもあれば、アイデアは活かして、表現の仕方や物語の描き方を変えたりしてどうにか成立させていきます。
ーー本作は前作『インサイド・ヘッド』の公開から、9年ほど経っての公開となりました。
ピート:本作の製作には、5年ほどかかっています。続編の話が出はじめてたのが前作の公開から3、4年経ってからなのでこのタイミングになりました。私自身はその間に『ソウルフル・ワールド』の監督をしていたので、ケルシーに監督をお願いしました。
ーーこの9年間で社会の状況もかなり変わりましたよね。
ピート:やはりパンデミックの影響が大きいです。社会の変化にあわせて、いろんな習慣が変化していきました。ピクサーにも様々な変化があります。若く才能のある監督たちが多く生まれていますし、皆さんの映像を鑑賞する習慣にあわせて、作品の公開の仕方も変わっていくのかなと思います。
アメリカという国ひとつで見ても、生活様式や人々の意識が常に変わり続けています。僕らのスタジオだけではなく、国も世界もまだまだその変化のさなかにあるのではないかと思いますね。
配信サービスで映像を楽しむ方が一気に増えて、一時期は映画館に足を運ぶ人も減りました。ただ、ありがたいことに『インサイド・ヘッド2』は多くの方に劇場で楽しんでもらっているようです。これからも変化しながら、皆さんを楽しませることができたらと思っています。
[インタビュー/タイラ]
『インサイド・ヘッド2』作品概要
あらすじ
少女ライリーを子どもの頃から見守ってきた頭の中の感情・ヨロコビたち。
ある日、高校入学という人生の転機を控えたライリーの中に、シンパイ率いるたちが現れる。
「ライリーの将来のために、あなたたちはもう必要ない」
―シンパイたちの暴走により、追放されるヨロコビたち。
巻き起こる“感情の嵐”の中で、ライリーは自分らしさを失っていく...。
彼女を救うカギは、広大な世界の奥底に眠る“ある記憶”に隠されていた―。
キャスト
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