『真夜中ぱんチ』設定制作・舘 彩華さんインタビュー|「真咲やりぶたちが泥臭く頑張る姿が、私の心に響きました」【スタッフ・声優インタビュー連載第9回】
リアリティを出すために敢えての誤字も
── 舘さんはNewTubeのコメント欄の制作に、特に注力されていたと伺いました。
舘:そうですね。作中には2Dというポジションがあります。例えば、キャラクターが持ってるプリント用紙や、『真夜中ぱんチ』で言うとNewTubeのコメントやサムネイルの文字とか……そういったものを作ってくださるポジションの方がいるんです。
基本的に2Dさんはデザインを担当する方なので、内容を考えるのは、自分の仕事になります。今回はそれがたまたまNewTubeのコメントでした。コメントはこの作品において重要なものです。
──だからこそ、考えるのも大変だったと思います。
舘:最初はいろいろとアイデアが出てきたんですけども、後半はネタ切れになってきて(苦笑)。例えば第1話は誹謗中傷のコメントが多いんですよね。
──中には、結構キツい内容もありましたね。
舘:そうですね。今思い出したのですが、当初は「アニメだし、実際の誹謗中傷コメントよりマイルドにしたほうが良いのかな」と思って、その案を作ってみたんです。それを監督に見せたところ「もっとどぎついことを言っていいよ」って言われました(笑)。
──改めていろいろな動画のコメント欄を見ることもあったんでしょうか?
舘:はい。私はもともと動画を見ることが好きなので、コメント欄を目にする機会も多かったんですね。だから誹謗中傷コメントはイメージはできたのですけども……実際に自分が考えるとなると……ちょっと心が黒くなってしまうというか(苦笑)。
──そうですよね……。普段はどのような動画をご覧になられているんですか?
舘:ゲーム配信やライブ配信が多いです。ライブ配信ってリアルタイムでコメントが流れるので、そのライブ感は今後……詳しくはまだお話できませんが、生きてくる場面があるかなと。
── このインタビューを読んだ上で、再度コメント欄を見返したくなるユーザーも多いように思います。
舘:ぜひ見てほしいですね。ただ、身近にあるものなだけに、じっくり読み返したときに「ここは違うよ」「こんなコメントはないよ」ってツッコミも入りそうで、少しドキドキしますけれども(笑)。生々しくするために、あえて誤字も入れているんです。実際に作ってくれたのは、2Dさんではあるんですけども。
── 確かにネットは誤字もつきものですものね。
同席していた本間監督:僕だけであれば、そういうアイデアは出てこなかったので、本当に助かりました。
──やはり苦労した点も、そのコメントの制作になるのでしょうか。
舘:そうですね。これは細かい話になるんですけど……コメントをした人の名前も一応全部変えてるんです。その名前のアイデアがどんどんと尽きてしまって……最終的に100、200ぐらい作りました。もちろん、中には同じものを使うこともありましたけれども。自分のネーミングセンスのなさに嫌気が差しました(苦笑)。
──いやいや、それは大変だったと思います。一方で、制作されていて楽しかったところで言えばどうでしょうか?
舘:自分の制作というより、制作の過程を見られたことが楽しかったかもしれません。テンポのいい作品なんですよね。それが本間監督らしさのひとつだと思っています。絵コンテの段階では最終の映像がぼんやりとしてた部分も、声優さんの声や音が入って、映像が出来上がっていくと、そのテンポ感の良さが際立ってきて。それがまさに『真夜中ぱんチ』らしさにつながっているように感じています。
そのテンポの良さって、動画をテーマにした作品ならではのようにも思うんです。例えば、YouTubeの動画って、バツバツっと切って縮めていることも多いじゃないですか。そのあたりも意識されているのかなと思っていました。
──舘さんが視聴者に注目してもらいたいポイントというのはどうでしょうか?
舘:動画のコメントやサムネなども研究しましたが……やはりコメント関係でしょうか。動画配信やライブ配信を普段見ている人たちから見た“あるあるネタ”も盛り込んでるつもりです。それが伝わるかどうかは不安なところはあります。でも、少しでも伝わったら嬉しいです。