音楽
音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』中田裕二&濱野大輝インタビュー

ミュージカルでも、普通の朗読劇でもない、他ジャンルのプロが舞台で作り上げるセッションーー音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』中田裕二さん&濱野大輝さんインタビュー

 

余白によって想像が膨らむ物語

ーー台本をご覧になった感想をお聞かせください。

濱野:どこか身近にありそうだけど、ファンタジックで余白の多い物語だなと。というのも、この作品は受け取り手が想像を膨らませる内容なので、十人十色の読み取り方ができるんですよね。こういう読み取り方もできるし、ああいう読み取り方ができるなと表現方法の幅広さに驚きました。

ーー台本を拝見したのですが、とんでもないセリフ量ですよね。

濱野:朗読劇でこんなに多いのは初めてだと思います。朗読劇とは言いつつ、語りの要素が大きい作品なんですよ。これは当日までに相当な覚悟が必要になるなと。

中田:ストーリーテラーでもあるから、一人二役みたいなものですよね。

濱野:そうなんです。僕本人の気持ちが差し込まれたり、情景を想像させるような語りがあったり……。お客さんに読み取り方を提示するような語り口が特徴的だと思います。

 

 

ーー演じるうえでスタッフからオーダーなどはありましたか?

濱野:そもそも中村誠(脚本、演出)さんの中には、僕という人物像の正解があるそうです。そのうえで、明確なディレクションというよりは「こういう方法もあるんじゃないですか?」と提案していただくことが多かったので、きっと色々な意図が込められているんじゃないかなと。稽古は始まったばかりで、これから変わっていく部分もあると思うので、そこは僕自身も楽しみにしています。

ーー演じながら変わっていくことも多そうですね。

濱野:そうですね。実際、初めて中田さんの音楽に乗せて読んでみて、曲に合わせた喋り出し方や細かな工夫が浮かんできたところではあります。

ーー中田さんはいかがですか?

中田:ストーリー的には現実と非現実をたゆたうようなものですが、誰しもが持っている空虚さや虚無感みたいなところには感情移入してもらえるんじゃないでしょうか。つまり、自分自身を探す旅なんじゃないかなと。更に言えば、人って何者かになりたがりますが、その前に自分自身を見付けなさい、みたいな仏教的な要素も感じました。加えて、ジャンルが違うみなさんとご一緒するなかで、「この歌が入ったらセリフ回しをこうしよう」と考える工程はバンドっぽいなと思ったんです。

濱野:バンドですか。

中田:みなさん楽器は持っていないけど、声色やテンポ感を変えていくのは楽器に通ずるものがあるなと。そういう意味で、今回の朗読劇はセッションに近いと思いましたし、これも表現の技術なんだと突きつけられた気がします。周りのバンドマンに「こんな世界もあるんだぞ」と説教したくなりました(笑)。

一同:(笑)

 

 

ーー歌の導入にも工夫が凝らされていると感じました。

濱野:まだどんな演出になるのかはわかりませんが、中村さんの頭の中ではきっとプランが見えてきていると思います。当日、小屋入りしてみてどうなるのか。

中田:かなり変わるかもしれません(笑)。

濱野:全然あり得ますよね(笑)。それこそ中田さんが仰ったように、バンドのように育てていける作品だと思うので、まだまだ変化はあると思います。

中田:僕から見たら完璧なんですけど、濱野さんもまだ探っているところなんですよね。

濱野:そうなんです。

中田:きっと僕の知らない小技を見せてくれるんだろうなって。

濱野:それはプレッシャーですね(笑)。

ーー(笑)。物語としては彼女という人物が鍵を握っています。

濱野:彼女は非常にミステリアスな描かれ方をしていて、僕の妄想や夢の存在だったんじゃないかと思わされてしまいます。妖精や天使のような神秘さがあって、そこに惹かれるけど気付いたらいなくなっているような。そんな不思議な魅力が詰まったキャラクターだと感じました。物語的には、僕が自分を見付けようと模索していく中で、ヒントみたいなものをくれる存在でもあります。

 

 

ーー菜の子さんと掛け合われていかがでしたか?

濱野:菜の子さんは声優のお仕事だけでなく、舞台にも出ている方なので、声色が上下して変わるというよりは、心から滲み出ているお芝居という印象があります。声優の演技とはまた種類が違っていて、僕としては新たな発見というか、すごく新鮮な経験になりました。

ーー中田さんは彼女についていかがでしたか?

中田:僕が自分に欠けているなにかを埋めるために作り出した偶像のような存在だなと。ふたりのやりとりは僕が自分と対話しているようで、見ていて面白かったです。そしておふたりの掛け合いを聞いていると、お話にあったような若干のジャンルの違いみたいなものも感じました。言葉のタイム感や語尾の置き方がそれぞれ違うんですよね。聞いていてとても勉強になります。

 

“聴く文学”を新たな形で表現

ーー改めて今作の見どころをお聞かせください。

濱野:やはり音楽はポイントのひとつですよね。そこに物語の表現が融合することで、唯一無二の劇を味わってもらえます。1回限りの公演ですので、ぜひ見逃さないでほしいですね。物語としては、セッションの気持ち良さであったり、あえて不安を煽るような駆け引きを楽しんでいただきたいです。裏で演奏してもらうことは過去にもあったんですけど、これだけ有名な方に表で歌ってもらうのは貴重な機会ですし、1回限りということでプレッシャーもあります。

中田:僕も声が出なかったらどうしよう(笑)。

濱野:9月はまだまだ暑いですし、体調管理にも気をつけないとですもんね。

ーー中田さんはいかがですか?

中田:ミュージカルや朗読だけの劇は結構ありますけど、音楽朗読劇って意外と少ないんですよね。そんな中、それぞれの仕事の垣根を超えた今回の音楽朗読劇はオルタナティブだなって。もしかしたら、僕らミュージシャンにとっての新たな表現のひとつになるかもしれないと期待しています。

 

 

ーー音楽ファン、朗読劇のファン、それぞれの反応が気になりますね。

濱野:中田さんのファンの方にどういう風に受け入れられるんだろうかと気になります。「こんなに低い声じゃない!」と思われないか……(笑)。

中田:(笑)。いやいや、きっと大歓迎ですよ。

濱野:あと、僕のファンの方も「中田さんと!?」と驚いていました。好きなアーティストと声優がなにかをすることに喜んでくれる方もいますし、逆にここから僕のことを知ってくれたり応援してくれる人がいたらラッキーですね(笑)。

中田:(笑)

ーー最後に、公演を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

中田:僕は曲を作るにあたって長年、“聴く文学”をモットーとしています。読後感というか、1曲1曲、ひとつのストーリーを楽しんだ気分になってほしいんです。そして、今回の公演では僕の曲と朗読を掛け合わせることで、よりやってみたかったことが実現できたと感じています。僕にとっては非常に実験的で、自分の音楽にどこまで親和性があるのかを確認できる良い機会です。みなさんには、その瞬間を新たなショーのひとつとして楽しんでいただきたいですね。

濱野:この1回限りの公演は、語り手である僕のセリフが8割を占めています。改めて、気を引き締めて本番に臨みたいと思っていますし、10年ほど積み重ねてきた経験をここで全てぶつける覚悟でいます。重ね重ねですが、中田さんの素敵な音楽が加わったこの物語には、本番でお見せするもの以上に色が付くことはありません。細かな表現の数々をぜひ目撃してください。

 
[取材・文/MoA]

 

音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』

 
開催日:2024年9月7日(土)
開場 16:15/開演 17:00

場所:ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールA
(https://tokorozawa-sakuratown.com/japanpavilion.html)
▶︎アクセス

 
◆出演者:
中田 裕二 濱野 大輝
菜の子 柴野 嵩大 大熊 里彩

◆チケット情報
全席指定 8,500円(税込)※ドリンク代別

プレイガイド:イープラス
▼一般発売(先着)はこちら
https://eplus.jp/monochrome-no-cinderella/

 

あらすじ

小さな出版社に勤める主人公の平凡な男“僕”は
ある夜、社長から西新宿の図書館に本の返却を頼まれる。
仕方なく向かったそこで僕は“彼女”に出会った。

名前も知らない。話したこともない。
本当に存在するのかもわからない彼女に
心惹かれていく僕。

ある日、僕は彼女と夜の街を散歩することに。
彼女との時間は現実なのか幻想なのか、
彼女との出会いは僕にとってどんな意味を持つのか。

これは、モノクロームで、曖昧な、僕と彼女の数日間の物語。

 
公式サイト:https://www.fwinc.co.jp/Monochrome_Cinderella/
公式Xアカウント:@MonochromeAM723

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