自身もニアも「もっとうまく生きられるはずなのに」? 感情移入しやすいニアと一緒に異世界の旅を楽しんでほしい――『異世界失格』ニア役・小市眞琴さんが第5話を振り返る【インタビュー連載第5回】
メインキャスト5人中3人が江戸川乱歩作品の読者
――この連載では、リレー形式でオススメの本についてお聞きしています。前回の木野さんから小市さんへのオススメですが、『ペツェッティーノ』という絵本になります。主人公が自分探しの旅をしていく内容で、幼い木野さんが自身の存在意義を肯定するきっかけになった一冊とのことで、世代を超えて読んでほしいとおっしゃっていました。
小市:す、すごい……! 子供の頃に存在意義を考えていたなんてすごいです! そしてそれを肯定する絵本に出会えていたなんて……! 大人になったからこそ、気づくメッセージも隠れていそうな絵本ですね。ぜひ読ませていただきたいと思います。
あと鈴代さんが木野さんにオススメしていた『売れるコピーライティング単語帳』も読んでみたいと思っています。私、インタビューにうまく答えるのが苦手なので(笑)。電子書籍版を買っていつでも読めるようにしようかな。とりあえず読んだら鈴代さんに感想を伝えたいと思います。
――ちなみに好きな文豪がいらっしゃったり、文学作品を読んだりされますか?
小市:本を読むのが好きなので、文豪の作品も読む機会はありました。
――神谷さんと大久保さんは読書家で、鈴代さんは夏目漱石の『こころ』を授業で読んだくらい、木野さんは子供の頃に芥川龍之介の『羅生門』を読んで、すごく怖かったとおっしゃっていました。
小市:私も『こころ』は好きですよ。国語の時間にみんなで読みました。個人的に好きな文学作品で言えば、中二病みたいに思われるかもしれませんが、夢野久作の『ドグラ・マグラ』です。たぶん中学時代にみんな通るんじゃないかな? あとは『瓶詰の地獄』とか。それと江戸川乱歩の『人間椅子』も。
――『人間椅子』は大久保さんが鈴代さんへオススメした本でした。更に神谷さんから大久保さんには、同じ江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』を勧めていました。
小市:そうなんですね! でも『人間椅子』はおもしろいけど、ちょっと気持ち悪いから読む人を選ぶ気がします。
――まさに神谷さんも大久保さんも、女性に江戸川乱歩を勧めるのはどうなのかとおっしゃっていました(笑)。
小市:まあまあ(笑)。でも話はおもしろいですからね。それにしても文豪をテーマにした作品のキャスト5人の中で、江戸川乱歩を読んでいる人が3人もいるなんて。偶然としてもすごいことですよね。
――今回で短期連載が終了になってしまうため、キャストへのオススメ本の紹介は終わりますが、もし読者の方にオススメするとしたら?
小市:最近読んですごくおもしろかったのは、夕木春央さんの『方舟』です。『週刊文春』のミステリーベスト10にも入っていて、どんでん返し系の作品です。最後に話がガラッと変わるんですけど、ミステリーとしてめちゃめちゃよくできていて。外界とまったく閉ざされた“クローズド・サークル”のお話で、「方舟」という地下施設にみんなが閉じ込められてしまいます。更に地震で出入り口が塞がれた挙げ句、下から水が侵入してきて、1週間以内に脱出しないと全員窒息して死んでしまうという状況の中で殺人事件が起きる、というあらすじです。
犯人を探しながらも脱出しなければいけないため、それなりの厚さはありますが、意外とスルスルと読めてしまうくらい、おもしろいです。どんでん返しがあるとわかっていても、何が変わるのか推理しながら読み進めていきましたが、最後まで当たりませんでした。「まさか、こんな結末が待っているとは!?」という感じで。ちゃんとすべての伏線を回収していくので、気になった方はぜひ読んでみてください。
――ここまで全5回、好きな本のお話をお聞きしましたが、皆さんの熱量がすごくて驚きました。
小市:それくらい本当に『方舟』はおもしろいんです(笑)。それ以外にもおもしろくて、オススメしたい本がたくさんあるので、いつかキャストの皆さんと読書談義ができたらいいなと思います。
センセーにツッコミを入れながら、一緒にさっちゃん探しの異世界の旅を楽しんでください
――間もなく本編も折り返しを迎えようとしていますが、今後の見どころのご紹介をお願いします。
小市:今後も新たな転移者やキャラクターたちが登場しますが、第5話の最後でタマの故郷に到着したらなぜか拘束されてしまって。タマの素性や本名などがいよいよ……という展開が第6話で描かれます。
そしてニアくんがフィーチャーされて成長する姿が見られる熱い回もありますし、パーティのメンバーそれぞれがいろいろな壁にぶつかりながらも成長していきます。と言いながらも『異世界失格』らしいギャグやコメディもたっぷり見られたり、まだまだおもしろくなっていきます。頑張るニアくんも応援してほしいですし、センセーが探しているさっちゃんの行方など、引き続き楽しみながら見ていただければ嬉しいです。
――皆さんへメッセージをお願いします。
小市:まずは神谷さんから始まった全5回に渡るリレーインタビューを読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
この作品はどんどん右肩上がりでおもしろくなっていきますし、各キャラクターの中身や過去などを知れば知るほど、感情移入してしまうのは、センセーの人の内面を見抜く力と心に届く言葉ゆえなのかなと思っています。
でもセンセーに感情移入するのは難しいと思うので(笑)、周りのキャラで自分に近かったり、似ているキャラを見つけてみるのもいいかもしれません。ニアくんは感情移入しやすいキャラだと思うので、ニアくんになりきったつもりで、センセーたちにツッコミを入れながら、センセーと一緒にさっちゃん探しの異世界の旅を楽しんでください。
改めて、この『異世界失格』は、笑えるところでは思い切り笑って、ぐっと来たり、感動するところでは涙したりと感情を揺さぶる、まさに一冊の本を読んでいるような味わいがある作品だなと思いました。引き続き視聴していただき、おもしろかったらSNS等で拡散をお願いします。第1話放送後もトレンドワードに入ったのも嬉しかったです。これからもセンセーが入っている棺を一緒に引いていきましょう!
連載バックナンバー
『異世界失格』作品情報
あらすじ
憂い多き人生の如く渦を巻く激流へと身を投げ...るよりも早く、猛スピードで突っ込んできた〝例のトラック〟によって。
文豪が目を覚ますとそこは、異世界の教会。案内人は、慈愛に満ちた瞳で微笑みかける。
「ようこそ冒険者よ。あなたは選ばれ、転移したのです」
御多分に洩れず、勇者の使命を背負わされてしまう文豪。だが、彼は転移者の誰もが与えられる〝あるもの〟を持たなかった......。
「...ふふ。恥の多い生涯だ」
この世でも、異世界(あの世)でも <失格者>の烙印を押された文豪(センセー)の冒険が幕を開ける。
きっと、どこかにいるはずの「さっちゃん」を見つけ出し、今度こそ、あの日の本懐——心中を遂げるために。
キャスト
(C)野田 宏・若松卓宏・小学館/「異世界失格」製作委員会