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プリパラ10周年記念:森脇監督×依田P×大庭P 超ロングインタビュー

〜『プリパラ10周年記念 大プリパラ展』に寄せて〜 森脇真琴監督×依田健プロデューサー(タツノコプロ)×大庭晋一郎プロデューサー(タカラトミーアーツ)鼎談で10年経った今だから明かせる制作陣のメイキングドラマ/インタビュー

 

部活に近い? 『プリパラ』ならではの一体感、現場感

――定期的に行われるイベントでも、キャストの皆さんたちの一体化具合がすごいですよね。

依田:うんうん。

大庭:ライブ上での自分とそのキャラとの中間の、ハンドリングの仕方がみんなうまいと思いますね。それって長年やってるキャラクターだからこそできることだと思うんですよね。

依田:そうですね。やはり今は短い話数の作品が多いので、何年も同じキャラクターを演じ続けることって少ないんですよね。しかも、比較的キャストさんに委ねている部分も多い作品なので、皆さん“一緒に生きてきてる感”があるんでしょうね。

森脇:私も長い演出生活の中で、ここまで役に入り込んだ役者さんってなかなか見ることはないんです。もちろん、皆さん入り込んでくれてはいるんでしょうけど……ここまでというのは初めてでした。同時にありがたかったです。こちらとしては、とても嬉しいことで、「気を引き締めて、一つひとつのエピソードを作っていかなければ」という気持ちになりました。

 

 

――森脇監督は印象的なエピソードというといかがですか。

森脇:長い作品ですし、無限にあるんですけども……『アイドルランドプリパラ』(以下、『アイドルランド』)がはじまると聞き「もうちょっと(『プリパラ』を)作れる」と分かり、それがすっごく嬉しかったんですよね。またみんなとも会えるし、また同じ世界に戻ってくるって。だって『アイドルランドプリパラ』のことを知った時には、もう終わって1年以上経った時だったんです。

その後、いろんな作品に携わって、それぞれにいい作品なんですが、やはり『プリパラ』は現場も含めて、なかなか特別なものがある気がします。『アイドルランド』自体もとても楽しく作りました。

――『アイドルランド』というタイトルが発表されたのは2020年でしたよね。

依田:2018年くらいから、いろいろなやりとりが飛び交うようになって。

大庭:そうですね、企画が進行する前に僕から監督たちに送りつけたメモがいくつかあって……例えばあまり(CV.飯田里穂)ちゃんの設定とか。実際に作り出したのは2019年。その時点で『プリパラ』シリーズのTVアニメが終わってから2年が経っているんですよね。

森脇:0話(「アイドルランド始めちゃいました!」)のダビングの時に「やっぱり『プリパラ』良いなぁ〜!」って思ったんです。なんだか、深呼吸してなかった時にふわっと深呼吸したかのようでした。「ああ、良いなぁ〜!」って。

大庭&依田:(笑)

依田:0話のダビングだと、2021年の3月とかじゃなかったですかね。

森脇:そうかもしれません。

大庭:でも監督のおっしゃっていることは分かりますね。いまだに『プリパラ』だからいいんだよ、っていうのがあるんですよね。その本質的なところはなんなんだろうかと言うと、この10年間、完璧に言語化はできないままなんですけど、そういうのがあるんですよね。

依田:他の『プリティーシリーズ』ともまた違うんですよね。なにか違う。

大庭:そう、なんなんでしょうね。設定や要素だけで成立するものじゃない。共有感とでも言うんでしょうか。ロジカルに『プリパラ』を作るとなっても、あの空気出せるのかっていうと、ちょっとわかんないですよね。

依田:そうですね。例えが正しいかわからないですけど……サークル活動や部活に近い一体感があるんですよね。『プリパラ』って。

森脇&大庭:(笑)

 

 
大庭:それが10年の中でできていた。語らずともわかるような共有感っていうんのが育っていって……こういった感覚というのは、「言葉にしちゃったらつまんないな」っていうような、何かがある。でもそれって監督のセンスの部分にもそれがあった気がします。

依田:そうですよね。間違いなく、森脇監督という存在は中心の、大きな要素だと思いますよ。森脇監督の作り出す現場感。

森脇:それは時々言われる。「いいんだけど、どう良いか説明できない」っていう。『おねがいマイメロディ』シリーズ時からそれでした。

依田:そういう森脇監督だからこそ、最初に監督をお願いしに行ってるので。

森脇:声優さんには私はよく働いてもらう方でしょうね。(台本の)ライブ後には「(歓声)」とかしか書いていないんですけども、それがどんどん育って、ガヤが汚くなるっていう。

依田:「普通のガヤだと怒られちゃう」みたいな雰囲気にね(笑)。ちょっとした大喜利になるという。それと、『プリパラ』のライブ後の歓声は必ず毎話数録ってて。その都度、みんながその時の気持ちを叫んでるんです。

大庭:うまいこと言った後に「やってやった」みたいな表情になっている声優さんたちが面白くて、次の人がプレッシャーを感じる。

依田:あれはすっかり伝統になっちゃいましたね。

森脇:そういうわけでね、私の癖でもあるんですけど「シナリオできました」というところから、コンテで面白さを積み、アフレコでさらに面白さを積み、ダビングで……と、毎回全ての工程でちょっとずつ良くなっていくようにしているんです。していく、っていうか、なっちゃう。

依田:最初に決めたものを最後まで一貫して通していく監督もいらっしゃるんです。でも森脇さんの場合は、面白くするためにはどんどん積んでいくし、前に決めたことにこだわらず、変えることもいとわない。基本スタンスが「面白くしていく」だと思うので、周りは大変なんだけど――。

森脇:えっ? 私は気づいてなかったよ。

依田:いやいや、大変ですよ(笑)。でもものすごく面白くなるんですよね。

大庭:監督の、そのちょっとしたライブ感覚のようなものが、作品性と合っていたようにも感じています。『プリパラ』で物事の進み具合って……主人公だけが進めるのではなくて、大勢の人たちがワチャワチャとしながら、物語を進行していく。その雰囲気と、制作の雰囲気が合致している感じが良いなって。そういう意味では、参加型っぽい感じがしています。

森脇:ああ。

 

 
依田:これは『アイドルランド』の話に若干繋がるかもしれないけれど、自分が入り込めるコンテンツだと思うんですよ。それはアニメがあって、筺体があって……というところもそうなんですけども。

「この世界に自分がいてもいいんだ」と思える中にどっぷり入ることができる。かつ、そこにはキャラクターたちが作品の都合で配置されてるんじゃなくて、「こういう人たちっているよね」とリアルに感じられるのが、『プリパラ』の良さなのかな。

大庭:以前監督がおっしゃってましたよね。『プリパラ』の中にいる女の子たちは全員名前があるって。

森脇:言った言った! シナリオにモブA、モブB……って書いてあると「名前をつけてください」って。

依田:必ず名前つけさせてましたね。

大庭:その第一号が栄子さん。

――たしかに栄子は、Aだけに早いタイミングで登場していましたものね(笑)。

森脇:作業的にあまりに煩雑になっていくので、途中で断念しましたけどね(笑)。

大庭:「み~んなトモダチ!み~んなアイドル!」って、歌っていなくても、みんなアイドルなわけで、それが物語のベースにある。3rdシーズンの時に、ジュリィが『プリパラ』にやってきて、全員の名前を言ってるシーンがあったじゃないですか。「◯◯ちゃんはプリパラにやってきて、ダンス上手くなったよね」とか。監督が最初に言ってたことがあのシーンに全部つながっていて。

依田:うんうん。みんなの名前と特徴を全部知っていて、しかも名前で呼んでくれるっていう。

大庭:僕はあのシナリオを読んだときに、「これは『プリパラ』の1stシーズンで監督が言ってたことだ」って思いましたけどね。

森脇:……私は忘れていましたよ(笑)。

大庭:監督はね、こういうエモーショナルなところを忘れているんですよ。それは普通にやってるから。

依田:そうなんでしょうね。頑張って、とかじゃなくて。

 

 
森脇:確かに当たり前にやってるかも。もしかしたら……最初に『プリパラ』のお話もらった時に、こういう筺体があるんだ、みんなで遊ぶんだって。みんなが参加して筺体で遊ぶってことに衝撃を受けたところがあったんですね。「この子たち、みんな誰かのマイキャラなんだ」って。そういうところがもしかしたらつながっているのかもしれない。どうして結果的にこうなったのかは、私は分からないですけど。

依田:プレイヤーがマネージャー的な立ち位置でアイドルを動かしていくタイプのゲームもあると思うんですけど、『プリパラ』の場合、完全に自分がキャラになって『プリパラ』の中に入ってアイドル活動するというスタイル。それは『プリパラ』の特徴だと思うんです。

大庭:そうですね。そして「ステージに立ってるアイドルの子はもちろんアイドルですけど、ステージを見てる子たちもアイドルなんです」というか。まだ『プリパラ』の世界観が固まっていなかった当初は手探りなところはありつつも、「でも、そうなんだよな」って。それを皆さんに咀嚼していってもらった感じでしたね。

依田:そうそう。だから「み~んなトモダチ!み~んなアイドル!」というキャッチフレーズが『プリパラ』のすべてを表しているんですよね。そして、最後まであれを貫いた。そのブレなさ加減っていうのは本当にすごいなって。特に「みんなアイドル!」という概念は『プリパラ』だけだと思っています。

森脇:ガヤがそれを実感させるんですよね(笑)。一生懸命言ってる感じがすごくする。

大庭:しますよね。オーディエンスたちもちゃんとキャラ立ちしてる。

 

 

――それはリアルの『プリパラ』イベントの客席にいるファンの人たちにも言えることかもしれませんね。

大庭:そうですね。ファンの人たちもアイドルなんですよね。あのライブのいちばんおもしろいところは、ステージで完成しているわけではなくて、観客の人たちがいるところで。

依田:女性のファンはそのままアイドルになれる。ただ、これまでは男性ファンは変換しなきゃいけなかったところがあって。男プリが生まれたことで、素の自分で「いいぜ!」って言えるようになって、男性はきっと嬉しかったと思うんです。

大庭:うんうん。僕自身も嬉しかったですし、こうなったら良いなって思っていました。ステージにいる男子アイドル・WITHたちは、お客さんたちに対して「自分たちの世界観を見せる」という気概があると思うんですね。そして、その客席には、男性もいるわけで「その世界観を作るのは俺たちなんだ!」と思っていると思うんです。俺たちが「いいぜ!」コールをしないと、みんなの好きな男プリは出来上がらないわけで。

依田:そう考えると、やはり参加型なんですよね。『プリパラ』は。

――そもそも男プリは当初から考えられていたんでしょうか。

依田:女の子しか入れない、女の子だけのアイドル空間のカウンターとして、存在はするよねって思ってはいたんです。でも最初は、アイドルじゃなくて、男子は男子の世界があるよね、くらいな感じではありました。

大庭:でも僕の中で、男プリという世界観が形作られるよな、と思った瞬間があって。それが『映画プリパラ み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ』の映画の中で、森脇監督がちゃん子ちゃんを出してきたじゃないですか。

依田:あー、プリパラファイトクラブ。

 

 
大庭:地下アイドル金網デスマッチの(笑)。

森脇:はいはい。

大庭:あれを見たときに「男プリはこれだ!」って。

森脇&依田:(笑)

依田:実際DARK NIGHTMAREのCGライブにも、あのステージが転用されていますしね。

大庭:女の子の『プリパラ』の論法を男性に置き換えて考えてみると、男子のステージを応援しているのが男子という絵面は、とてもカッコいいし、面白いなって。だから男プリはやってみたいなと思って、『アイドルタイム』で要素として入れてもらいました。

僕は西城秀樹さんや沢田研二さんに憧れていた世代なわけで。今時だったらEXILEにあこがれている男の子だってたくさんいるから成立するよなぁって思っていたし。女の子だけのアイドルの空間、男の子だけのアイドル空間でなりたい自分になってお互い自由にやろうって感じです。

依田:確かに、昨今のジェンダー的な価値観で語ろうとすると、一緒くたに扱われがちなのですが、そうじゃなくて、男子には男子の思うカッコよさが、女子には女子の価値観があっても良いと思っています。そういう考え方で、『プリパラ』は作っている気がしますね。みんな均すというより、バランスを取っているというか。

大庭:そういう、男プリの……運動部の部室みたいな、ちょっと汚い感覚というか(笑)、森脇監督がすんなりと「あ、じゃあこんな感じだよね」って。イメージをすぐに共有することができました。

森脇:男プリは和太鼓をやるじゃないですか。あれの延長で、部室はあんな感じになるよねって。「せいやっせいやっ!」って言ってましたもんね。

――まさに『アイドルタイム』では、めが兄ぃが和太鼓を……。特に3話「サブタイトル?どーでもいいぜ!」は、男プリの要素が濃かったですね。

大庭:そうそう。今まで男プリでイメージしていた要素を3話で再現しようと。めが兄ぃが上半身裸で和太鼓を叩く姿を見せよう!って。

森脇:なんか、言葉にすると思わず笑っちゃうね(笑)。

 

 
依田:大庭さんは昔からめが兄ぃに太鼓を叩かせたがるんですよ。でもそれを聞いて「またまたそんな」というより、「なるほどそうですね」と受け入れてしまう。変なスタッフですよね(笑)。それも『プリパラ』っぽいというか。

――そのバランス感というのが、結果的に功を奏したところもあるのかもしれません。

大庭:『アイドルタイムプリパラ』ではあくまでも『プリパラ』の世界観を広げるための要素だとは考えていました。

だからその分、男プリのミュージカル、ライブ、ライブ内の朗読劇では、ストーリーを積み上げていきたいなと。男プリのその世界観ってこんな感じなんだなぁと伝われば良いなと思っていました。

例えば、「DARK NIGHTMARE」のシンヤ(CV.河合健太郎)、ウシミツ(CV.鵜澤正太)に関しては、シナリオ打ち合わせ後によく「こういうキャラがいたらいいよね」って話をしていたところが発端で。要素が全部揃ったところで「今まで話していたことをアニメーションとしてちゃんとビジュアル化してみようか」と。

依田:だから、逆なんですよね。

大庭:逆メディアミックス。アニメからミュージカル、ライブ……とかじゃなくて、最後にアニメ。そもそも、ヤミプリ、男プリズン、男プリというものがあってという男プリの世界の構造は、監督がシナリオを書かれたCDドラマ(『ALWAYS WITH YOU!!!』収録)を元に作っています。

森脇:はいはい。ヤミプリが導入されたのがそこでしたよね。

大庭:男プリズンという響きにも惹かれて、良いですねって。

依田:あの作品で大事な要素が決まりましたよね。

 

 

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