『真夜中ぱんチ』設定制作・舘 彩華さんインタビュー|「真咲やりぶたちが泥臭く頑張る姿が、私の心に響きました」【スタッフ・声優インタビュー連載第9回】
P.A.WORKSの『パリピ孔明』スタッフが贈る、オリジナルTVアニメーション『真夜中ぱんチ』が2024年7月8日(月)より放送中!
世界でもっとも見られている動画投稿サイト「NewTube」で活躍する3人組NewTuber「はりきりシスターズ」の「まさ吉」こと真咲は、とある事件がきっかけでチャンネルをクビに。 起死回生を狙う真咲の前に現れたのは、なぜか彼女に運命を感じたヴァンパイアのりぶ。
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アニメイトタイムズでは、スタッフ&キャストのインタビューを連載中。第9回は設定制作を担当しているP.A.WORKS 舘 彩華さんです。本作の制作において、「欠かせない存在」と周囲のスタッフ陣から信頼を寄せられている舘さん。インタビューを受けるのは初めてだそうです。設定制作の裏側や制作過程でのエピソードについて伺いました。
試行錯誤しながら設定を作っていきました
──まずは舘さんが本作に参加されることになった経緯から教えてください。
舘 彩華さん(以下、 舘):経緯に関しては、私も(アニメーションプロデューサーの)橋本と同じなんです。橋本よりも、会社員としては、もっと歯車のひとつといった立場ではありますが。
以前、私が担当していた作品が終わるタイミングで、「次は『真夜中ぱんチ』担当だ!」と言われて、そこから参加させてもらいました。その頃にはすでに本読みが始まっていたので、本間(修)監督やシリーズ構成の白坂(英晃)さんがいらっしゃる状態でした。途中から「よろしくお願いします」と、入っていった感じでしたね。
──橋本さんにはアニメーションプロデューサーのお仕事について伺いましたが、設定制作のお仕事というのも興味があるところで……。
舘:そうですよね。多分、プロデューサーよりも何をやっているか分からないかと思います(笑)。
うまく説明できるかはわかりませんが、設定制作というのは作品づくりにおける資料を準備する仕事です。自分では縁の下の力持ち的な存在なのかなと思っていますね。アニメを作る上で、たくさんの人が関わります。その人たちが作業をする上では、ひとつの見本になるようなものが必要で。
監督と話し合いながら、キャラクターやキャラクターが使っている小物、登場する場所などを、いわゆる「設定資料」としてまとめます。それを管理するのが、基本的な仕事です。
── 『真夜中ぱんチ』に関しては、どのような準備をされたのでしょうか?
舘:キャラクターに関しては、ことぶきつかささんが描かれた原案を元に、キャラクターデザインの有間涼太さんがアニメーション用の設定を作るのですが、例えば真咲だったら「こういう表情をするんじゃないか」というのを本間監督、有間さんと一緒に作っていきました。
小物で言うと……『マヨぱん』特有なものだと、カメラの機材がたくさん登場します。「今、こういう機材が流行ってるらしい」というのをYouTuberさんたちなどに聞いたり、下調べをしたりして、参考資料を準備をしていました。
──まさに縁の下の力持ち!
舘:そうですね。あまり表に出ることはありませんし、自分はクリエイターではないですけども。
──いやいや、職人技だと思います。本作の設定制作において、舘さんが特にこだわったところというといかがでしょうか?
舘:『真夜中ぱんチ』に限らずではありますが、自分が設定制作として携わらせてもらう作品で心がけているのは“見やすい設定”です。いろんな人が見るものなので……作業が滞ってしまわないように、「ここってどうなってるのかな?」と極力迷わないような設定資料を作りたいなと思っています。
── 迷わないような地図というか、指標というか。
舘:そうですね。例えば、最初はりぶの靴の裏の絵が設定資料になかったんです。アニメーションの中で、靴の裏はあまり出てくることがないので、当初は考えてなかったんですけど、りぶって飛んだり跳ねたりするんですよね(笑)。
それで、作画の方から「りぶの靴の裏ってどんな感じになってるんですか?」って質問をもらって「あ、確かにないね」という話になりました。これは絵として必要なので、足したほうがいいなと思い、有間さんと話して追加してもらいました。
ベストとしては、そういう細かいところにも最初から気づくことではあるんですけどね。そうすれば、皆さんの聞く手間が省けるのでスムーズに作業ができるなとは思うのですが。
── きっと作っていく過程の中で気になるところが出てくるものなのでしょうね。
舘:そうですね。そのあたりは毎回毎回、試行錯誤しながらやってます。
── 舘さんは橋本さんのインタビューにも同席されていましたが、どのような思いで橋本さんのお話を聞いていたのでしょうか?
舘:橋本から「本間監督は制作に寄り添ってくださる方」という話が挙がっていましたが、私もそう感じていました。楽しく雑談して、ときには冗談を言ってと、話しやすい空気を作ってくれた上で、こちらの意見を聞いてくれるんです。そういう意味では、私自身も楽しみながら制作に参加することができました。
普段であれば、ちょっと無理なお願いもすることができたので、本当にありがたくて……。
──無理なお願いですか?
舘:自分の仕事的に、クリエイターさんと監督などの間に入るポジションになるので、例えば「Aさんはこう言ってますが、この案だと難しいかもしれない」など、言いにくい相談をすることもあるんです。本間監督は柔軟に、制作側の立場や意見をすくい上げてくれる方なので、そのあたりの相談はしやすかったです。