夏アニメ『義妹生活』・上野壮大監督に聞く制作秘話・裏話・見どころ
第12話「 と 」
――第12話を制作する上で、意識したところやこだわりのポイントをお聞かせください。
上野壮大監督:最終話をどこにするか、は(シリーズ構成の)広田(光毅)さん達と一番最初に検討した問題でした。テーマが求めるテンポ的には3巻までが好ましいけれど……、物語としては4巻までが好ましい……とかなり悩みました。
幾度と重ねたすり合わせの結果、後者を選ぶことになりましたが、放送を終えた今、そう選べて本当に良かったと思っています。限られた尺の中で、語るべきテンポを守るために色々な新しい表現も生まれました。
いや一つだけ、尺の問題で、丸(本当にごめんね……)や栞先輩(スタッフ人気が一番高く、シーンが省略される度に、暴動が起こりかねない状況でした……)達の出番が減ってしまったことは、残念でしたね。ただ、シナリオ時もコンテ・制作時も、「描けなかったところも無かったことにはしない」というのは心がけていました。
最終話が決まった後は、全てが全てあのラストシーンに向かって設計が始まりました。この子達にとって、光とは何かという整理や、光がボケて映った時に三角形になるのも、ふたりが一番、愛に近づいた時、ふたりが抱きしめあった時の相似形としてその形を選んでいます。
が、しかし、沙季の涙は設計時には存在しておらず、1話から積み上げていったその先に生まれたものでした。そしてそれは、確かにふたりが生きた証なんだと自分は思っています。
――12話では、藤波の過去の回想シーンが描かれました。原作では数行で触れられるのみの藤波の過去に焦点を当て、情景を描写した背景をお聞かせください。
上野壮大監督:(藤波)夏帆の言葉を悠太にどう響かせるのかを考えた時に、その言葉の確かさを支えるために過去を描く必要があると考えました。ただ、その度合いは確かに悩みました。回想内の「お父さん、お母さん」と呼ぶ言葉は、コンテ時に入れても良いのか何度も何度も検討して、結果外した言葉だったのですが、種﨑(敦美)さんのお芝居を聞かせてもらって、大丈夫だと感じて、アフレコの当日に足させていただきました。(急な変更で各所ご迷惑をおかけしてすみませんでした……)
――第12話のサブタイトルに込めた思いをお聞かせください。
上野壮大監督:サブタイトルをつけた時には、「tomorrow and tomorrow」という最後の言葉は存在しませんでした。「 と 」、兄と妹でも、彼氏と彼女でもない、言葉にできない、けれどふたりで大切に考えていきたい、抱え続けていく何か、として空白で表現する予定でした。
「明日と明日」、意味合い的には「明日、また明日」、これはコンテ時に生まれた言葉です。ラストシーン、ラストカット、柔らかい穏やかな光の中で、歩いていくふたりを、コンテに描いて、描いて、描いて、描いて、描いて、描いて、描いて、描いて、描いて、描いて……、どうして描き終えることが惜しく、ずっとこのふたりが、この光の中を歩いていけるように、とそういう祈りが、気づくと「tomorrow and tomorrow」と紙の端に書いてありました。あぁ、これがこの話数のサブタイトルだったのかな、と思い最後に出すことにしました。
関わってくれたスタッフの書いた文字として。
質問、これで最後なんですね。
ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございます。
この作品を通して過ごした「みなさんとの日々」は本当に幸せでした。
話したいこと、伝えたいことはまだまだありますが、だからこそまたきっとお会いできることを信じて。
ありがとうございました。
作品概要
あらすじ
互いに両親の不仲と離婚を経験しているがゆえに、男女関係に慎重な価値観の二人は、義理の兄妹として適切な距離感を保とうと約束する。
「私はあなたに何も期待しないから、あなたも私に何も期待しないでほしいの」
考えを述べあい、すり合わせを重ねることで、互いを理解していく悠太と沙季。
新たな生活に居心地の良さを感じはじめた時、二人の関係はゆっくりと、しかし確実に、変化をはじめて…………
これは、いつか恋に至るかもしれない物語。
“他人”が“家族”へ、そしてその先へ。
少しずつ変わりゆく日々を映す、恋愛生活物語。
キャスト
(C)三河ごーすと・Hiten/KADOKAWA/義妹生活製作委員会