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夏アニメ『逃げ上手の若君』青山 穣と山本高広に聞く貞宗と助房の印象と声の芝居の難しさ【連載06】

「頼重は母親的に時行に寄り添って、貞宗は父親のように壁となって彼の成長を促している」TVアニメ『逃げ上手の若君』連載第6回:小笠原貞宗役・青山 穣さんと市河助房役・山本高広さんインタビュー

 

「踏切で電車に轢かれるようなイメージで」というディレクションをされたときは困りました

――山本さんは、青山さんと共演するのも初めてですか?

山本:ですね。青山さんってすごい役者じゃないですか。だからね、青山さんの芝居に引っ張られるんですよ。仕事でモノマネをやっていることもあってか、いいお芝居を真似しようとしちゃうんです。音響監督の藤田さんからも「もう声がね、青山さんなんで、考えて変えてください」とディレクションをいただきました。

アニメのアフレコ経験が少なくて、かけ合いもコロナ禍明けで久しぶりだったので、「このままで大丈夫かな」とずっと不安でした。

青山:いやいや、山本さんは色々な仕事をやってきている分、切り口が面白いんですよ。声の芝居をメインでやってきた人とはちょっと違う角度でお芝居されるので、すごく勉強になります。相方として、とても助かっていますよ。

 

 
山本:僕は逆に引っ張られちゃうので、困っています(笑)。

青山:いやさー、こっちが勉強になるって持ち上げたのにさー(笑)!

山本:嘘です、嘘です。もちろん、冗談ですよ(笑)! 実際はすごく勉強させていただいています。

青山:でも、本当に面白いお芝居をされますよね。

山本:そうなんですか? 経験があまりないので、自分ではあまりそうとは感じていなくて。

青山:それが逆にいいのかもしれない。今の役者は、常識的な範疇で芝居をやっちゃうところがあるんだけど、山本さんみたいに他の業界も経験した人は、そうじゃない台本の読み方をされることがあって。僕はそういうのがすごく面白いと思っているの。だから、自分も取り入れてみようと思って別の現場でやったら、大失敗しまして(笑)。

――そんなことが!

山本:でも、青山さんも普通には台本を読んでないじゃないですか。

青山:いやいや、僕は普通だよ?

山本:いやいや! いい意味で普通じゃないですよ! 本作でもボケの部分で独特なお芝居をされていて、後ろで出番を待っている方々がケラケラ笑っていたじゃないですか。あれ、芸人をやっている僕からしたら、悔しいんですよ。しかも、藤田さんからリテイクを出されてもすぐ切り替えてやる。「こういう風にお願いします」と言われて、即応できる声優さんは、やっぱりすごいです。

 

 
青山:藤田さんは結構理念的なディレクションをされる方で。「そんなこと言われたって、僕はどうすりゃいいの?」と困るときがあるよね(笑)。

山本:僕も「踏切で電車に轢かれるようなイメージで」というディレクションをいただいたときは困りました(笑)。それで、「いやいや、轢かれたことがないですから」と伝えたら、「気持ちだよ」と言われまして。

青山:結構、無茶なことを言うんだよね(笑)。まぁ、藤田さんはそれだけ丁寧に録られる方なのよ。

山本:一行、一行ぜんぶと言っていいくらいディレクションをされていた気がします。それくらい、本作へかける想いもあるのかなと。

――結川さんは本連載で、「1000本ノックを受けました」とおっしゃられていました。

青山:結川ちゃんだけじゃない、みんな1000本ノックをくらっていたよね。キャリアに関係なく、みんな言われている。僕も「これでちゃんとできているのかな」なんて思ってばかりでした。

――色々な作品に出演されている青山さんでも、まだ分からないことがある。

青山:分からないことばっかりです。失敗ばかり。それの繰り返し。自分はこれがいいかなと思っていても、逆の意見も当然ありますから。「僕としてはこっちだけど、ディレクションがそうなら、そっちに寄せるか」とか、そういうのもありますし。分からんよ、芝居は。

 

声優ってやっぱり“芝居”なんです

――改めて、お芝居や芸事を続けられているお二人が思う、声の芝居ならではだと思う面白さや難しさをお聞かせください。

山本:僕はもともと声優になりたくて上京してきたんです。

青山:えっ、そうだったんだ!

 

 
山本:そうなんですよ。声の仕事ができるようになって10年ぐらい経つのですが、奥の深さを痛感しています。声の仕事を始めたばかりの頃、それまでモノマネ芸人としてテレビに出ていたこともあって、声も色々と変えられるから「色々な作品に呼ばれたりするのかな」なんて甘い考えがあったんですよ。

でもね、声優ってやっぱり“芝居”なんです。声を変えられたとて、喜怒哀楽が出せるかといったらそうではない。しかも、絵のタイミングに合わせてセリフを言いながらマイクワークもして、感情もきちんと入れないといけないですからね。それが声優のスキルなんですよ。0コンマ何秒の世界で絵に合わせて感情を出すのは、声優の難しさであり、ならではだと思います。

青山:なるほどねぇ。僕は舞台をやっていて、それじゃ食えないからということで、何となく気が付いたらこの世界にいて。それもあってか、特に昔とやっていることは変わっていない気がしているのよ。特別なことをやっているという意識はなくて。

山本:昔は、食えない役者さんが声の仕事もやるみたいな流れがあったという話を聞いたことがあります。

青山:実際、そうだったよね。

山本:でも、今は声優という仕事が確立されていて、目指す人も、専任でやる人も増えているじゃないですか。そこに対して思うことってあるんですか?

青山:そんな大きな流れについて語れるような人間じゃないけれど(笑)。でもね、山本さんがさっきおっしゃったように、どんだけ目指す人が増えても、業界の人間が増えたとしても、基本は“芝居”だよ。

一度は可能性を期待されて主役に据えられてもさ、スタッフもバカじゃないからね。「今後もあの人を起用していきたいですね」と思ってもらえるかどうかは、やっぱり“芝居”だよ。あとは人柄。実力があっても人柄がよくないと、なかなか上手くはいかないよ。

 

 
山本:説得力あります。というのも青山さんは、本作の現場の空気も和ませてくれたんですよ。

青山:だってさ、空気が堅苦しくて、楽しくない現場なんて嫌じゃん。そんなので面白いお芝居なんてできないと思うし。

山本:でも、青山さんがボケても、先輩だからということもあってか、現場の方々はツッコむのを遠慮しがちでしたよね(笑)。そこで僕がツッコミを入れることが何度もあって。作品でもコンビでしたが、実際の現場でもコンビみたいなやり取りをしていました。

青山:そういうのはあったかもね。山本さんのお話が面白くて、すごく楽しかったし。正月のクレーンの話とか。

――正月にクレーン!?

山本:東京の晴海が空き地だった頃に、「芸人世界陸上」という企画があって。その競技の始まる振りをクレーンに乗り、織田裕二さんのモノマネをしながらやるという仕事が元旦にあったんですよ。

しかも前日は足柄で「長く滝に打たれていた奴が来年売れる」という企画に参加していまして(笑)。運悪く、そこで体調を崩して熱が出てしまったんですよ。でも売れるか・売れないかというタイミングだったので、仕事をもらったからには必死にやるしかないと思って、やり切りました。これ、何の話をしているんですか(笑)。

――変な話、そういう経験が芝居に生かされることも……?

山本:「クレーンの上で競技振りをするようなイメージで」というディレクションがあれば「あぁ、経験したことあるわ!」ってなると思います(笑)。でもそういう意味では、芸人として、漫画でありそうなことを経験してきているかもしれないですね。

青山:そんなおかしなことは経験しないからね。漫画みたいな体験をされている人が相方で、心強いです。

山本:僕のほうこそ、青山さんみたいな先輩とコンビを組めて、光栄です!

――お話を聞いていて、お芝居はイメージできるかどうかも大事なのかなと思いました。

青山:喋り出す最初のイメージはできている方がいいとは聞きますよね。僕はクラシック音楽が好きなのですが、いい演奏家って、最初に音を出す時に「この音を出す」というイメージをして、それに近づけるように弾くという話を聞いたことがあって。声の仕事もそれに近いところがあるかもしれないです。イメージを掴んで、寄せるというか。なかなかそう上手くはいかないですし、出たとこ勝負なところもありますけどね。あとは、芝居は相手役が誰なのかというのも大事です。

――なるほど。

 

 
青山:例えば山本さんとかけ合うなら、どうやったら一番いいのかとか。あとは主役の人たちがどういう感じで喋っていて、その周りはどういう芝居で受けているのかという流れを感じ取って、バランスを考えて演じるようにもしています。

山本:声のバランスまで考えていらっしゃるとは……。僕はまだ自分でいっぱい、いっぱいです。

青山:いやね、これは僕がそうしているだけであって、それ以前に音響監督さんが考えているから。藤田さんなら特に。だから、自分のことに集中して演じれば基本的には大丈夫なんですよ。

でも、貞宗公みたいな敵キャラクターならまだしも、同じ年齢くらいの子供たちが集まっている逃若党のキャラクターを演じる役者さんたちは、より繊細な芝居が求められていたんじゃないかな。ああいうキャラクターは、やっぱり上手な人がやらないと作品が台無しになっちゃう可能性がありますよ。

山本:僕はほとんどの方と共演するのが初めてでしたが、みなさん上手でした。特に風間玄蕃役の悠木碧さんは上手かったですね。現場でお芝居を聞いていて、色々な作品に出られている理由がよく分かりました。

――芝居に関することも含めて、貴重なお話ありがとうございました。最後に7 話以降の見どころについて語っていただければと思います!

青山:今後出てくるキャラクターを演じる声優さんの芝居みんな面白いから、楽しみにしていてください。ここからも、クセのあるキャラクターばかり出てきます。あれだけ色々なキャラクターを描ける松井先生はすごい!

山本:収録の最後に松井先生が来てくださって、差し入れをくださったんですよ。僕は「自分の芝居がどう思われているんだろう」とドキドキしていましたが、「グー!」というサインを出してくださって、ホッとしました。先生は「ありがとうございます。最高の作品になるといいですね」とおっしゃっていたので、アニメへの期待値は高いのではないかと思っています。

青山:だから、みなさん、最後まで見てね。どんどん盛り上がって面白くなりますから。よろしくお願いします!

 

作品概要

逃げ上手の若君

◆放送情報
2024 年 7 月 6 日より毎週土曜日 23:30~TOKYO MX・BS11 ほかにて放送開始!

【放送局】
TOKYO MX 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
とちぎテレビ 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
群馬テレビ 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
BS11 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
MBS 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 26:08~
RKB 毎日放送 7 月 9 日(火)より 毎週火曜 25:58~
長崎文化放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:18~
宮崎放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:26~
愛媛朝日テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:50~
HTB 北海道テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:55~
テレビ新潟 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:59~
中京テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:59~
北陸放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:00~
静岡放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:15~
大分放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:25~
IBC 岩手放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:28~
テレビユー福島 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 24:59~
鹿児島放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:20~
琉球朝日放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:20~
さくらんぼテレビ 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:25~
東日本放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:31~
信越放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:42~
秋田朝日放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:50~
青森放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:54~
RSK 山陽放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:55~
広島テレビ 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:59~
テレビ山口 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 26:00~
チューリップテレビ 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 25:53~
熊本放送 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 25:53~
テレビ山梨 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 26:55~
アニマックス 7/27(土) 毎週土曜 20:30~
リピート:7/28(日) 毎週日曜 9:30~

【配信】
▼7 ⽉ 6 ⽇(⼟) 24:00〜 毎週⼟曜⽇ 24:00〜
Prime Video

▼7 ⽉ 9 ⽇(⽕) 12:00〜 毎週⽕曜⽇ 12:00〜
d アニメストア/d アニメストア/FOD/ABEMA/U-NEXT/アニメ放題/バンダイチャンネル/Hulu/Lemino/Netflix/TELASA
(⾒放題プラン)/J:COM STREAM(⾒放題)/au スマートパスプレミアム/milplus ⾒放題パックプライム/DMM
TV/WOWOW オンデマンド/アニメタイムズ/Disney+/
※配信⽇時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承下さい。

◆スタッフ
原作 : 松井優征(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督 : 山﨑雄太
シリーズ構成 : 冨田頼子
キャラクターデザイン・総作画監督: 西谷泰史
副監督 : 川上雄介
プロップデザイン : よごいぬ
サブキャラクターデザイン : 高橋沙妃
色彩設計 : 中島和子
美術監督 : 小島あゆみ
美術設定 : taracod/takao
建築考証 : 鴎 利一
タイポグラフィ : 濱 祐斗
特殊効果 : 入佐芽詠美
撮影監督 : 佐久間悠也
CG ディレクター : 有沢包三/宮地克明
編集 : 平木大輔
音響監督 : 藤田亜紀子
音楽 : GEMBI/立山秋航
音響効果 : 三井友和
制作 : CloverWorks

◆キャスト
北条時行 : 結川あさき
雫 : 矢野妃菜喜
弧次郎 : 日野まり
亜也子 : 鈴代紗弓
風間玄蕃 : 悠木 碧
吹雪 : 戸谷菊之介
諏訪頼重 : 中村悠一
足利尊氏 : 小西克幸

◆イントロダクション
少年は逃げて英雄となる―――
鎌倉幕府滅亡から始まる一人の少年の物語
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征が描く、「週刊少年ジャンプ」で大人気連載中の歴史スペクタクル漫画がついにアニメ化!

鎌倉幕府滅亡の後、北条家の生き残り・北条時行が動乱の世を駆け抜ける!アニメーション制作は『ぼっち・ざ・ろっく!』などを手掛ける「CloverWorks」が担当、監督は『ワンダーエッグ・プライオリティ』で副監督を務めた山﨑雄太、シリーズ構成に『その着せ替え人形は恋をする』の冨田頼子、キャラクターデザインに『劇場版ポケットモンスター ココ』で総作画監督を務めた西谷泰史など奇才たちが集結し、美麗かつ迫力の映像で歴史の一片を紡ぐ!

◆プロローグ
時は西暦 1333 年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利尊氏の謀反によって滅亡する。
全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる
鎌倉を脱出するのだった......。逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。
時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。
英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。

◆WEB
公式サイト:https://nigewaka.run
公式 X :@nigewaka_anime (推奨ハッシュタグ:#逃げ若)

◆原作情報
既刊1~16 巻 発売中(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)

 

(C)松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
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