『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』山姥切国広役・前野智昭さんインタビュー|「山姥切国広は“もう1人の自分”のような感覚です」――近侍を巡る、悩める山姥切国広とへし切長谷部の距離感
舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺を脚本原案とするアニメ『刀剣乱舞 廻 -虚伝 燃ゆる本能寺-』(以下、アニメ『虚伝』)の前日譚であり、完全オリジナルストーリーで描かれた『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』(以下、『々伝』)が2024年8月16日(金)より三週間限定で劇場上映されます。
アニメ『虚伝』で描かれた「本能寺の変」の裏側で起きた出来事にスポットがあたり、さらに近侍を巡るへし切長谷部と山姥切国広の姿が描かれている今作。
本稿では山姥切国広役・前野智昭さんのインタビューをお届けします。今作における役作りについてや山姥切国広とへし切長谷部の印象、そして前野さんにとっての「山姥切国広」についてなどたっぷりとお話を伺いました。
前作アニメ「虚伝」と同じく「々伝」は山姥切国広を語る上で欠かせない物語
――アニメ『刀剣乱舞 廻 - 虚伝 燃ゆる本能寺-』の前日譚である『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』が公開となりますが、虚伝の収録の際には既に本作の制作が決定していたのでしょうか?
山姥切国広役・前野智昭さん(以下、前野):アニメ『刀剣乱舞 廻 - 虚伝 燃ゆる本能寺-』のアフレコの際に「虚伝」が全8話で、その後に『々伝』のエピソードを録りますということは事前に伺っていました。
その時は、内容がまだ分からなかったのですが、いざ台本をいただくとアニメ「虚伝」の前日譚が描かれていて「前に遡ったお話なのか!」と斬新さを感じました。
――制作が決定した際はどのように感じられましたか?
前野:どういうふうにお話が繋がって行くのだろう?という楽しみはもちろんありましたし、何よりアニメ「虚伝」だけで終わらずに、もう少し長く山姥切を演じられる嬉しさをかなり感じていました。ただ、(物語を)遡って役を演じることは難しいポイントもたくさんあるので、そこは意識しながら台本を読ませていただきました。
――それでは「々伝」の物語を最後までご覧になった全体的な感想をお聞かせください。
前野:悩める山姥切国広がさらに悩んでいるというか、打ちのめされた状況からお話が始まるということもあって“「虚伝」以上に悩める姿”が印象的でしたし、その山姥切にヤキモキする長谷部(へし切長谷部)の姿もやはり想像通りで微笑ましいなと。その反面、どういうふうに立ち直って行くのかという期待や不安も感じました。
そこに重なるように史実を元にした出来事が起きて、刀剣男士たちがどのような形で歴史を守って行くのかというところに、今回の山姥切国広の成長部分があったりして。台本を読ませていただいた段階でもとてもイメージがしやすかったですね。
――前回のアニメ『刀剣乱舞 廻 - 虚伝 燃ゆる本能寺-』のインタビューの際に、山姥切国広について「自身のコンプレックスが軸にあるキャラクター」という部分を大切にされていると仰っていましたが、今回はそちらも踏まえた上でどのようなお芝居のアプローチをされたのでしょうか?
前野:今回も彼のコンプレックスを軸に大切に演じさせていただきました。(山姥切の)根底には「自分が写しだから失敗したんじゃないか」という感情があるんですよね。根本的なお芝居は変わらないものの、「そんなことはない」という周りの意見を取り込みつつ自身の成長に繋げて行く部分がお話の見どころに繋がっているので、彼のコンプレックスを軸に大切に演じさせていただきました。
僕もコンプレックスだらけなので、そういう意味で彼に共感するポイントも多くありましたし、だからこそ余計に愛おしく感じるキャラクターなのかなとも思います。
――やはり共感が多い方が演じやすかったりしますか?
前野:それはありますね。もちろん、「俺、強い!」という自信満々なキャラクターを担当させていただくことも楽しいのですが、山姥切はコンプレックスを持ちつつも「俺は第一の傑作なんだ」というプライドも根底にあるキャラクターだと思っているので。本当は確固たる自信はあるのだけれどもそれを上手く全面に出していけない性格が人間臭くて好きです。そこは本当に「山姥切国広」を演じていて楽しいポイントですね。
――アニメ「虚伝」でも葛藤に迫るシーンも多かったと思いますが、山姥切国広目線でアニメ「虚伝」を振り返ってみていかがでしょうか。
前野:すごく三日月宗近に背中を押してもらえたお話だったなと思いました。分かりづらいアドバイスをたくさんもらいつつも、結果的にこういうことだったんじゃないかと思いながら自身の成長に繋げていて、山姥切国広を語る上で欠かせないお話だったと思います。
そして今回は長谷部の叱咤によって成長をさせていただいたお話でもあると思いますので……(笑)。
――(笑)
前野:「々伝」も山姥切国広を語る上で欠かせないお話になっていると思います。
――今作において、山姥切の特に印象に残っている台詞やシーンを教えてください。
前野:印象に残っている部分は多々ありましたが、長谷部に色々と叱咤をしてもらって、「近侍」というものが分からなくなった心情を吐露する場面でしょうか。ここで山姥切が一皮剥けるきっかけに繋がったのかなと考えると、僕の中ではすごく印象深いシーンになったなと。
あとは長谷部と背中合わせで敵と対峙するシーンはグッとくるシーンでもあったと思います。今作は長谷部とのシーンが特に僕の中で印象に残っているなと思いますね。
――改めて「々伝」での山姥切国広、または不変的な山姥切国広の魅力について、前野さんはどのように捉えていらっしゃいますか?
前野:これはずっとそうなのですが、どんな局面においても最後の最後には必ず乗り越えてくれるだろうという、僕の中の揺るぎない彼への信頼があって。今作でも最初から「絶対大丈夫だ」という確信を持ちつつも、悩める彼を演じてきたつもりではあります。
悩む時間が長ければ長いほど、きっとものすごく強くなってくれるんじゃないか、という期待感があるのですが、それにしても今回は悩めるシーンが長かったなと思います。
――また、歴史上の人物として「黒田官兵衛」「豊臣秀吉」が登場しています。
前野:やはり2人とも織田信長に魅せられ、崇拝しているキャラクターたちだなと。今作で描かれる備中高松城の戦いは(アニメ「虚伝」で描かれる)本能寺の変の真裏で起きている出来事でもあって、歴史好きな身としてもグッとくるところでもありました。
官兵衛や秀吉の登場によって、きっと長谷部も思うところがたくさんあったと思います。そういう部分でも見どころがたくさん詰まっているお話になっているなと。